YOUNG ARCHITECTS & ENGINNERS / STUDENT SQUARE

愛着あるモノ

SCENE_3 稲城 702m2のプレート

時の移ろいと人の所作をゆるやかに写し出すアルミパンチングパネル。

京王よみうりランド駅前、緑豊かな緩斜面に佇む某楽器メーカー本社ビルのファサードだ。

「折角、緑の囲まれたところに越してくるのだから、オフィスでその自然を楽しみたいな。ただ、ブラインド!あれはだめだな。うちの社員はみんな閉めっぱなしにして昼間だというのにこの暗さだ。」
高速道路沿いの薄暗い旧本社で笑いながらオーナーが話してくれた。

気概のあるオーナーで「設計者だったらアーティステックなものを自信をもって提案すべきだ」と言う。こちらの提案した二列並列型の低層ワイドフロアオフィスを二つ返事で了解していただいた。

ブラインドのかわりとして、アルミパンチングパネルを用いて、外部からの日射と視線を調整しつつ、パンチング開口から周囲の緑を楽しめないかと考えた。試行錯誤の結果、5枚の可動アルミパンチングパネルとサッシのダブルスキンをオリジナルで考え提案した。

前例のないものを実現するのがこれほど大変なことだとは思いもしなかった。
実現に向けては、開口バリエーションニーズの把握やパンチングの孔径実験、モックアップによる可動実験などの建築分野だけでなく、ダブルスキン内の温度シミュレーションや無目換気と連動したエアフロー効果など、設備分野と協働する日々がつづいた。

初夏の汗ばむなか、オフィス50m一面にパンチングパネルが設置されたときの鼓動の高鳴りはいまも忘れられない。