- 用途
- 庁舎、集会所、図書館
- 所在地
- 北海道古平郡古平町
- 延床面積
- 3,887.03m2
- 階数
- 地上3階
建築設計コンセプト
次の100年を共に歩む寒冷地ZEB庁舎
北海道古平町は、人口約3000人の古くは漁業で栄えた町であり、既存庁舎は昭和初期から95年間使われた建物でした。そのため、新庁舎も次の100年を担うような長寿命建築とすることがこの町独自の歴史・文化の醸成につながると考えました。
一方で、古平町は北海道で初めてゼロカーボンシティ宣言を行い、本建物のZEB達成を旗印に環境と向き合う町づくりへと舵をきる転換期を迎えていました。
そこで地域環境に呼応するように、高断熱ランダム壁柱による木立状のファサードを形成し、地場木材や輻射冷暖房、ワークショップ作品を壁柱に組み込む躯体現しの建築としています。蓄熱性の高い躯体現しの空間は内部の温熱環境を安定させ、古平の気候に合わせた採光・通風や設備計画、地場産木材の利用により、居心地のよい町民の居場所と大幅な省エネを図りました。
運用開始から1年が経過し、一般の建物に比べて79%の省エネを実現しています。運用面での継続的な省エネにより、この先100年続く持続可能な町づくりを町と共に歩んでいける建築を目指しました。
構造設計コンセプト
「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」により構造体はⅠ類とすることが必須であったため、必要保有水平耐力の1.5倍を確保しています。
木立をイメージした外柱間の外周梁は、短スパン梁となることからSRC梁を採用し、地震力の8割を外周フレームで負担しています。
コア周りのRC壁は、中央スパンの在来RC梁の梁成を抑えるための鉛直支持材としT-POP梁と同じ梁成を実現しています。
12mと14mスパンに、廃材を削減する木RC梁「T-WOOD PC-BEAM」を120台採用し大空間を実現しています。90㎜の集成材をT-POP梁両側に取り付けることで、曲げ剛性は約1.2倍、耐力は約1.5倍上昇することを実大実験で確認しています。
外周の斜め柱と中央の直立柱との取り合いは、合計10種類のパターンとなり、木およびT-POPの製作長さを決定しています。
中央の吹き抜け部分は跳ね出しスラブで構成されており、吹き抜け上部のハイサイドライトは耐震壁と鉄骨を組み合わせたブレースのない架構としました。
設備設計コンセプト
本建物は、外壁開口率と外壁率を低く抑えた壁柱の正方形プランとし、外断熱工法・自然換気をはじめとするパッシブ技術と北海道ならではの地中熱を利用したHPシステム、アースチューブなど多彩なアクティブ技術を融合させ、北海道初のZEB庁舎(BEI=0.42、58%省エネ)を実現しました。
稼働時間が長い庁舎の執務室は、躯体放射エリアを床と天井及び外壁柱部分の3面設けることで、空間の温熱環境の快適性を向上させました。
稼働時間が間欠である各居室は、寒冷地用高効率PACを採用し経済性を考慮しました。その中でも天井高さが高い大ホールは、しみ出し空調を取り入れ快適性も併せ持つ空間を提供しています。
南・西面の斜め壁柱間に太陽光発電ガラス「T-Green Multi Solar」を組み込み、防災棟上部のPVパネルと合わせて26kWの発電量と24kWhの蓄電池を確保し、72h運転の非常発電機に加えてBCP対応も十分備えた庁舎となっています。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
什器共同設計 | 北海道大学建築デザイン学研究室 |
積雪対策技術協力 | 北海道科学大学 千葉隆弘教授 |
設備技術相談 | 北海道大学環境システム工学研究室 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 高橋章夫、杉野宏樹、鈴木まゆみ、前田清子 |
構造設計 | 石澤賢史、熊谷光祐、小山智子 |
設備設計 | 熊谷智夫、梶山隆史、庄司朋子、山本進、大木泰祐 |
電気設計 | 熊谷智夫、山口亮、藤間一憲 |
受賞
2025年 | SDGs 建築賞 大規模建築部門 国土交通大臣賞 |
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2024年 | 第37回 北海道赤レンガ建築賞 赤レンガ建築奨励賞 |
2024年 | 日本建築家協会優秀建築選 |
2024年 | 第34回 AACA賞 奨励賞 |
2024年 | 電気設備学会賞 技術振興部門 振興賞 |
2024年 | 日本コンクリート工学会賞 作品賞 |
2024年 | 環境・設備デザイン賞 建築・設備統合デザイン部門 入賞 |
2024年 | カーボンニュートラル賞 北海道支部 |
2024年 | 日本建築学会作品選奨 |
2024年 | 作品選集2024 |
2023年 | 北海道省エネルギー・新エネルギー促進大賞 省エネルギー部門 大賞 |
2023年 | グッドデザイン賞 |
2023年 | 照明施設賞 |
2022年 | 日本空間デザイン賞2022 公共生活・コミュニケーション空間部門 入選 |