WORKS 2023

中外製薬浮間事業所初期臨床開発用バイオ原薬製造棟

Chugai Pharmaceutical Co., Ltd. Biological drug manufacturing building for early clinical development

  • 北側外観:抗体をモチーフにしたパンチングパネルでおおわれた外装

  • 西側外観:T-Green®Multi Solarを採用した環境ファサードデザイン

  • 西側外観(近景):シースルーガラスの太陽光発電パネルによるダブルスキン

  • パンチングパネル詳細:抗体をモチーフにしたデザイン。同じ配列のパネルは無く、決してパターン化できない創薬の追求を表現

  • 北側外観(近景):クリーンルームに光を届ける多目的最適化によるランダム配置のルーバー

  • クリーンルーム:外の光を採り入れるため、厳密な日照シミュレーションを実施

  • エントランス外観:ガラス庇が光を反射する

  • 製造管理室:フリーアドレスのワークプレイス

  • ミーティングスペース・休憩エリア:フリーアドレスで使える打合せスペース

用途
研究所
所在地
東京都北区
延床面積
3,738.37m2
階数
地上4階

建築設計コンセプト

施設コンセプト / 人と環境にやさしい医薬品製造拠点

バイオ医薬品の初期開発治験薬(FIH)を造る施設です。GHGfree(温室効果ガスゼロ)、ファサードデザインによる環境施設の発信(外装の高機能化)、自然採光クリーンルーム(製造完了の改善)の3つを達成しています。
環境ファサードデザインでは、多目的最適化によるルーバー、抗体をイメージしたパンチングパネル、単結晶太陽光発電パネル、シースルーガラスパネル、遮光と昼光利用の自動回転ルーバー、将来更新のためのメカニカルバルコニーを設けています。また、NH3,CO2利用による自然冷媒の採用、電気ボイラーの採用によるオール電化、アンモニア冷凍機・CO2ヒートポンプの採用、製薬用水のCold WFIシステム、太陽光発電パネル・太陽熱集熱利用などの16の環境技術を導入し、建物一次エネルギー消費量44%削減見込みとなります。

環境ファサード / 抗体をモチーフにした光を取り込むダブルスキン

バイオ医薬品を製造するこの施設を表すため、抗体をモチーフにしたパンチングパネルで覆うこととしました。3階から2階へと製造が進むにつれて抗体が多くなるため、孔のランダム配列を考慮しています。同じ配列のパネルは無く、決してパターン化できない創薬の追求を表現しました。
ダブルスキンは将来のダクトルートを見越すフレキシビリティの確保・太陽光発電パネルの実装・遮光と採光を両立するルーバーなど高機能化を追求しました。

クリーンルーム / 自然採光を実現する多目的最適化によるルーバー

サステナブル・コンストラクションの実現のために、遮光と採光という相反する条件が外装に求められました。クリーンルームに外の光を取り入れるために、厳密に日照シミュレーションを行っています。ルーバー配置は多目的最適化を行っており、内部の窓のレイアウトが変換され表層あらわれた結果となっています。多品種をつくる多様性のデザインです。

ワークプレイス / ユーザーヒアリングにより決め込んだフリーアドレスの製造管理室

オフィスである製造管理室は、実際のユーザーにヒアリングを重ねフリーアドレスの計画を行いました。固定席は無く、この建物での製造予定がある場合に利用するオープンスペースです。カウンター・オープンデスクだけでなく、材料・色彩にもアクセントを加え、コンパクトながらも場所づくりを追求しました。

構造設計コンセプト

BCP対応に配慮した免震システムと架構形式の採用

本建物は、地上4階、軒高27.10mの研究所です。平面形状は52.0mx21.0mの整形な形状で、長辺方向が8.0~12.0m×5スパン、短辺方向が10.5m×2スパンです。極めて稀に発生する地震動に対しても建物の安全性を保持し、損傷を最小限に抑えること、什器の転倒の恐れのない加速度に納めることを目的として免震構造を採用しました。
地上部は鉄骨造とし、架構形式はブレース付きラーメン構造、免震方式は水害リスクに対するBCP対応に最適な高減衰系積層ゴム支承を使用するシステムとしました。免震装置は1階床下に設置し、免震層の偏心が極力小さくなるように配慮しました。ブレースは生産ラインに影響のない部位に配置し、1階は機械室脇に、2階より上は外周部に配置する計画としました。
基礎は、GL-21m近傍のN値50を超える砂礫層を支持層とする杭基礎としました。

設備設計コンセプト

脱フロン、脱化石燃料を実現した先進の省エネルギー医薬品工場

クリーンルームを有するエネルギー多消費型施設ですが、フロン冷媒0、都市ガス利用0、管理エリアエネルギー収支0のスリーゼロを実現しました。
冷熱源はアンモニア冷凍機、CO2冷凍機を用い、温熱源はCO2ヒートポンプ熱源を利用したシステムとしました。蒸気供給は蒸気使用量を削減し電気ボイラーとすることで建物内における都市ガス燃焼を無くし、調達電力をグリーン電力とすることで実質的に建物運用によるCO2発生はゼロとなります。
水資源有効活用にも配慮し、雨水・空調凝縮水・RO濃縮水の再利用により建物内での水循環利用を図っています。屋上のキュービクル上部、PH上部、壁面には太陽光発電を設置し、太陽熱集熱も行い自然エネルギー利用を図っており、省エネ率44%、創エネ率58%で実質的にはクリーンエリアを除く主として管理エリアのエネルギーは全て創エネで賄う計画としています。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
建築設計 曽根奨、毛塚順次、黒田守、上田恭平、宮本晃代
構造設計 小林治男、大石哲哉、栗田大輝
設備設計 岩村卓嗣、安田勝彦
電気設計 岩村卓嗣、小林卓哉
エンジ 佐藤正浩、野口雄史、司馬聖大、柳田幸記、山本智大、鈴木克也

社外受賞

2024年 2024 Facility of the Year Awards(年間優秀施設賞)Social Impact部門 受賞

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