大宮区役所・大宮図書館
- 用途:庁舎、図書館
- 所在地:埼玉県さいたま市大宮区
- 延床面積:23,541.76m2
- 地下:1階/地上:6階
建築設計主旨
本建築は、JR大宮駅周辺の商業化された賑わいから少し距離を置いた、氷川参道沿いの凛とした空気の流れを感じる、静寂な佇まいの地域に立地しています。
今回、大宮区役所は既存庁舎の耐震不足に伴い、同様の問題を抱えていた大宮図書館との併設とふれあいスペース等の交流機能を備える複合施設として、PFI事業で建替えすることになりました。
製糸業で近代化を支えたこの地の歴史より着想した「紡ぐ」というコンセプトに基づき、古くより織機として使われた「織枠」をセンターコアに見立てた構造計画によりシンプルなホワイトキューブのボリュームを提案しました。
内部は、効率よく区役所と図書館の用途を配置し、その間に大きな吹抜と階段を螺旋状に設けることで「人を紡ぐ」豊かなオープンスペースを創出することができます。
外皮は、絹織物のような有孔折板で構成されたルーバーと吹抜けを包むカーテンウォールにより、採光、眺望、視線を適切にコントロールしています。
氷川参道沿いのオープンテラスは、人々を優しく迎えるとともに、憩いの場として内部と外部を繋ぐ装置となっています。
この外皮とテラスを含めた緑豊かな外構計画により、心地よく「まちを紡ぐ」建築の佇まいが実現しました。
子供からお年寄りまで、多くの人が一日を通じて訪れ、自分たちの場所を見つけて自分たちの時間を思い思いに過ごすことができます。
市民に開かれたこの建築は、これからもゆっくりと「時を紡ぐ」場所として成長していきます。
多くの市民が利用するため、オーダーメイドで高い安全性が確保できる全館避難安全検証法を採用しました。
竪穴区画や異種用途区画を撤廃することで、1階から4階までの吹抜け周りの防火区画の自由度を高め、自然とつながる吹抜け空間を実現し、スパイラル状のアクティビティを円滑にしています。
また、吹抜けに面した防火区画がなくなることで、2階から3階にかけてのステップリビングや3階スタディコーナーのように吹抜けと一体的な賑わいを創出することができます。
構造設計主旨
シンプルなスクエア形状を有する平面の、その中心に配置されたコア部分に耐震要素を集約配置し、この耐震コアはあたかも織枠のような構造体となっています。
耐震コアによって地震等の水平力から解放された外周柱は、絹糸のような外皮のイメージに馴染むように、外径を小さく抑えて細かく配置しています。
耐震コアと外周の小径柱によって鉛直支持される執務空間は、スパン16.5mの無柱空間となり、フレキシビリティの高い諸室配置を可能としています。
また、耐震コアと外周小径柱のみにより構成されるシンプルな構造システムは、この建物の大きな特徴である3つの連続する吹抜空間を可能としています。
災害時に地域防災拠点としての機能を3日間維持するインフラ対策が施されている本施設には、高い構造安全性が求められます。
大地震後も損傷することなく機能を維持し、安心安全な公共建築を実現するため、免震構造(地下1階柱頭免震)を採用しています。
地上の構造は鉄骨造を基本とし、コアを構成する1階~3階の柱はCFT造とし、耐震コアを構成する柱の地震時変動軸力に対して軸剛性を高めます。
建物中央部のコア部分にはブレースを集中配置し、建物に必要な剛性と耐力を確保、水平力のほぼすべてを処理しています。
各階の床組みは、地震時に生じるブレース構面の引き抜き力に抵抗するために、ブレース構面隅柱に鉛直力が集まるように配慮しました。
外周の小径柱はφ250の鋼管とし、3600ピッチに配置しました。
鉛直力のみを負担するこの小径柱のうち、3階の図書館部分の柱については、公共建築物に対する木材利用に配慮し、木+鉄骨ハイブリッド柱を採用しています。
ハイブリッド耐火柱「T-WOOD TAIKA」は、鋼管柱の外周に耐火被覆用のけい酸カルシウム板を配し、さらにその周囲を集成材で覆った断面構成としています。
集成材は鋼管柱を補剛し、柱部材としての座屈耐力を向上させる効果と、火災時には燃え代層として鋼管柱の温度上昇を抑止するといった、両方の効果を兼ね備えています。
また、載荷加熱試験を通じて1時間の耐火性能を有することを確認し、大臣認定を取得しています。
設備設計主旨
本建築は、災害時に防災拠点としての機能を有するため、エネルギー源の多重化や非常電源を確保することで3日間のインフラ途絶対策を行っています。
また、様々な環境負荷低減アイテムを採用し、CASBEE Sランクを取得しています。ファサードはガラスを多く採用していますが、Low-eガラスを使用するなど、外皮の熱的性能を上げ、全館LEDを採用したことなど、空調負荷そのものを削減したことが大きな効果となっています。
また、太陽光発電、雨水の雑用水利用、自然換気ならびに空調機による外気冷房制御など、自然エネルギー活用も多く採用したことも当庁舎の特徴となっています。
「大宮図書館」では、居住域の温熱環境を快適に維持するため、置換空調の考え方を取り入れています。
空調機の吹き出しは、OAフロア内に吹き出し、通気性カーペットを介し、低風速かつ均等に吹き出しができるよう工夫しています。
吹き出しは、穴の開いたOAフロアパネルと通気性カーペットを組み合わせたもので、書架のレイアウト変更時も、容易に吹き出し口の位置を変更できるなど、図書館運用におけるフレキシビリティにも配慮しています。
照明計画は、建築コンセプトである絹糸を纏うような外観スクリーンを親しみのある地域の印象的な光のシンボルを創出し、スパイラルに連続する3つの吹抜けが賑わいと交流を映しだす、建築が街の拠点となる魅力的でここちよい照明環境の実現をテーマとしました。
連続する3つの吹抜け空間は、天井ルーバー照明により3000ケルビンの色温度で統一しました。
異なる空間スケール、高低差、分岐点を調光制御により照明バランスを整え、3つの空間がシームレスに連続する照明環境をつくりだしています。
5~6階の主要空間である区役所エリアに、静止人体を判別可能な人検知センサを設置しました。
人の在/不在情報をリアルタイムに把握し、必要な時に必要な場所へ最適な明るさ環境をゾーン単位に提供することで徹底的な無駄の削減を図り、エネルギー消費の最小化を行っています。
また、ペリメータとインテリア各所に明るさ検知機能付を採用することで、照明器具の初期照度補正や経年劣化による調光率の補正を行うとともに目標照度以上の採光が得られた場合に更なる減光または消灯を可能としています。
担当
担当 | |
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設計 | 久米設計・シーラカンスK&H・大成建設設計共同企業体 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 伊勢季彦、村瀬宏典、國分大輔、浅野晃宏 |
構造設計 | 島村高平、坂口裕美、柴田宜伸、森光哉 |
設備設計 | 梶山隆史、藤田協二 |
電気設計 | 梶山隆史、近森真洋、吉田幸生 |
社外受賞
2023年 | 第18回 公共建築賞・特別賞 |
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2022年 | グッドデザイン賞 |
2022年 | 日本建築学会作品選奨 |
2022年 | 作品選集2021-2022 |
2021年 | 第62回 BCS賞 |
2019年 | 第53回 日本サインデザイン賞 入選 |
2020年 | 2020年度 日本建築家協会優秀建築選(100選) |
- Technology & Solution:
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