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YOUNG ARCHITECTS & ENGINNERS / STUDENT SQUARE

気持ちのいい場所をつくりたい

高橋 秀秋
1992年入社。本社設計本部に配属され、現在、建築グループ所属のプロジェクト・アーキテクト。
本文で登場した杉乃井ホテルのほか、多くの温泉施設や水族館の設計に携わり、本人曰く「水モノ系が多いですね」。最近の彼の楽しみは「米づくり」。田植えから稲刈りまでを体験できる会員になって、家族揃って遠く新潟まで年に数回足を運んでいるそうだ。
SCENE_1 設計競技提案
1. 旅から得たモチーフ、着想の原点

別府杉乃井ホテル全景 別府杉乃井ホテル全景
がけ上の集落のイメージ がけ上の集落のイメージ
それは某水族館の実施設計が一段落し、11年目のリフレッシュ休暇を直前に控えて胸躍らせていた矢先のことであった。別府を代表する大型ホテル、杉乃井ホテルに温泉大浴場を増築するという設計コンペの業務依頼があった。現地説明会は10日後、提出は1ヶ月半後というまずまず常識的なスケジュール。もう少し切羽詰まっていたら危うく休暇を取り損ねるところであったが、寛大な上司は旅先でコンセプトを考えるという条件付きで僕を潔く見送ってくれた。ポルトガルの片田舎で村々を訪ね歩くなか、そこだけ時が止まったかのようにひっそりと佇む崖の上の集落に出会い、心が震えた。競争原理から生まれる恣意的なデザインなどかけらも見られず、ただそこにある材料で、技で、その場の環境に最も適する姿形をした建築が当たり前のように建ち並んでいた。事前にコンペの資料を読み込んであり、立地が似ているなと思ったことから、”崖上の集落に流れるゆったりとした時間”というおぼろげな全体イメージが脳裏に浮かんだ。