「大倉集古館」(当社元設計・改修構造設計・改修施工)が第32回 BELCA賞 ベストリフォーム部門を受賞しました。
公益社団法人ロングライフビル推進協会(BELCA)が主催するBELCA賞は、長期にわたって適切な維持保全を実施したり、優れた改修を実施した既存の建築物のうち、特に優秀なものを選び、その関係者を表彰することにより、わが国におけるビル のロングライフ化に寄与することを目的とする表彰制度です。
賞はロングライフ部門とベストリフォーム部門の2部門からなり、今回受賞したベストリフォーム部門では社会的・物理的な状況の変化に対応して、今後の長期使用のビジョンを持って、蘇生させる、もしくは飛躍的な価値向上等をさせるリフォームがされた模範的な建築物を表彰します。
公益社団法人ロングライフビル推進協会:http://www.belca.or.jp/
大倉集古館:https://www.shukokan.org/
大倉集古館
3Dプリンターによる装飾再生
銅板屋根二重化工法の手順
大倉集古館の沿革
大倉集古館は大倉喜八郎(1837~1928)により設立された日本初の財団法人の私立美術館といわれています。
大倉喜八郎は多数の文化財、土地、建物を寄付し、1917年8月に財団法人大倉集古館が誕生しました。
しかし1923年関東大震災により、当初の建物と陳列中の所蔵品を失いました。
幸い倉庫は無事であったため、伊東忠太設計・大倉土木(現・大成建設)施工による耐震耐火の陳列館を建築して、1928年10月再び開館したのが、現大倉集古館です。
1990年に東京都歴史的建造物に選定され、1998年には国の登録有形文化財となりました。
同敷地内のホテルオークラの建替え(2019年、「The Okura Tokyo」としてリニューアルオープン)に合わせ、大倉集古館も改修が計画されました。
曳家・地下へ増築・全体を免震化
全体配置計画の結果、大倉集古館を6mほど曳家し、さらに0.2度建物を回転させました。
また、周囲を囲うように増築されていた収蔵庫・事務所を撤去し、その機能を地下階に増築しました。
そして、収蔵する美術品約2500件(内、国宝3件、重要文化財13件及び重要美術品44件)を永久保存し、来訪者に安全に公開展示をしていくため、増築部の収蔵庫を含め建物全体を免震化しました。
最新3D技術の活用
内部外部共に3Dレーザースキャナーにより計測を行いました。
室内で一部欠損していた内部装飾石膏細工を、3Dプリンターで再生し補修しました。
文化財は一品生産のため、3Dプリンターを用いた補修は有効で今後も活かせる手法であることが確認できました。
銅板屋根の保存
所有者が特にこだわりを示された改修内容が、銅板屋根でした。
銅板屋根の寿命は長くて100年と言われ、改修計画スタート時には創建からすでに90年を経過していたため、計画当初は銅板屋根の更新を提案しました。
しかし美しく発錆した緑青銅板を残したいという強い要望のため、銅板屋根を二重化する工法を採用しました。
この工法は既存の緑青銅板を活かし取りし、新規銅板を葺いた上に既存緑青銅板をかぶせて戻し取り付けるもので、材料の継続利用が重視される文化財保存修理工事等に今後展開される可能性があります。
建物概要
- 建築主
- 公益社団法人大倉文化財団
- 所在地
- 東京都港区虎ノ門2-10-3
- 用途
- 美術館
- 構造
- 鉄筋コンクリート造(免震構造)
- 階数
- 地下1階、地上2階
- 敷地面積
- 1,576.23m2
- 建築面積
- 459.61m2
- 延床面積
- 1,948.13m2
- 工期(改修)
- 2016年2月~2019年7月
- 設計(改修)
- 株式会社谷口建築設計研究所、大成建設株式会社一級建築士事務所、株式会社森村設計
- 施工(改修)
- 大成建設株式会社東京支店