- 用途
- 神社
- 所在地
- 東京都港区
- 延床面積
- 1,233.38m2
- 階数
- 地上1階(社殿・社務所)、地上4階(参集殿)
建築設計コンセプト
現代における伝統をデザインする - 都心の神社として
西久保八幡神社はこの地で親しまれる創建以来千年余の歴史のある神社です。当計画は隣接する虎ノ門麻布台再開発事業(現:麻布台ヒルズ)に関連し、境内地の一部が換地されたことに端を発した全棟建替整備計画です。新しい境内と社殿は、神社の諸問題の解決と麻布台ヒルズとの関係性を踏まえ、地域の氏神としてこれからも長く崇敬され続けることを念頭に、都心における神社の在り方の一つを示すものとなっています。工事は神社の継続運営や再開発事業との取合いを考慮し、ローリングにより進められました。
境内をデザインする – 都心の鎮守の森・居心地のよい滞留空間をかたちづくる
樹叢(じゅそう)により鬱蒼としていた境内を、社殿・末社のほか貝塚などの遺構、麻布台ヒルズからの新たな参詣者の動線などをふまえ、領域ごとにテーマを与え整備しました。既存の緑を生かしつつ新植し、領域ごとに視線をコントロールすることで都心にありながら、緑に包まれた境内となっています。静穏な神域を守り、都市のオープンスペースとして居心地のよい滞留空間をかたちづくりました。
麻布台ヒルズとの関係をデザインする - 神社と地域を機能的に結ぶ参集殿
元来、麻布台ヒルズの地域は八幡神社の氏子町です。参集殿はヒルズの賑わいに対する緩衝帯として機能すると同時に、1階は各町会の神輿(みこし)庫としてまちと神社をつなぎます。最上階の参集所は渡り廊下を介して社殿とフラットにつなぐことで参拝や祭典で使い易く、地域と神社を結びます。なお4階建の参集殿は、社殿より約11m低い土地に建つため「本殿高さを超えない」という基本的な神社の計画作法を満たしています。
ヒルズからの歩行者デッキは社務所東側へ伸び、正面参道へと至る長い動線としています。これは社殿正面から参拝する基本的な動線を維持したものであり、参詣へと誘うこころの準備空間となります。またこれは社務所からの視認性を高め、少人数で管理運営するための配慮でもあります。
耐火建築物で本格的な伝統木造形式をデザインする
旧社殿同様の権現造りとした社殿は法令上、耐火建築物とする必要がありました。そこで社殿は主要構造部を鉄筋コンクリート造や鉄骨造とし法的要件を満たしながら、天然木の化粧材により詳細まで丁寧に作り込みました。これにより本格的な伝統木造と違(たが)わない社殿の意匠を実現しました。
構造設計コンセプト
安心と安全を重視し耐震性能を高め施工性を考慮した構造計画
敷地外周部は土砂災害特別警戒区域(急傾斜地)に該当したため、都建築安全条例第6条適用となります。参集殿においては斜面崩壊時の荷重に対して安全な設計を行い、基礎は既製コンクリート杭、上部構造はRC造で屋根はS造としています。
また社殿は耐震重要度係数を1.25としつつ、狭い工事動線での施工性を考慮し基礎は回転貫入鋼管杭を採用しています。本体の上部構造はRC造で屋根および小屋組はS造、向拝柱は軸力受けとし細身の鉄骨柱とするなど、各建物共、意匠性を踏まえ、複合的に用途に適した構造を用いた計画となっています。
設備設計コンセプト
使い勝手と意匠の調和に配慮した設備計画
意匠性を考慮するとともに、運用面にも配慮した設備計画としました。最も重要な社殿(拝殿)においては、空調・全熱交換器を隠ぺい型・木製制気口とし、境内全体を2700kに統一する照明計画など、神社に相応しいものとしています。なお広い境内の屋外配管の水漏れ対策のため、給水管20m毎にバルブを設置、手水舎では人感センサーによる給水制御による感染予防など、運用・衛生面にきめ細かく配慮しています。
担当
担当 | |
---|---|
設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 松尾浩樹、水野俊、関山泰忠、針谷誠 |
構造設計 | 池間典一、増田和雄(前期)、西尾博人(後期) |
設備設計 | 村田義郎、渡邊裕美子 |
電気設計 | 村田義郎、山中康弘 |
まちづくり | 石田武 |
まちづくり・ランドスケープ | 平賀順也 |