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WORKS 2019

ラ・トゥール渋谷神南

用途:集合住宅
所在地:東京都渋谷区
延床面積:6,966.71m2
地下:1階/地上:22階

建築設計主旨

本建物は、渋谷駅と原宿駅の中間地点に位置し、渋谷の雑多な繁華街の喧騒を感じつつも、緑豊かな代々木公園に面する高台の比較的小さな敷地に計画されています。
まず設計の初期段階において、土地の持つポテンシャルを最大限引き出すために、総合設計制度を活用した容積割増しと不整形な敷地になじむ平面計画の模索から検討を始めました。
総合設計制度を活用する際は、建物周囲に公開空地(広場状空地・歩道上空地)を設けることになりますが、敷地が小さい上、更にこの公開空地分を差引かなくてはならなくなるため、平面形状を可能な限り小さくし高層化することが建物の最大ボリューム化の為に求められました。
そこで採用した構法が、建物中央部に厚み約700mmの鉄筋コンクリート壁を箱型に配置した「コアウォール」構法です。
地震力の約70%を負担するこの「コアウォール」構法は、古代木造建築の法隆寺の「心柱」のような働きをし、塔状比5.0超の極めて細長い建物を実現させ、更には建物上層部のオーバーハング化を可能にし更なるボリュームアップにも寄与しています。
また、この構法の採用により建物外周部の柱・梁断面を縮小することが可能になり、それによるH2600mmのハイサッシやコーナーサッシの採用は、窓の外に広がる美しい都心の景色と格別な開放感を享受できる快適な居住空間を生み出しました。
平面計画においては、非常用エレベーター1基・屋外避難階段を採用した内廊下型のコンパクトな共用部とし、全住戸が角住戸となるようにワンフロアあたり2~3住戸を配置しました。
不整形な平面形状に合わせた住戸プランは、従来の画一した間取りではなく、眺望を重視した独特の間取りとなっています。
目の前に広がる代々木公園は、春には桜が咲き誇り隣接する明治公園の深緑とともに豊かな自然が息づき、一方で、渋谷や原宿という街の特性から生まれるエネルギッシュな活気は、活力ある空気感を人々の暮らしに与えます。
その狭間で、周囲の建物から頭一つ高くそびえた力強い佇まいの「ラ・トゥール渋谷神南」が、未来永劫変わることなく、そのアイデンティティをそこに住む人々の心に刻み続けることを願います。

構造設計主旨

狭隘敷地での高層建築という命題に対して、従来の純ラーメン構造では部材のサイズ感と建物ボリューム感が釣り合わず成り立たないと考えました。
純ラーメン構造ではなく、建物の中央部に心柱のような箱型コアウォールを有する構造計画として提案し、建物変形の均一性と高い耐力の確保を目標に設計を進めました。
建築計画としては、壁厚さ700mmはかなり衝撃的だったようですが、基本設計時からコアウォールのサイズを考慮しプランを計画しました。
平面的には小さいとはいえ、高さ80mクラスの建物なので、杭にかかる軸力が処理できるかが第一の課題でした。施工上可能な杭径を杭業者に想定してもらい、杭径で足りない分は支持層内へ杭を入れる形で圧縮支持力・引張支持力を確保しました。
地上部分は、地震力の7~8割を箱型コアウォールが負担しています。
それ以外の応力を周囲の柱梁で賄えばいいので、外周サッシの取り付く架構は断面サイズを抑えることができました。
建物の高さ方向の形状も、低層部より高層部の面積が大きくなっており、高層階の外周部材サイズを小さくすることが容易になっています。
計画当初は、このコアウォールの存在感がありすぎることを懸念しましたが、竣工後建物内を見学したところコアウォールの存在感は全くなく、リビングルームやベッドルームの天井高さが際立つ空間が完成しました。

設備設計主旨

超高級賃貸マンションとして、快適、安全、デザイン性に配慮した設備計画としました。
コンシェルジュカウンターでは、居住者帰宅時のセキュリティ解除、着荷対応、来客対応等を人的サービスで行えるようにしています。
停電時は48時間運転可能な発電機を設置し、給排水、エレベーター、照明・コンセント等の電源を確保しています。
バルコニーに設置される空調室外機前面には必要に応じて開口を確保した目隠しルーバーを設置し、機能を保ちつつ意匠性に考慮した計画としています。
また、専有部の換気は第一種換気にて行い、確実な給排気を行える設えとしています。
また本計画では平成17年総務省令第40号の要件を満たし、プランやダクト・配管配線ルートの整理を行いコンパクトな設備計画を実現しています。

インテリアデザイン主旨

渋谷の街を背景とし、代々木公園に面するエントランスホールのインテリアは、都会的なシャープさとフォーマルな落ち着き感を両立するデザインを目指しました。
光沢のある石と金属調素材を多用した縦横のシンプルな構成としながらも
暖色を加え、色のコントラストを柔らかくすることで、住宅らしい安心感を演出しました。
エントランスホールから住戸への動線は一貫してダークトーンの素材を用い、照明照度を最小限に抑えることで、ホテルライクな都市住宅を印象づけています。

担当

担当
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
建築設計 教誓勉、細川博史
構造設計 服部敦志、川岡千里
設備設計 熊谷智夫、川崎賢哉、大林茂、冨田峻亮
電気設計 熊谷智夫、川崎賢哉、中井信雄
インテリアデザイン 鈴木健司