「祇園甲部歌舞練場」(当社改修設計・改修施工)が第34回 BELCA賞 ベストリフォーム部門を受賞しました。
公益社団法人ロングライフビル推進協会(BELCA)が主催するBELCA賞は、長期にわたって適切な維持保全を実施したり、優れた改修を実施した既存の建築物のうち、特に優秀なものを選び、その関係者を表彰することにより、わが国におけるビル のロングライフ化に寄与することを目的とする表彰制度です。
賞はロングライフ部門とベストリフォーム部門の2部門からなり、今回受賞したベストリフォーム部門では社会的・物理的な状況の変化に対応して、今後の長期使用のビジョンを持って、蘇生させる、もしくは飛躍的な価値向上等をさせるリフォームがされた模範的な建築物を表彰します。
公益社団法人ロングライフビル推進協会:http://www.belca.or.jp/
祇園甲部歌舞会 公式ウェブサイト:https://miyako-odori.jp/
祇園甲部歌舞練場

祇園文化を継承するための耐震改修
京都を代表する伝統伎芸「都をどり」の会場である祇園甲部歌舞連場の耐震補強の計画です。
現在の歌舞練場は、大正2年(1913年)に建設されています。その後、増築・改築を繰り返し、戦前・戦後の一時期に軍需工場への転用や連合国軍の接収を経ながらも、建物は存続していました。昭和27年(1952年)に建物が連合国軍から返還された際に、歌舞練場としての機能を取り戻すための大規模改修が実施されました。以降、現在に至るまで当時の姿を保ち、登録有形文化財に指定されていますが、耐震性の問題が指摘されたため、平成28年(2016年)以降は休館された状態にありました。
今回の工事では、舞台・客席機能を有する歌舞練場の本館と、そのエントランスにあたる玄関棟の耐震補強を実施しました。特に文化的価値が高いと評価される劇場内部空間には、耐震補強部材を露出させない計画を採用し、外観についても工事前の姿を保つことを試みています。かつての姿を美しく保存する耐震改修により、祇園町でこれまで受け継がれてきた文化的営みが今後も継承されていくことを目指しました。
また歌舞練場は、「都をどり」のために劇場であると同時に、祇園甲部の花街に所属する芸舞妓のための稽古場である「技芸学校」としての機能も有しています。
改修工事前の技芸学校は、本館から独立した建屋として戦後に建設されていましたが、機能的に更新の必要があったことから、創建当初の建物配置にならい、本館に接続して増築することとしました。技芸学校は、「都をどり」の際の楽屋としての機能も有していることから、本館と接続した形式によって、さらなる劇場機能の向上が期待されます。
増築部分は、歌舞練場のデザインコードを現代的に昇華した意匠を採用することで、これから先も歌舞練場とともに愛される建物となることを目指しました。

大規模木造の文化財に対する耐震補強
本館の耐震補強では、既存の木軸を原則残置したうえで、鉄骨架構によって地震力を負担する計画を採用しました。
文化財であるため外観・内観を保存することが求められる今回の工事において、耐震補強による軸組の影響を最小限に抑えるため、鉄骨部材を小屋裏と周囲のホワイエ・廊下空間に集中配置して本館客席内部の空間を保存する計画と施工が実施されました。
建物概要
- 建築主
- 学校法人八坂女紅場学園
- 所在地
- 京都市東山区祇園町南側570-2
- 用途
- 事務所学校、劇場
- 構造
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造
- 階数
- 地下1階、地上2階
- 敷地面積
- 10,837.71m2
- 建築面積
- 3,432.32m2
- 延床面積
- 5,292.99m2
- 工期(改修)
- 2022年12月 ~ 2022年11月
- 設計(改修)
- 大成建設株式会社関西支店一級建築士事務所
- 施工(改修)
- 大成建設株式会社関西支店
- WORKS:
- 祇園甲部歌舞練場
大成建設担当者
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- 建築設計
- 内藤多加志
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- 構造設計
- 坂口裕美
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- 構造設計
- 笹井弘雄
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- 構造設計
- 吉岡伸悟
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- 設備設計
- 安藤直也
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- 電気設計
- 木谷宇
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- 法規計画
- 藤原稔
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- 伝統建築
- 関山泰忠
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- 伝統建築
- 中谷扶美子