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WORKS 2019

日本機械保線 静岡総合事務所

用途:事務所
所在地:静岡県静岡市駿河区
延床面積:2,313.47m2
地上:5階

建築設計主旨

日本機械保線株式会社は、屋外での作業を中心とした従業員が多い線路の保守点検等を行う会社です。有事の際の鉄道の保守・復旧のために施設を免震構造とすることを除き、世の中の標準に即したリーズナブルな事務所であることが求められました。
私たちは、この「標準」に潜む無駄(もったいない)を現代の技術とデザインにより再構築することを目指しました。
建築・構造・設備が三位一体となって「真の合理性」という実利効果を追求し、普遍性を備えたこれからの中規模オフィスの在り方を提唱しています。
具体的には、外気や日射の影響を受けやすい窓際の空間に大開口を設け、幹部社員の席を配し、ペリメーター専用の空調を施して対処するといったような、これまで執務空間の常識とされてきた計画も「もったいない」事象のひとつです。
平面計画は、9mグリッドモデュールの無柱のフレキシブルな執務空間を建物の中央に配置し、窓際に短時間の打合せや憩いの場となる「コミュニケーションテラス」を設けることで、常時利用する執務空間の温熱環境を整えています。
また、窓際はキャンチ構造とし、柱のない横連窓によるパノラマビューを確保しており、窓高さを抑えながら効率的に開放感を得ることができます。
さらに、目前に新幹線が通る立地である「コミュニケーションテラス」が執務空間の音環境のバッファゾーンともなっています。
ファサードのアクセントともなっている小さな吹抜けは、チムニー効果による自然の風の流れや、均質な横連窓に縦方向の視界の広がりを与え、「安定」の執務空間と対比的に「変化」による快適感を創出しています。

構造設計主旨

この建物は、災害時に早期復旧し、線路の保守修繕作業にいち早く駆けつけることのできる安心安全の構造計画が求められました。
そのため、震災時の機能確保が必須であり、基礎免震(天然ゴム系積層ゴム支承+オイルダンパー、告示免震)を採用しています。
平面計画は、南側にコア、北側に広くオフィス空間を設けていますが、敷地境界が住宅地に面する東西側のオフィス外壁を耐震壁として、自由度の高い平面計画を可能としています。
また、1階のみ耐震壁を建物内側にずらすことで、地震時の免震の引き抜きを抑えています。
さらに、柱の配置を建物中央へ寄せて、キャンチ構造とすることで柱の数を減らしています。
長期軸力を集約させることにより、免震支承径を大きくできるため、上部建物が安定した挙動となり、冗長性を高めることができました。

設備設計主旨

使う人の目線に合わせた身近なことに着目し、発注者のニーズに素直に応える設備計画を目指しました。
空調計画は、執務室→コミュニケーションテラス→廊下という室の利用頻度に合わせた空調経路を辿るカスケード空調を採用しました。
執務室の余剰空気をコミュニケーションテラスへ流すことで、生外気を直接入れた場合と比べて、約24%の外気負荷を低減させることができました。
また、オフィス階の廊下奥には、単独空調のリフレッシュコーナーを設けました。
屋外作業をしていた作業員が事務所に戻ってきた直後は、室内が暑く感じることがあると思います。
そこには、事務作業をしていた従業員との体感温度の差が生じており、このような時、必要以上に低い温度設定がなされることは「もったいない」。
そこで、その緩衝帯として作業員が帰社時に一息つくための空間として、健康と省エネを実現する空間としています。
BCP対策としても、常備したポータブル発電機による災害対策拠点となる事務室への送電や受水層、汚水槽を設置し、災害時の機能維持も無駄なく可能としています。

担当

担当
設計 大成建設株式会社名古屋支店一級建築士事務所
ジェイアール東海建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
建築設計 三橋啓史、鈴木康紘
構造設計 加藤芳明、杉村真智子
設備設計 岸野豊、大山智子
電気設計 岸野豊、桜井健二