- 用途
- 店舗、事務所、休憩所、公衆便所
- 所在地
- 広島県広島市中区基町
- 延床面積
- 4,741.22m2
- 階数
- 地上2階
建築設計コンセプト
旧広島市民球場跡地のPark-PFI事業
旧広島市民球場があった4.6haの敷地にPark-PFI制度を用いた事業として8棟の商業施設、大屋根、イベント広場、その他公園施設を計画しました。本計画地は中央公園の一部であり、原爆ドームがある平和記念公園の北側に位置する、非常に敷地特性が強い場所です。かつて市民の熱狂と感動に包まれた旧市民球場の痕跡を残すように各施設を分棟配置し、丹下健三氏が構想した南北の軸線に沿って平和の象徴となるプロムナードを整備しました。平和記念公園から続く南北軸と、球場の記憶を残す形状、という特徴的な構成により、歴史を尊重し、市民に愛される憩いの場を目指しました。
新しいライフスタイル「オソト文化」を育む市民公園
土地に刻まれた歴史を継承しつつ、外で豊かな時間を過ごす「オソト文化」を育む公園施設を整備しました。中央に広場を設け、それを囲うように店舗を分棟で配置、さらに外側に緑地帯を回し、球場の「かたち」を継承した2つの輪が、人の流れ、日常的な賑わいを生み出し、まちの回遊性を促すポンプ的な施設を計画しました。
店舗群は、並木を想起させる外観の木造建築とし、木陰のような軒下のテラス空間を作ることで公園と一体的に利用できる店舗デザインとしました。Park-PFIという事業特性上、公募対象公園施設は供用開始から19年後に解体されることもあり、大部分に在来軸組み工法を採用、建材には県産木材を活用し、公園の魅力向上と脱炭素化にも取り組みました。
特定公園施設の建築は、大屋根ひろばと公衆トイレを計画しました。大屋根ひろばは、店舗群の一部に配置することで、賑わいを引き込む日常の憩いの場とイベント広場との連携を図りました。屋根材には膜を用い、明るく開放的な空間を演出しながら、マルチなイベントも開催できるよう、インフラ設備も計画しました。外観は、公園の景観を意識した並木形状に折り鶴の要素を組み込んだストラクチャーデザインとし、お互いが支え合う構造形式とすることで、市民の方々が支え合って築いてきた平和への歴史を体現しました。
公衆トイレは、障害者や乳幼児連れなど様々な方に対応したトイレを整備しました。おもてなしの心を感じるトイレとして、各トイレにアクセスする前室として「おもてなしホール」を計画することでトランスジェンダーの方などが周りの目を気にせずに安心して利用できるように配慮しました。また、1.7万人規模のイベントにも対応可能な便器数を設置し、公園中央で行われる多種多様なイベント時にも快適に利用できる計画としました。
構造設計コンセプト
事業開始から20年の事業期間が経過したら解体し、更地にして事業終了となることから、20年後に解体しやすい構造かつ公園にふさわしい構造として木造を採用しました。
商業施設として開放的であることが求められる中、一般的な在来軸組工法で用いられる壁倍率に比べて高耐力な壁を用いることで建築プランとの調和を図り、在来軸組工法での開放的な商業施設を実現しました。
また、テナントリーシング上なるべく屋内の柱を細くしたいという要望を叶えるため、準耐火建築物となる棟は外壁耐火構造で設計を行うことで、屋内の柱は耐火被覆の省略分、柱径を小さくする計画としました。
木造店舗群正面のテラス下には並木ストラクチャーと呼んでいる柱群があり、主体構造は鉄骨として仕上げ材に木を用いることで、キャンチ梁を支える方杖を樹木の形状と馴染ませています。
市民が集う大屋根ひろばは、鉄骨造鋼管構造を採用し、直径216mmの鉄管柱が逆三角錐の柱脚となり屋根を支える構造としました。ユニットの組み合わせによって各部材を極力小さくし、軽快な印象を与えています。接合部は溶接による接合を採用しました。
設備設計コンセプト
Park-PFIの設備計画
広島市が最大9割の費用負担をする特定公園施設と、全額事業者負担となる公募対象公園施設で重複する設備に関しては、共用することでイニシャルコスト・維持管理費の低減を図りました。また、公募対象公園施設は供用開始から19年後に解体されることもあり、都市ガスは事業者負担金なく敷地内に低圧本管延伸とすることで、解体時を含む事業者コストの削減を図る計画としました。
都市公園の照明はJIS、警察庁要綱等を基に施設区分毎に最低照度を設定し、夕暮れ時の安らぎ演出と夜間の安全に配慮すると共に大屋根の上弦梁上面のテープライトや並木ストラクチャーのアッパーライトにより大屋根の幕屋根や木造商業施設の庇を照らすことで並木の風景を演出しました。
特定公園施設の公衆トイレの一般大便器は災害時に洗浄水量を1L/回に低減が可能なレジリエンストイレとすることで断水時にも利用制限がされにくいトイレを計画しました。
ランドスケープコンセプト
原爆ドームからの平和軸を延伸する桜並木のプロムナードを整備し、その北端には小高い丘を作り、未来の平和を担う子ども達が遊ぶ空間としました。プロムナードに重なる緑の骨格は、旧球場外郭線をなぞりそのスケール感を想起させると共に、ホームベースやピッチャープレートを元の位置で再現、スタンドの座面を休憩ベンチとして再利用するなど、市民の熱狂と感動の記憶を継承しました。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 服部光宏、常田悠太、本田偉大 |
構造設計 | 藤永直樹、谷田貝健、大瀧浩人、中村咲瑛子 |
設備設計 | 小和田信裕 |
電気設計 | 根本昌徳、星野顕 |
ランドスケープ | 蕪木伸一、藤澤亜子、小倉満 |
社外受賞
2024年 | グッドデザイン賞 |
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2024年 | LIXILフロントコンテスト2022-23 大規模施設部門 銅賞 |
2023年 | ウッドデザイン賞2023入賞 |