京都経済センター
- 用途:事務所、展示場、劇場、店舗、自動車車庫
- 所在地:京都府京都市下京区
- 延床面積:29,096.31m2
- 地下:2階/地上:7階
建築設計主旨
京都経済百年の計
本事業は、オール京都の7団体の異なる産業が結集した「京都経済百年の計」として構想され、京都創生のシンボルとして新たな交流と賑わいの創出拠点が求められました。
我々は、井戸は古いが湧き出る水は新しく、井戸に集まる人々が清らかなる水にて花々を咲かし、京都から新しい文化を発信していく「泉古水新 百花斉放 せんこすいしん ひゃっかせいほう」というコンセプトを掲げました。
京都の伝統建築に多く見られる建築作法としての「えぐり・ほり・ひけ」の3つのデザイン表現に機能を付加することで、現代的に昇華したデザインを試みました。
地域産天然木材を纏った優雅で美しい外装
四条通側は、天然木材をリズミカルに配置し、京の伝統の縦格子とガラスの創り出す、奥ゆかしさもありながら現代的なファサードデザインへと昇華しました。
室町通側は、障子をモチーフとした凹凸あるランダムな開口部が長大な壁面に陰影を与え、分節したデザインとしました。
室町通側のランダムな開口部は、開口率50%に抑え、空調負荷の低減にも寄与しています。
それぞれの機能の異なるファサードは、北山杉及び京都府内産杉で纏う事で建物全体の統一性を図りました。
2層に渡って賑わいを創出するバルコニー空間
「ほり」のデザイン表現により、2階外周のバルコニーは、日常誰もが行き交い、賑わいが表出します。
室町時代に栄えていた賑わいを創出するため、1階の店舗の賑わいを2階まで利用した立体的な回遊動線を計画しました。
外構の少ない京都市内部において、オープンなバルコニーは、1階の飲食店舗と連携した活用もでき、街と一体となった賑わいが生まれる事を期待しています。
地域性を生かした特別なバルコニー空間
1000年以上続く祇園祭(毎年7月)は、京都人には特別な時間でもあり、特別な精神でもあります。
本施設は、四条通の函谷鉾、室町通の鶏鉾を見ることができる唯一の建物であることから、このバルコニーは年に一度だけ鉾をアイレベルで見ることのできる特別な場所へと変容します。
毎年、夏の訪れを告げる祇園祭を肌で感じ、毎年記憶を回帰する空間を大切にしてほしいとの祈りを込めてバルコニーを計画しました。
交流を活性化させる「結の階段」
オフィスフロアを垂直に貫く吹抜け空間は、入居する7団体と来館者の交流を活性化させ、南北に貫くホワイエが建物と街をつなぎます。
オフィスフロアとホワイエをつなぐ階段は交流の結び目として機能し、京都の産業の知恵を結集し、未来へ継承します。
構造設計主旨
フレキシビリティに富んだ無柱大空間を実現するために、約23mのロングスパン梁を採用した純ラーメン架構として計画しています。
剛性・耐力に優れたCFT柱、塑性変形能力に優れた梁端拡幅サイドプレート工法を採用し、想定される地震に対して十分な耐震性能としています。
さらに、耐震性能に関しては、必要耐力の1.25倍以上の保有水平耐力を確保しBCPに配慮した計画としています。
地下既存躯体内側の限られたスペースを最大限活用するために、Head-barをせん断補強筋として用いたマットスラブ基礎を計画しました。
これによりマットスラブの厚さを最小限とし地下階の階高を十分に確保することができました。
隣接する地下鉄駅コンコースとの通路は既存躯体を生かしつつ必要な部分を補強することにより、合理的な計画としています。
設備設計主旨
複数団体で構成される経済センターにふさわしい合理性と機能性を考慮し、設備計画を行いました。
BCP対策として、万が一の水害対策として受変電設備・MDFを地上階に設置すると共に、
屋上に発電機を設置し、インフラ途絶時でも重要負荷に対して12時間分の電源供給が可能な計画としました。
帰宅困難者の受け入れスペースである2階展示場に発電機回路のコンセントを設置し、
携帯端末の充電などが可能な計画としました。
環境・省エネルギーへの配慮として、中央吹抜け部トップライトにに「T-Light Louver」を設置し、
照明消費電力を提言すると共に、空調熱負荷も低減する計画としました。
その他自然換気、太陽光発電、LED照明、駐車場換気ファンのCOインバーター制御、超節水型衛生器具などを採用し環境負荷を低減する計画としました。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社関西支店一級建築士事務所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 平井浩之、西崎暢仁、内藤多加志、高岩遊、福士麗菜 |
構造設計 | 山崎英一、西本信哉、杉山雄亮、増野泰介 |
設備設計 | 根本昌徳、湯浅孝、宮本敬介 |
電気設計 | 根本昌徳、湯浅孝、坂下泰士、入江俊介 |
社外受賞
2019年 | 第53回 日本サインデザイン賞 銅賞 |
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2020年 | 第18回 照明デザイン賞 審査員特別賞 |
2020年 | 2020年度 日本建築家協会優秀建築選(100選) |
- Technology & Solution:
- 京都経済センター