近畿産業信用組合本店
- 用途:事務所(信用組合本店)
- 所在地:大阪府大阪市中央区
- 延床面積:11,335.38m2
- 地下:1階/地上:18階
建築設計主旨
本計画は、様々な省エネ技術を導入することで従来のビルに比べて60%以上の省エネを実現し、ZEB Readyを達成した最先端の環境配慮建築です。
2015年経済産業省がZEBロードマップを提示してから、これまでの間でZEBを達成してきた建築は、多くが「郊外型低層タイプ」です。
「郊外型低層タイプ」は、外壁率が小さく外気負荷が小さいことや、十分な敷地建物広さの確保による創エネ効果の向上などにより、ZEB達成難易度が比較的易しいと言われています。
これに対し、「都市型高層タイプ」は、達成が難しいと言われており、本計画は都市型高層ZEBを達成した先端事例です。
敷地である北浜エリアは、大阪の目抜き通りである堺筋沿いを中心に、大阪取引所をはじめ金融機関の本店などが密集した「大阪のウォール街」と呼ばれる地域です。
これら金融機関の建築には、格式を重んじることから石張りを中心とした重厚でクラシックなデザインが採用されています。
この地域には近代建築が重要文化財として多数残されていることからも伝統的で落ち着いた雰囲気のある街並みを形成しています。
伝統ある北浜エリアに新しい風を吹かすべく、デザインコンセプトを「伝統×革新」と掲げました。
落ち着きある伝統を引き継ぎながらも、現代的かつ革新的なイメージを重ね合わせることで、全く新しいデザインを目指しました。
外装は、石張りによるグリッドフレームに都市環境を写しこむガラスを纏わせたダブルスキンとしています。
意匠性のみならず大開口で眺望を確保しながらも断熱性能を高めてZEB達成に貢献するデザインとしています。
ダブルスキンのキャビティ内には、太陽追尾型電動ブラインドを内蔵し、各開口部にライトアップ用LED照明を設置しています。
あらゆる色を再現可能であるため、開口部のピクセルと併せて検討することで様々なデザインパターンを創出しています。
四季折々のテーマカラーを演出する他、コーポレートカラーであるきんさんブルーや雪だるま、クリスマスツリーといった季節のイベントまで幅広く表現することで地域のシンボルとなっています。
構造設計主旨
災害時にも安全で安心できる建物とするための構造体を構築しました。
建物の揺れを抑制する制震間柱を配置することで、制震構造としています。
また下層階は、鉄骨鉄筋コンクリート造として強固に固め、上層階は鉄骨造としてしなやかに地震力に対応します。
外周部は、扁平柱とすることで、内部に柱型が出ずに有効利用床面積を最大限確保しています。
また本建物は、既存建物の地下躯体を利用した仮設計画とし、基礎はマットスラブ形式としています。
設備設計主旨
都市型高層ZEBの実現のために多くの設備技術を導入しました。
その結果、従来のオフィスビルに比べて約60%のエネルギーを削減し、金融機関本店ビルで、国内初のZEB Readyを実現しました。
建築主は、一般社団法人環境共創イニシアチブによるZEBリーディング・オーナーの登録を行っています。
日射・外気による熱負荷の低減のため、ダブルスキン構造による外壁の高機能化、インナースキンにLow-E複層ガラスの採用、キャビティ内に太陽追尾型電動ブラインドの設置などを行いました。
さらにCO2センサーと変風量(VAV)制御による最小外気量制御などを導入し、外気負荷の低減を図りました。
空調熱源には高効率モジュールチラーを採用しました。潜顕分離空調方式(外調機+高顕熱ビルマル、顕熱交換器による省エネルギー再熱空調システムなど)、人検知センサー照明制御(当社技術「T-Zone Saver」)、BEMS(当社技術「T-Green BEMS」)などの高効率設備を積極的に採用しました。
また、自然エネルギーの有効活用として、ダブルスキンを利用した「ダブルスキン内熱利用空調システム」を構築しました。
ダブルスキン内の熱利用を行うため、ダブルスキン内熱利用ダンパを開発しました。
冬期は冷たい外気をダブルスキン内で太陽光により加温し外調機へと導き、暖房の予熱として利用し、外気処理のエネルギー低減を図りました。
さらに、中間期は過冷却除湿後の再熱エネルギーとして利用し、省エネルギーで良好な環境を形成しました。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社関西支店 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 平井浩之、加藤純、本家公巳子、鬼頭朋宏 |
構造設計 | 西本信哉、岩井昭夫 |
設備設計 | 湯浅孝、永吉敬行 |
電気設計 | 根本昌徳、坂下泰士 |
社外受賞
2019年 | 2018年度 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会 奨励賞 |
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2019年 | 日本空間デザイン賞2019 入選(Long List) |
2019年 | 令和元年度 おおさか環境にやさしい建築賞 事務所部門賞 |
2021年 | 第19回 環境・設備デザイン賞 建築・設備統合デザイン部門 入賞 |