当社設計・施工作品の「藤田美術館」が、2022年度グッドデザイン賞を受賞しました。
公益財団法人日本産業デザイン振興会が主催する当賞は、総合的なデザインの推奨制度です。
デザインによって私たちの暮らしや社会をよりよくしていくための活動であり、1957年の開始以来、シンボルマークの「Gマーク」とともに広く親しまれてきました。
当賞は、製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごとに贈られます。かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰しています。
GOOD DESIGN AWARD (g-mark.org):https://www.g-mark.org/
藤田美術館
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概要
大阪城のふもとにある美術館の建て替え工事です。
かつては藤田家の大邸宅が周辺一帯に広がっている場所で、土地の記憶を呼び戻すべく、隣接する公園との間に設けられた塀を撤去し、境界をなくすことで歴史の継承のあり方を追求しました。
公園からも自由も美術館に立ち寄ることができ、子供からお年寄りまで広く親しまれる美術館を目指しました。
デザインのポイント
- 旧美術館の「蔵」の記憶を継承し、古材を活かし伝統文化・芸術を伝え学びあう広場
- 隣接する都市公園との間にあった塀を撤去し敷地をつなぐことにより市民に開かれた美術館を実現
- 1室しかない展示室は可動壁により多様な展示方法を可能にし、展示替えも含め休まない美術館を実現
背景
「藤田美術館」の創設者藤田傳三郎氏は、明治維新時の廃仏毀釈運動で日本の貴重な文化財が海外へ流出し、また粗末に扱われ失われていくことに危機感を覚え、私財を投じ、古美術品の収集に努めました。
1911年当時最先端であった鉄筋コンクリート造の収蔵庫は昭和20(1945)年の大阪大空襲の際、大阪市内の町がほとんど焼失したにも関わらず、罹災を免れ100年以上長きに渡り美術品を守り抜きました。
邸宅跡地に建つ旧美術館は、国宝9件、重要文化財53件を含む約2,000件のコレクションを所蔵していましたが、空調が無いため春と秋のみ開館していました。
傳三郎氏の「これらの国の宝は一個人の私有物として秘蔵するべきではない。広く世に公開し、同好の友とよろこびを分かち、また、その道の研究者のための資料として活用してほしい」という想いを引き継ぎ、新く生まれた「藤田美術館」は子どもからお年寄りまで広く親しまれ、休館日の無い開かれた美術館を目指しました。
経緯とその成果
地域に根差す開かれた美術館を実現するため、隣接する都市公園との間の塀を撤去する事をまず一番に考えました。
塀の管理者である大阪市に対し、塀を撤去し敷地を繋ぐことによる相乗効果、文化継承の大切さ、体験する歴史の学びなどを伝え、2年に及ぶ様々な協議を重ねることによって、塀の撤去が実現しました。
高い塀で囲われ閉鎖的に分断されていた当敷地は庭園の造形を媒介として開放的なデザインが可能となりました。
さらに収蔵庫、多宝塔、茶室、庭園の礎石など様々な素材を最大限保存・再利用することで、他では代用できない唯一無二の部材は贅沢な空間を生み出しました。
今となっては再現が困難な職人の高い技術は100年もの時代を経てなおその役割を全うする事ができます。
保存部材の潜在力は、存在しているだけで空間を濃く豊かに変換する力があります。
土地と建物(部材)の記憶・伝統、数々の美術品が人々の心に残り、豊かにする事が「藤田美術館」の役割となります。
建物概要
- 建築主
- 公益財団法人藤田美術館
- 所在地
- 大阪府大阪市都島区網島町10番32号
- 用途
- 美術館
- 構造
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造
- 階数
- 地下1階、地上2階
- 敷地面積
- 3,305.98m2
- 建築面積
- 2,171.63m2
- 延床面積
- 4,214.36m2
- 工期
- 2018年11月~2020年8月
- 設計
- 大成建設株式会社関西支店
- 施工
- 大成建設株式会社関西支店
- WORKS:
- 藤田美術館
大成建設担当者
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- 建築設計
- 平井浩之
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- 建築設計
- 渡邉智介
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- 建築設計
- 宮本育美
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- 伝統・保存建築
- 松尾浩樹
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- 伝統・保存建築
- 杉江夏呼
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- 伝統・保存建築
- 関山泰忠
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- 伝統・保存建築
- 中谷芙美子
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- ランドスケープ
- 山下剛史