当社共同設計・当社共同施工作品の「新札幌アクティブリンク」が2023年度グッドデザイン賞を受賞しました。
公益財団法人日本産業デザイン振興会が主催する当賞は、総合的なデザインの推奨制度です。
デザインによって私たちの暮らしや社会をよりよくしていくための活動であり、1957年の開始以来、シンボルマークの「Gマーク」とともに広く親しまれてきました。
当賞は、製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごとに贈られます。かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰しています。
GOOD DESIGN AWARD (g-mark.org):https://www.g-mark.org/
新札幌アクティブリンク
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概要
再開発による複数建築を円環状につなぐ道路上空通路です。不可分の共有物で敷地を跨ぐことで、都市のコモンズとなるきっかけを構造物で作ります。延長176mの通路は、円環により力をバランスさせたモノコック構造で、内周部はガラスのみの開放的な歩行空間を実現しました。街区全体を繋ぐ姿と歩行体験から一体感を与え、まちのシンボルとなることを目指しました。
デザインのポイント
1.円環状の開放的な空間、野幌の四季を表現するテキスタイルやサインで、リハビリや回遊する楽しさを生んだ
2.敷地を超えた溶接一体の共有物で、設計・施工・維持管理プロセスもデザインし、街のエリマネへとつなげた
3.仕上げの落下リスクがなく維持管理しやすい。塗装仕様を上げガラスシール補修に充てる修繕計画で長寿命
背景
「新札幌アクティブリンク」は、高度経済成長期に札幌の副都心として作られた新札幌駅周辺の市営住宅跡地に対して、病院4棟、マンション、商業施設、ホテルが配置された、地域住民の生活に根差した再開発での地区施設として計画されました。通常であれば、新設道路の上空で通路2本が機能的に繋ぐだけの上空通路の在り方を見直し、街区の複数建物を円環状につなぐ上空通路とすることで、札幌の冬でも歩きやすく回遊性のある豊かで楽しい歩行体験を提供し、その体験と円環状のかたちの力によって、新しく生まれるウォーカブルなまちのシンボルとなることを意図しました。複数敷地を横断する共有物であり、公共性の高い構築物を生きた場として持続させていくため、単なる歩廊空間を超え、地域住民がウォーキングやリハビリなど日々の生活で活用したり、地域の展示ギャラリーにするなど、この場を自分事としてとらえ愛着を持って使い続ける都市のコモンズの創出を目指しました。
経緯とその成果
歩いて楽しく、まちの一体感が感じられる開放的な空間を目指し、円環形状を活かし全体で力をバランス、温度伸縮を逃し内側に柱が一切ない構造体としました。 野幌の自然や四季を表現する多彩な天井テキスタイルや床・壁サインは、歩く楽しさに寄与しています。天井に集約された設備機器の目隠しや、誘導サインや維持管理の位置特定でも機能します。 外周窓は、せん断力に応じて柱幅を漸次変化させたフィーレンディール構造とし、二次部材、仕上げがなく構造=意匠となる無駄のない構造計画としました。 結果、道路への落下リスクを減らし、目視点検がしやすくなりました。外装は橋梁塗装系で長寿命化、屋根は溶接構造で止水性に優れ無防水とし、維持管理に配慮しました。 施工中からワークショップや見学会を開催、活用方法だけでなく、デザイン意図や維持管理の注意点を共有しました。完成後も活動を継続し、活用方法やエリマネ方針を図式化しています。土木的な構築物に愛着を持ってもらう仕掛けを継続しています。
建物概要
- 建築主
- 大和ハウス工業株式会社
- 所在地
- 北海道札幌市厚別区厚別中央
- 用途
- 空中歩廊
- 構造
- 鉄骨造
- 階数
- 地上1階
- 建築面積
- 762.81m2
- 延床面積
- 762.81m2
- 工期
- 2021年7月 ~ 2022年6月
- 設計
- I街区設計チーム
(大成建設株式会社一級建築士事務所、株式会社ネイ&パートナーズジャパン、株式会社ドーコン) - テキスタイル
- 安東陽子デザイン
- サイン
- ダイアグラム
- 施工
- 大成建設株式会社札幌支店