- 用途
- 寺院
- 所在地
- 神奈川県横浜市港南区
- 延床面積
- 661.25m2
- 階数
- 地下1階、地上1階
建築設計コンセプト
地域のシンボルとして誇りと愛着をもたれ、永く引継がれる環境をつくる
計画地は、前面に道路と川、背後に約7m高台となった墓地、同北西には小高い丘を擁しており、境内地(外部空間)が限られ狭く、墓参への高低差の登り降りに苦労していました。
本計画は本堂の建替え及び斜面・境内地の整備事業です。
発注者の要望「歴史を継承し次世代へつなげる本堂・境内づくり、伝統様式・技術へのこだわり」に対し、事業目的を「地域のシンボルとして誇りと愛着をもたれ、永く引継がれる環境をつくる」こととし、環境特性を最大限に生かした德恩寺らしい特徴的で存在感のある本堂と境内を実現しました。
重層形式の伝統木造本堂と石切り場をイメージした擁壁
敷地の最大の特徴である敷地高低差に着目し、高台の土留めを兼ねる本堂とすることで、①境内の拡大、②見え掛り高さの高い本堂を実現しました。この本堂は下階のRC造と上階の伝統木造を木割に基づく調和した重層形式の意匠とし、一体感のあるシンボリックな外観としています。また、本堂東側は石切場をイメージした擁壁としました。凹凸ボリュームと葦簀型枠による荒々しい仕上げは、見え方の変化やテクスチャに興味を持ってもらう仕掛けです。
既存本堂部材の転用による歴史と記憶の継承
檀信徒の方々の旧本堂への愛着を踏まえ、参拝者の利用する室すべてに既存材を転用しています。転用においては既存部材が訴えかける力強さや特徴を十分に引き出し、新築部分と既存部材双方が引き立ち、全体が豊かな空間になるよう意識したものとなっています。
構造設計コンセプト
本建物は木造伝統構法の本堂をRC躯体で支持する混構造建物で、高性能の木造耐力壁と高耐久コンクリートの適用により、後世に残る建築となることを目標としました。
お寺の要望である「開放的な空間」「無垢のケヤキ柱の使用」「金物は極力使わないこと」を実現させるため、高剛性で高耐力の真壁「T-Wood-真壁」を開発し、大臣認定取得による仕様規定の適用除外を行っています。
仕様規定の適用除外にあたっては、「T-Wood-真壁」の実大実験より耐力壁のモデル化に対するBCJの個別評価を取得し、その評価結果に基づいた構造モデルで時刻歴応答解析を行うことで建物(本堂)の性能評価を取得するという2段階の評価を受けています。
なお、同一建物に付随する鐘楼は貫構造であり、性能評価において限界耐力計算を行っています。
設備設計コンセプト
お寺ならではの意匠性と使い勝手に配慮したメリハリのある設備計画としました。
電気設備は、敷地内の既存建物に対し、複数あった既存引込の一本化を図ることで、管理運用を容易にしています。また組物や彫刻を印象的に照らす照明、繊細な格天井に配慮した空気管の設置等、意匠性に配慮した計画としました。
空調設備は、各居室に対しては全熱交換器を設置し省エネに配慮しています。内陣の空調においては下階天井内に隠ぺい型室内機とダクトを設置し、上階二重床内を経由、大壇側面の格狭間を吹出口としています。これは意匠性を損なわないこと、なにより天板より低い位置から吹き出すことで、大壇上の蝋燭の炎の揺れを抑制することを可能にしています。これにより荘厳で快適な法要環境を実現しました。なお意匠性の極めて重要な内陣以外は、天井カセットとしバックヤードは露出配管とするなど、メンテナンス性、コストなどのバランスに配慮したメリハリのある計画としています。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
工事監理 | 時代建築設計室 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 松尾浩樹、水野俊 |
構造設計 | 池間典一、大島睦巳 |
設備設計 | 村田義郎、清水賢、渡邊裕美子 |
電気設計 | 村田義郎、木谷宇 |
受賞
2024年 | 照明施設賞 東京支部審査委員特別賞 |
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2023年 | 日本空間デザイン賞2023 公共生活・コミュニケーション空間 入選 |