JS博多渡辺ビル/大成建設九州支店オフィス
- 用途:事務所
- 所在地:福岡県福岡市
- 延床面積:6,173.74m2
- 地上:7階
建築設計主旨
本建物は、博多駅から南西へ徒歩10分、住吉通りの交差点に位置するテナントオフィスビルです。中規模のテナントオフィスビルとして事業性を保ちながら、付加価値を高めるべく建築主と協議を重ね、テナントオフィスビルとして国内初の「ZEB Ready」認証を取得しました。
東側に交差点、西側は低層建物、北側は住吉神社の緑が広がるという敷地条件により、住吉通りに対して、コーナー部を面取りした対称な形とすることで街並みに配慮すると同時に、室内からの眺望を確保しています。
また、北側ファサードは縦連窓とし、開口幅を絞ることにより西側からの直達日射が室内に届きにくいデザインとしました。また、敷地は福岡市が定める景観形成地区「歴史・伝統ゾーン」に指定されておりモノトーンの色彩と、水平に伸びる小庇によって落ち着きと存在感のある外観としました。
内装設計主旨
敷地は、博多駅から続くビジネスエリアと住吉神社の森の接点に位置します。
このロケーションを計画に活かすべく「都市と自然の交わり」をコンセプトとして、九州支店ならではの空間を目指しました。
オフィスエントランスを入ると、博多駅周辺の「都市のイメージ」を引き込んだモノトーンのレセプションギャラリーが広がります。「地図に残る仕事。」のフレーズから始まるこのギャラリーでは、九州の地図に残した実績やZEBに関する技術が展示されています。
黒く低いトンネル状の空間を抜けると、その先は一転して向かい側の住吉神社を感じさせる自然素材で構成された大きなラウンジスペースが広がっています。接客や打合せ、ワークスペース、各種イベント、ライブラリー、コーヒーブレイク、ランチタイム、バータイム、茶道部の活動など多目的に使われています。
ゲストラウンジと社員ラウンジは、ガラス一枚で仕切られた一体的な空間となっており、社員のアクティビティがゲストにも見えるようになっています。
福岡城のお堀沿いの自然豊かな場所にアートとともにあった旧支店のイメージを、住吉神社の雰囲気を引き込みながら、素材感、家具、植栽、アート、BGMなどから総合的に再構築することを試みました。
構造設計主旨
熊本地震を受けて、基本設計が開始されたこともあり、テナントビルとしての資産保持のために耐震安全性については十分に考慮しなければなりませんでした。
本建物の基礎は杭基礎とし、杭頭部に半剛接合法(F.T.Pile構法)を採用しました。これにより、大地震時においても杭頭部の被害を最小限にすることができ、高い構造性能を確保する計画としました。
また、上部構造は施主要望で制振部材を付加しました。制振部材として、制振ブレース(大成式座屈拘束ブレース)と制振間柱(LOYAL間柱)を外観デザインに合わせて配置するとともに建物がねじれることがないようにバランスが良い制振配置を行い、制振効果を高めました。付加制振時の大地震を想定した場合において、建築基準法上の地震力の25%割り増しした地震力に対しても建物が倒壊しないことを確認しました。
設備設計主旨
ZEBを実現させるにあたり、「快適性の向上と省エネの両立」と共に、市場性のあるZEBの普及拡大を見据えた「汎用的な技術の採用」をコンセプトとして掲げ、建築主と協議を重ねました。
各種シミュレーションによる検証を行い、高断熱・高遮熱なファサードを持つ建築計画と、昼光利用による自然エネルギーの活用、高効率機器の採用等による環境負荷が低くランニングコストも抑えた設備計画を行い、BELS認証制度においてテナントオフィスビルとして国内初のZEB Ready認証を取得しました。
大きな割合を占める空調・照明の省エネ技術については、次世代人検知センサー(T-Zone Saver:当社のオリジナル技術)を採用し、人の在・不在を検知する人検知センサーの情報に基づき、空調や照明をきめ細かく制御し、標準的なビルに対して一次エネルギー消費量を52%削減しました。
担当
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監修 | 株式会社梓設計 |
設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 渡辺健吾、吉富良輔、石井義晴 |
内装設計 | 渡辺健吾、松島拓司 |
構造設計 | 増田和雄、山川慶二郎 |
設備設計 | 石村佳子、瀬下哲也 |
電気設計 | 宮田大地 |
社外受賞
2018年 | 第31回 日経ニューオフィス賞 九州・沖縄ニューオフィス推進賞 |
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2020年 | 第31回 電気設備学会賞 技術振興部門 振興賞 |