one structural engineer
SCENE_2 下積み修行時代
1. 免震構造との出会い
地震の混乱が覚めやらぬ4月、私は当社の設計本部構造設計部に入社しました。約半年の研修を経て、いよいよ実施設計を経験するようになりましたが、その年の兵庫県南部地震の影響もあり、当時は免震建物の設計依頼がまさに雨後の筍のごとく舞込んでくる状況だったと記憶しています。当社では神戸の地震以前からすでに免震建物の設計・施工実績がありましたが、「ハイブリッドTASS構法」と呼ばれる新しいタイプの免震構法の開発・設計が勧められている時期でした。
そしてちょうど運良く、まさに震災が起きた神戸の地にこのハイブリッドTASS構法を採用したマンションの設計依頼があり、このプロジェクトに参加できたことは、本当に感慨深いものがありました。そして当時私が所属した設計室が免震建物を多く手がけたことから、この神戸のマンション以来、数件の免震建物の設計に携わり、当社の「ハイブリッドTASS構法」の技術の確立に参加できましたが、これは、「建物が人の命を守る」つまり「人の命を守る建物」を作りたいという私の目的に合致するものであり、非常にやりがいのある経験であったと思います。
ハイブリッドTASS構法の構成
ハイブリッドTASS構法は、地震時に弾性すべり支承をすべらせることにより、地震エネルギーを吸収し、揺れと地震力を低減する免震システムです