The Okura Tokyo
- 用途:ホテル、事務所、店舗、駐車場
- 所在地:東京都港区
- 延床面積:180,905.72m2
(大倉集古館との連担認定) - 地下:1階/地上:41階/塔屋:2階
建築設計主旨
Okura Legacy -「創造的挑戦」の継承-
1962年、「海外の模倣ではなく世界に通じる日本独自のホテルの創造」を目指して開業したホテルオークラ東京。2019年9月、この精神を継承し、時代の要求に適合した安全性と快適性を兼ね備えた「The Okura Tokyo」に生まれ変わりました。
「伝統と革新」を開発コンセプトに、これまでの50年の歴史を受け継ぎ、これからの50年に向けて世に問う、新たなOkura Legacyの創造を目指しました。
三つの坂に囲まれた計画地は、大規模な再開発が進行する虎ノ門エリアの高台に位置します。
それぞれに異なるホテルブランドを冠した2棟の高層建築「オークラ プレステージタワー」「オークラ ヘリテージウイング」と「大倉集古館」の3つの建物と、それらに囲まれた前面広場「オークラスクエア」が新たなオークラの顔となります。
「オークラスクエア」の水盤の中にある六角形の島は、2つのホテル棟のロビーにつながる軸線の交点に位置し、ロビーと広場を密接に関連付けました。
また、敷地の約半分にあたる1.3haを緑地および広場として公開し、地域の環境改善に寄与します。
敷地北側に広がる「オークラ庭園」は19mの高低差をもつ地形を巧みに活かし、敷地東側には「港区公園まちづくり制度」の活用による2,500m2の都市計画公園を整備しました。
都内でも最大級の規模となる大小19の宴会場と3つの結婚式場及び8つのレストラン・バーを、眺望に恵まれたトップフロアと庭園に囲まれた低層部にそれぞれの場所の特性を活かして配置しています。
ホテルにおいては、目的別に地下1階、1階、4階、5階にエントランスを設け、大宴会時の車両アクセスを階層で分散させたことで大規模なイベントにも対応しやすい構成としています。
「オークラ プレステージタワー」は、グローバルビジネス拠点として成長する地区活性化の一翼を担うオフィスを併設しており、新設した都市計画公園に面する3、4階のエントランスホールより8~25階の貸室フロアにアクセスします。
インテリアデザイン主旨
和を継ぐホテル
日本の伝統的な美術や文化を活かした優美な佇まいにより、世界の賞賛を得てきたホテルオークラ東京。その象徴とも言える「オークラロビー」の再現を軸とした「和を継ぐホテル」をコンセプトに各施設をデザインしました。
解体前には徹底的な調査・記録を行い、「オークラらしさ」を生むデザイン手法や残すべき伝統装飾を抽出しました。
「平安の間」を含む和の宴会場エリアは、国宝「巻子本古今和歌集の序」を題材とした壁面装飾を新たに制作するとともに、創建当時からの伝統装飾を再利用・再現し、より洗練されたディテールで和の伝統美を再構築しました。
ロビーに隣接する料飲施設は、オーキッドバーの「蘭花」の照明を現代の作家で再現するなど、伝統の継承をより意識したデザインとしています。
それに対し、7、41階に位置する料飲・婚礼施設は、オークラブランドの品格を受け継ぎながらも、より現代的でインターナショナルなスタイルを目指しました。
2つのホテルブランドで構成する客室デザイン
新たなホテルは、ブランドコンセプトの異なる2棟の建物で構成されており、客室はその2つの共通性と差別化を自然な形で同居するようデザインしています。
「世界をもてなす迎賓館」としての「オークラ ヘリテージウイング」は、日本の伝統美に彩られた静謐で落ち着いた空間、都市型高層ホテルの「オークラ プレステージタワー」は、和の趣が程よく溶け込んだ都市的魅力を備えた空間としました。
それぞれのホテルブランドともに、広い間口からの景観を最大限に生かした「ワイドリビング」と魅力的な浴室にこだわった「ビューバス」による2タイプのスタンダードのほか、世界の賓客をもてなす様々なタイプのスイートルームを備えています。
ランドスケープデザイン主旨
港区公園まちづくり制度の適用により、敷地の半分を超える約1.3haを緑地などの空間として整備し一般に開放しています。
2棟の高層建築と「大倉集古館」に囲まれたフラットで都市的な広場「オークラスクエア」を新しいオークラの顔として整備。
それとは対照的に、敷地の北と東に展開する「オークラ庭園」と「区立江戸見坂公園」では高低差約19mという傾斜地に、この虎ノ門地区特有の地形を活かしたダイナミックな自然景観を創出しています。
ホテルのゲストが庭園を散策するその時間断面でいかに日本の風景を感じ取り、印象に刻む空間シーンを創出できるかに注力しました。
各々の空間は、崖地、枯滝、もみじ谷、梅林、芝生、湿性花園、竹林など様々な季節や日本的風景を象徴する景観であり、それらを「水」の流れに見立てたシナリオにより統合し、一連の流れるようなシーケンスを形成しています。
日本料理「山里」の庭では、大地の水が岩からしみ出し広がりながら、渓谷から海に至る岩の景や雑木の林間など日本の風景を縮景としています。
崖線の静寂な景観を創出する西側の石庭から水が回り込んだ北庭は、高台からの空への見通しと緑の遮蔽による完結した閉鎖領域とを対置し、水に浮かぶコケの島と繊細な地被、柔らかい株立ちの木々が重なり合うことで奥行き感を形成しています。
早春から花が次々に咲き、秋には紅葉が重なり合う印象的な雑木の庭空間としました。
構造設計主旨
プレステージタワーの上部にある客室階は、客室廊下とボイドの境界である壁位置に多層を拘束するメガブレースを配置した「ブレースチューブ構造」を採用し、客室階全体の水平剛性を高めました。
その結果、外周部の柱は細くなり客室の眺望に配慮できました。
客室階全体をブレースで固めているため、大地震時の層間変形角も小さくなり、約370室にも上る客室の高級仕上げ材や建具等の損傷を軽減することにも貢献しています。
上部の客室階と下部のオフィス階は柱割が異なるため、構造切替階で柱軸力をスムーズに流す斜め柱を配置しました。
3次元的に複雑に柱梁が集まる斜め柱端部の接合部には1か所約20tonの鋳鋼を採用し、無理のない軸力の連続性を確保しました。
鋳鋼接合部の形状はFEM解析を用いて局所応力を低減するようにテーパー部の曲率を確認し、3Dプリンター模型を用いて施工計画の打ち合わせを行い最終決定しました。
また、かつてのメインロビーを忠実に再現することは、計画当初からの命題でした。
柱スパンおよび柱外形も原設計通りに指定されており、構造柱の外形は600mm角に制限されました。
高層階からの大きな柱軸力を直接受ける柱には780N/mm2級鋼材とFc150のコンクリートを組み合わせた超高強度CFT柱を採用しました。
これらの構造計画と実際の施工に先立つ試験施工や様々な検討をもってグレードの高い耐震性能の実現とメインロビーの再現という「The Okura Tokyo」の伝統継承行為に寄与できたと考えています。
設備設計主旨
エネルギーピークの異なる用途から成る複合施設であるという特性を考慮し、各用途の熱源、電源システム等を一元化すると共に、シミュレーションやホテルオークラ東京 本館のエネルギー消費データの分析を行うことにより、機器容量の合理化、省エネルギー化を目指しました。
成層型冷水蓄熱槽とCGSの組合せによる負荷のピークシフト、蓄エネを行い契約電力の抑制、発電時の排熱の有効利用を行っています。
また、大規模厨房からの高温排水や冷凍・冷蔵庫の排熱を回収して空調温水や給湯補給水の予熱に利用したり、除害設備で浄化した厨房排水や雨水を便所洗浄水に再利用を行う等、総合的に環境負荷およびランニングコストの低減を図っています。
電源システムは、信頼性の高い22kVスポットネットワーク3回線で受電しています。また、BCP対応として、発電設備はガスタービン発電機(重油・非常用発電機)、ガスエンジン発電機(中圧ガス・CGS)、太陽光発電設備を設置し、マルチソースにより非常時の建物機能を72時間確保可能としています。
照明環境は、建物外観の統一感を重視し、照明色温度についてホテルエリア3,000K、オフィスエリア3,500Kを基調とすることでグレード感を確保しました。
担当
担当 | |
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設計 | 虎ノ門2-10計画設計共同体 (大成建設株式会社一級建築士事務所、株式会社谷口建築設計研究所、株式会社観光企画設計社、株式会社日本設計、株式会社森村設計、株式会社NTTファシリティーズ) |
インテリアデザイン | 大成建設株式会社一級建築士事務所、株式会社谷口建築設計研究所、株式会社観光企画設計社、GAデザイン・インターナショナル |
照明コンサルタント | ライティング プランナーズ アソシエーツ |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 田口晃、高橋秀秋、舌忠之、北村浩、国保潤、手島史惠、木村新、村松圭佑 |
構造設計 | 早部安弘、山﨑英一、中島崇裕、安藤広隆、豊島裕樹 |
設備設計 | 高木淳、小澤弘和、割田朋香 |
電気設計 | 高木淳、内田元、山口亮、加藤文都 |
インテリアデザイン | 大野博文、高橋洋介、小椋圭介、吉田美香、野口絵麻、佐藤真帆、伊藤誠悟 |
ランドスケープ | 蕪木伸一、西島知明、都筑亜由子、加瀬泰郎 |
解体前ロビー調査 | 杉江夏呼 |
社外受賞
2022年 | 日本建築学会作品選奨 |
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2022年 | 作品選集2021-2022 |
2021年 | 第62回 BCS賞 |
2020年 | 第6回 インテリアプランニングアワード 公益財団法人建築技術教育普及センター理事長賞(宴会場) |
2020年 | 第6回 インテリアプランニングアワード 入賞(客室) |
2020年 | 第6回 インテリアプランニングアワード 入賞(オールデイダイニング) |
2020年 | 第6回 インテリアプランニングアワード 入賞(オールデイダイニング) |
2020年 | 2020年度 CFT構造賞 |
2020年 | 第18回 照明デザイン賞 優秀賞 |
2020年 | 2020年度 日本鋼構造協会業績表彰 業績賞 |
2020年 | 第40回 緑の都市賞 国土交通大臣賞 |
2020年 | 2020年度 日本建築家協会優秀建築選(100選) |
2021年 | CTBUH Awards Structural Engineering Award / 2021 Award of Excellence(構造工学賞 優秀賞) |
2021年 | 第22回 日本免震構造協会賞 作品賞 |
2021年 | 令和3年度 港区みどりの街づくり賞 |