- 用途
- 店舗(テナントビル)
- 所在地
- 東京都豊島区
- 延床面積
- 1,468.29m2
- 階数
- 地下2階、地上6階
建築設計コンセプト
二つの街の魅力で織り成すプリズム建築
昔ながらの横丁文化を色濃く残すエリアと、その横丁を刷新した緑豊かな公開空地の狭間に立地する商業系のテナントビルの計画です。そもそも商業のステージを提供するテナントビルは、表層で周辺との関係をつくり、人を招く役割が求められます。そこで意識したことは、この敷地に既にある周囲との関係性を写し取るだけで、建築を作れないかという逆転の発想です。
敷地は裏通りにありながら、大通りから見通しがきく角地に位置しています。歩行者の目を引き付けやすい角地を活かし、二面の外壁を倒して線対称の角を形成することで、大通りに対する正面性を持たせました。更に前面道路に面する外壁を傾けることで、通常の計画より1層高い階数を確保しています。
階間の幕板に設けたガラス越しの各階店舗サインは歩行者の視線の角度を意識し、フロア高さに応じて段階的に傾け、地上からの視認性を高めています。横丁のそぞろ歩きのように視線を上空の店舗へ誘う効果を狙いとしました。
外観は「高層ビル街のスケール感」に呼応して縦方向に伸びる斜めのGRC壁に対し、開口部で見え隠れするサインにより「古き良き横丁の賑わい」を縦横に織り上げています。エントランス空間でも左右で明暗に分断した空間とすることで、敷地周辺との一体性を強めており、地域の個性に根差したイメージが醸成されてゆくことを目指しています。
プリズムのように光の角度が移り変わる外観や、新旧を隔てながら結ぶエントランスにより、街並みの表と裏を散策するようなシークエンスが生み出され、表層を超えたテナントとの出会いが演出されています。さらにテナント内部でも、斜めに傾いた大開口により周辺と連続した環境が形成され、専有面積を超えた街との関係もつくられました。
土地の関係性を解釈し再創造する建築は、永続的な都市の価値へと近づける新たなモデルとなることを期待しています。
構造設計コンセプト
前面道路側は外観デザインと合致した架構システムとするため、GRC壁の外形と平行な鉄骨柱と、外壁裏に納めた座屈拘束ブレースを組み合わせた外殻構造としました。また幕板のサインを最大限に傾けられることに配慮し、ガラス開口部に面する梁は小梁とすることで、外壁からセットバックさせています。柱は縦横の 2 段階で傾き通り芯が各階でずれていく構成のため、各部材の各座標を確認し、仕上げと仕口部・ピースが干渉しないよう、3Dモデルを駆使して精度よく構築しました。
また塔状比4を超えるワンスパン建物であるため、1~3階の短辺方向にオイルダンパーを配置した制振構造としており、耐震安全性の向上を実現しました。 正面の三角形状の開口に合わせた斜め柱は短期の水平力を支持するブレースとして機能させ、耐火被覆を不要としたφ216mmの細柱で、外観のシャープな印象を引き立たせています。
設備設計コンセプト
全テナントを飲食用途と設定した上で、各テナントが最大限に活用できる合理的なスケルトン計画が要求されました。階高3300mmに対し想定客席天井高さ2500mmといった狭小な設定をクリアするため、各階の裏側に厨房想定エリアを設定し、厨房排気は共同ダクトを用いて集約することで、テナントビルとしての機能性を確保しています。
屋上の目隠し壁の内側に設置する排煙ファン・キュービクル・厨房排気ファンなどは、先細りの外観ボリューム構成を阻害しないよう直列に配置し、ファインフロア下で接続した計画としています。また高圧キャビネットはエントランス内装仕上げの裏側に収め、点検用の開口部分のパネルはケンドン式とすることで、余計な丁番や取手を省いた納まりとしています。
幕板サインでは下端にライン状のLEDを仕込むことで、サインの傾きに応じて光の広がりが変化する照明計画としています。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 中川雄一朗、遠藤僚、中川涼、長谷美太郎 |
構造設計 | 藤永直樹、倉本真介、野々山昌峰 |
設備設計 | 村田義郎、清水賢 |
電気設計 | 村田義郎、土屋暁子 |