長崎みなとメディカルセンター
- 用途:病院
- 所在地:長崎県長崎市
- 延床面積:48,720.67m2
- 地下:2階/地上:8階
建築設計主旨
老朽化した市民病院と成人病センターを統合し、再整備するPFI事業です。
本計画では、長崎の中核の医療を担う市民病院として迅速な医療を提供可能な理想的な部門ゾーニングであること、市民にも観光客にも多くの人の目に触れる立地のため長崎に相応しい歴史と文化を継承する施設であることが求められました。
建替えは2ステップにより行われ、まず既存病院の隣接地に高度急性期医療機能を集約した1期棟を建設し、引越後に既存病院を解体、その後医療連携機能を集約した2期棟を建設しました。これにより、病院を運営しながらの建替えを実現し、さらに仮設棟や工事中の引越回数を軽減することができました。
計画地は景観条例により30mの高さ制限があるため、1期棟は免震構造を活かした外郭構造により地震力の負担をさせ、内部構造を梁のないフラットスラブとし、わずか30mの高さで8階建ての低階高を実現しました。
また、面積最大化を図り、重要なすべての医療部門を集約することで、人と物の流れの効率化を図りました。
さらに、2期棟を低層化し市民やスタッフのための交流部門を集約することで、歴史ある活水女子大学の丘を望む景観の再生と地域との親和性を目指しました。
長崎という土地は、時代ごとの新しい文化を取り入れ長く時代を経て長崎の歴史性を形成してきたことを踏まえ、レンガやアーチ等の古いモチーフの模倣をするのではなく、現代の先進技術を表現できるファサードデザインとしています。
構造設計主旨
1期工事で求められる病院機能を高さ30mの制限の中で達成するべく、フラットスラブ構造を採用し、一般階の階高を3300mm、天井高さ2500mmとする計画としました。
室内は梁の全くない構造です。
地震時にフラットスラブに生じる応力を小さくさせるため、縦連窓のデザインを利用して外周部に列柱を設け、耐震要素としています。
免震層は地下2階床下に設け、基礎免震構造として耐震性を高めました。
1期工事完了時に仮使用が始まりましたが、その段階でも免震システムが所定の性能を発揮するよう、支承配置を定めました。
ハイブリットTASS免震、フラットスラブ、耐震間柱による外殻構造、などの技術を建築計画やローリング計画と無理なく整合させることで、高い構造性能とデザインが融合した大型病院建築が実現できました。
設備設計主旨
高度先進医療と災害拠点の機能を合わせ持つ総合医療施設として、安全かつ円滑な医療活動をサポートするための重要機能を実現するべく設備計画を行いました。
長崎市の災害拠点病院として病院機能を3日間以上維持するために、給水や雑用水(4日分)、緊急時排水貯留槽(4日分)、医療ガス(10日分の酸素)、燃料(3日分)を備蓄し、インフラ途絶対策を行いました。
過去の長崎大水害の経験から電気室は地下2階・4階・8階に分散配置し、万が一対策レベルを超える水害が発生し建物地下部分が浸水した場合でも、2階以上の重要負荷に発電機より電源を供給でき、医療活動が継続可能な配電計画としました。
医療機能を支えるべく、特高受電と非常・保安用発電機及びUPSによる重要負荷電源の常時確保を行い、また空調熱源や給湯熱源機器及び重要室空調機器を複数台設置とし、二重化による安全性を確保しています。
環境・省エネルギーへの配慮として、電気・ガス・水冷・空冷とバランスの取れたベストミックス熱源、給湯熱源の排熱を利用した冷水蓄熱、簡易型エアフローウィンドウ、LED照明や高効率設備機器、超節水型衛生器具などを採用しました。
インテリアデザイン主旨
ウェイファインディングの観点から、長崎の港を思わせる濃紺(スタッフエリア)と白く明るい壁(外来エリア)が反転する特徴的なインテリアデザインとし、明るさ感で人を誘導することで過度になりがちな病院のサインを減らすことが可能となりました。
また、1期棟と2期棟に挟まれたアトリウムの「きびるプラザ(きびる=長崎弁でつなぐという意味)」は、外装と同じデザインをインテリアに用い都市スケールが入り込んだ街並みのような場所とすることで、病院を訪れる人の基点となると共に国道と市道を結ぶ街路空間として人々に親しまれています。
担当
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設計 | 設計:久米設計・大成建設・松林建築設計・池田設計 設計共同企業体 |
大成建設担当者 | |
総括 | 松村正人 |
建築設計 | 三橋啓史、佐々木直大、堀江晋一、岩崎篤 |
構造設計 | 中川路勇、武谷政國、豊島裕樹、野口裕介 |
設備設計 | 堀雄二、龍英夫、石村佳子 |
電気設計 | 堀雄二、森義明、宮嶋禎朗 |
ランドスケープ | 蕪木伸一、藤澤亜子 |
インテリアデザイン | 大野博文、中根健 |
社外受賞
2018年 | 九州建築選2017 |
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2018年 | インテリアプランニングアワード2018 入選 |
2019年 | 第33回 空気調和・衛生工学会振興賞 技術振興賞 |
2019年 | 令和元年度 デマンドサイドマネジメント表彰 ヒートポンプ・蓄熱センター理事長賞 |
- Technology & Solution:
- 長崎みなとメディカルセンター