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WORKS 2018

大成建設技術センター材料と環境のラボ

用途:研究所
所在地:神奈川県横浜市
延床面積:5,189.82m2
地下:2階/地上:3階

建築設計主旨

大成建設技術センター材料実験棟のリニューアルプロジェクトです。
従前の施設は、実験設備を含む設備機能の劣化や実験スペースの不足が新たな研究開発ニーズへの対応を妨げていました。また、フレキシブルで健康的な実験環境などイノベーションを促す機能性および空間性に乏しい状態でした。これに加え、低炭素社会の構築という世界的な潮流と離反し、消費エネルギーは増加傾向にありました。
本計画では、既存ストック活用とともに省エネルギーと創エネルギーに寄与する様々な環境技術の導入により、LCCO2削減も視野に入れた地球環境にやさしい研究施設への転身を図りました。
工事概要は、躯体以外の内外装と設備機器を全て更新しています。
また、近年使用されていなかった既存中庭部分の増床とメカニカルバルコニー(設備バルコニー)の新設により、実験スペースの拡大化と実験環境のフレキシビリティ向上を実現しました。
建物外装には、研究施設に有効な新しいラボファサードとしてメッシュ状膜材を採用しました。メカニカルバルコニーの設備配管を隠し且つ外部からの視線を制御するため建物外周を包み込んでいます。
一方、明度により可視光の透過率が異なる性質を利用し必要な個所の明度を落とすことで実験室からのクリアな眺望を確保しています。
高明度の膜材による日射制御と中明度の膜材による適度な自然採光、風が通り抜ける細かなメッシュ構造による自然換気と防虫効果の両立など、実験の安定性とワークスペースとしての健全性を両立する実験環境の創出とともに、ルバー等と比べ軽量素材であることから既存躯体への負担低減にも貢献しています。

構造設計主旨

旧耐震基準(昭和54年竣工)にて設計された建物の増床を伴う改修工事です。
構造形式は、鉄筋コンクリート耐震壁付ラーメン構造であり、既存耐震壁の一部撤去および新設を実施し、建物のフレキシビリティ向上と耐震安全性の確保を両立しています。
本計画では、既存建物の中庭部分を増床することで床面積の拡大化を図っており、当該部分の基礎周辺での耐力確保および既存躯体と新設躯体との取り合い工事のしやすさに注力したリニューアル技術の導入を試みました。
1.WinBLADE工法
既存基礎躯体を極力傷めず地盤耐力の向上を図る地盤改良体の施工技術であり、既存建屋内にて施工可能な重機の小型化を実現しています。
2.Post-Head-Anchor工法
元来、土木技術として開発されましたが、建築基準法で認められる工法として一般評定を取得し適用しています。コンクリートのはつり範囲を最小限に止められる鉄筋定着技術であり、増床にともなう既存躯体への影響を最小化する技術としてリニューアルに有効です。
3.中流動コンクリート
流動性を高め、強度低下なく高密度配筋でも充填可能とした技術であり、改修工事での増し打ち、後打ちなどの補強技術としても期待されます。

設備設計主旨

環境(Environment)、健康・衛生(Health)、安全(Safety)の3つのカテゴリー(EHS)をコンセプトとし、エネルギー多消費型施設の省エネルギー化と、研究者の健康と衛生面および安全に配慮した実験環境の確保を目指しました。
特に、環境については、研究施設に特化した新規開発技術や独自技術および既往の環境技術を導入することで、一般建物に比べ、年間の一次エネルギー消費量を50%削減するとともに太陽光発電で28%のエネルギーを創出しています。これにより建物全体で一次エネルギー消費量を78%削減し、民間研究施設のリニューアルでは国内初のNearly ZEBを実現しています。
環境、健康・衛生、安全に寄与する代表的な技術が、今回新規開発した「T-Labo. Next」です。
実験室内の空調、照明、換気、局所排気を適切に制御することによって、大幅な省エネルギー化と快適で安全な実験環境を提供しています。
具体的には、ドラフトチャンバーへの給気量を最適化する「T-DC Air Diffuser」や、研究者の実験安全性を確保する「排気位置・風量可変システム」、高精度な人検知センサー「T-Zone Saver」等を組み合わせたシステムです。
また、乾式・湿式スクラバー(排気処理設備)や研究・実験で使用するための特殊ガス設備、寒冷地から熱帯までの環境条件を再現することが可能な温湿度可変恒温恒湿空調設備(温度:-20℃~-50℃、湿度:40%~90%)等、省エネルギーだけではなく、高機能な研究施設となっています。

担当

大成建設担当者
建築設計 杉江大典、関政晴、輪湖大元
構造設計 服部敦志、阪井由尚、調浩朗、氏家章宏
設備設計 岩村卓嗣、砂賀浩之、信藤邦太
電気設計 岩村卓嗣、田口英幸

社外受賞

2022年 作品選集2021-2022
2020年 日本空間デザイン賞2020 オフィス空間グループ 入選
2020年 第18回 環境・設備デザイン賞 建築・設備統合デザイン部門 入賞
Technology & Solution:
大成建設技術センター材料と環境のラボ