- 用途
- 病院
- 所在地
- 長崎県長崎市
- 延床面積
- 10,165.49m2
- 階数
- 地上6階
建築設計コンセプト
重工記念長崎病院は、明治30年(1897年)に「三菱長崎造船所病院」として誕生した、120年超の歴史を持つ病院です。日本で最初の企業内病院であったと言われています。2016年に医療法人として独立したのを機として、新たな敷地に、新たな病院を建設する運びとなりました。
敷地は長崎港を一望できる、絶好の位置にあるため、待合室や病室、ラウンジなど、建物内のあらゆるところから、長崎港の眺望を楽しめるように設計しました。入院フロアには、海に面する大きなウッドデッキのテラスを設けて、入院患者さんが港の風をいつでも感じられるようにしています。
建物の外観デザインは、低層部をレンガ調の外壁とし、上部は白く浮かびあがる客船をイメージしたデザインとしました。 レンガの外壁は、敷地周辺に今も残り地元の人々に親しまれている、明治時代の古いレンガの街並みの記憶を、未来へとつなげていくことを意図したものです。純白の客船のようなデザインに、造船所を発祥とする「この病院らしさ」を表現しました。
インテリアは、大正から昭和にかけて使われていた、レンガ造の二代目病院の、木と漆喰の内装をモチーフにしながら、現代的にスタイリッシュにデザインしました。 他の病院にはない、歴史というこの病院の個性を感じられるデザインとしました。また、「石畳の床」、「オランダ積みのレンガ」、「出島ゆかりの白詰草」など、「長崎らしさ」を随所にデザインにとり入れて、患者さんや病院職員、地元の人々に、長く愛着を持たれる建物であることを願いました。
構造設計コンセプト
病院という建物用途、海に近接する敷地を考慮して構造形式は鉄筋コンクリート造としました。
低層部では南面・西面のレンガ風タイル仕上げの壁が林立するファサードを実現するため、柱際には構造スリットを設けず、柱の袖壁を耐震要素とし、袖壁付き柱として計画しています。また、建築計画に影響しないよう、階段やエレベータ周りの区画壁を連層耐震壁とし、大地震時でもこの連層耐震壁が壊れないよう、1~4階の壁のコンクリートに高強度コンクリートを使用しました。地震時に建物が平面的にねじれないように、これらの袖壁付き柱や連層耐震壁の壁厚や柱断面を設定し、建物全体の耐震性を高めました。
設備設計コンセプト
計画地は長崎港を一望する立地で、浸水や塩害への対策が必須となりました。そこで本計画では、主要設備である受変電設備・発電機・受水槽設備は、建物屋上に配置して、想定外の浸水(津波・高潮・あびき)を受けても建物が機能できる計画としました。また、セットバック部の屋上に設備機器を配置することで、海からの風を建物自体で防ぎ、塩害を緩和する計画としました。
港側の外観に配慮した建築計画としているため、設備機器については港側に露出しない計画としました。上層部の病棟の換気口はサッシ一体型とすることで、ベントキャップやガラリといった給排気口が露出しないように配慮しています。一方、陸側には必要各所に給排気口を設置するなど、費用対効果の高い、メリハリのある計画としました。病棟個室の一部にはサーカディアン照明を導入し、夜間徘徊者の抑制を図り、患者に優しくスタッフの負担も軽減する照明計画としました。
担当
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 下手彰、佐々木直大、村上雄一 |
構造設計 | 藤永直樹、要知市郎、壇泰朗 |
設備設計 | 龍英夫、矢後佐和子 |
電気設計 | 龍英夫、箭内伸司 |
受賞
2021年 | 2020年 照明普及賞 九州支部長賞 |
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