- 用途
- 事務所
- 所在地
- 福岡県福岡市博多区
- 延床面積
- 29,205.37m2
- 階数
- 地上10階、塔屋1階
建築設計コンセプト
コンクリートとガラスの積層がつくる建築の素形
博多駅筑紫口の駅前に建つテナントオフィスビル。敷地の中央にキュービックなボリュームを配置し南北に街とつながる大規模な広場(サウスガーデン、ノースガーデン)を確保、それらを建物内のストリートで接続し、建物を通して街のにぎわいをつなぐ計画としました。筑紫口に新たな風景を生み出す街の拠点として、福岡市の推進するまちづくり制度「博多コネクティッド」の第一号認定を獲得しました。
ファサードにはRC の構造体をあらわしで用い、打放しコンクリートとガラスの積層による彫りの深い表情を構築しています。インテリアにもRC壁柱を表出し、内外にわたってコンクリートの素材感を活かした空間を実現しています。
キュービックなボリューム、要素をそぎ落とし構造と一体となったファサード、完全なセンターコア平面など、純度の高い構成により立ち現れる建築の素形としての力強さが確かな存在感を放ち、まちの発展に寄与することを期待しています。
構造設計コンセプト
センターコアに壁柱制振架構システムを導入した構造
本建物は、X方向、Y方向共に7.2m×7スパンであり、センターコアに壁柱制振架構システムを導入したオフィスビルです。RC造を基本とし、14.4mのロングパン梁を鉄骨造としています。
コア周辺の壁柱制振架構は、RC壁柱とそれらを連結する鉄骨制振梁(低降伏点鋼を用いたせん断型ダンパーを内蔵する梁)で構築しています。高い建物剛性と同時に、繰り返し作用する地震に対して粘り強く抵抗できる架構です。本震と同レベルの余震が発生することを想定し、極めて稀に発生する地震動を複数回経験しても鉄骨制振梁の耐力低下が生じないよう配慮した設計としました。また、天井内に納まる制振部材とすることでコンパクトに仕上げ、貸床面積の確保に寄与しています。一方、外周はシンプルなRCラーメン架構としています。柱スパンの7.2mを確保しつつ、外周腰壁より内側に柱をセットバックさせることで、RC打放し壁の水平ラインが引き立つファサードを実現しています。また、建物四隅の柱を地震力から解放し、細径鋼管柱としました。コーナー部の眺望を確保すると同時に、エッジを軽やかに見せることに寄与しています。
BCP(事業継続)対策として、各階に加速度計を設置して常時観測し、地震発生時には建物の状態を迅速に判定、管理者に通知することができる構造ヘルスモニタリングシステム「揺れモニ(®株式会社NTTファシリティーズ)」を導入しています。被災直後の迅速な建物損傷度判断や、その後の効率的な復旧対応を支援できます。
設備設計コンセプト
災害時のための機能を備えつつ、事業性を考慮した設備計画
本建物は地方都市のテナントオフィスビルとしての事業性を考慮し、「空調機の天井カセット型の採用」、「最下階である1階の排水用に汚水槽を計画しない」など事業性に配慮した仕様を採用しながら、災害対応等の核となる機能は高水準を確保するメリハリの効いた計画としています。計画地は浸水レベル1000~2000mmの浸水地域に該当していますが、躯体による防水区画の立ち上げなどで建物の主機能は水に浸からない計画とし、また下水道からの汚水の逆流については管路に逆流防止措置を計画することで、災害時にも機能維持可能なオフィスビルを実現しました。
停電対策として72時間稼働可能な非常用発電機に加え、高圧引込みは地中・架空による本線・予備線の2回線受電を行うことで、停電事象(事故、浸水など)に対するリスク回避を行う計画としました。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 高橋章夫、石井孝典、山口弘 |
構造設計 | 一色裕二、壇泰朗、青野英志、加納和麻、伊藤晶、橋本直樹、竹熊渓 |
設備設計 | 小野田修二、割田朋香、笹川貴久 |
電気設計 | 小野田修二、松浦尚彦、眞鍋珠美 |
ランドスケープ | 佐野剛仙 |
受賞
2023年 | グッドデザイン賞 |
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