栄光学園創立70周年事業新校舎
撮影:日暮雄一
- 用途:中学校、高等学校
- 所在地:神奈川県鎌倉市
- 延床面積:9,319.00m2
- 地上:2階
建築設計主旨
栄光学園は、カトリックの修道会イエスズ会によって設立された中高一貫校で、鎌倉の豊かな緑に囲まれた10haを超える丘の上にキャンパスがあります。
築後50年を経た旧校舎は老朽化が進み、安全面への懸念から建替が計画されました。
広大なキャンパス内には屋外運動施設も充実し、国内有数の進学校でありながら、運動・スポーツも盛んな校風をもっています。
新校舎は、この豊かな環境と屋外での運動が活発な学園の文化を最大限に活かすため、「3階建てのコンクリート造旧校舎」から敢えて「2階建ての木造主体の新校舎」へと建替え、大地に近い開放的な学びの場の形成を目指しました。
木造とRC造のハイブリッド構造により校舎全体の高さを極力抑え、杉板下見張りや合板の軒天井など材料本来の素材感を素直に表す外観とすることで、自然豊かな周囲の環境に溶け込む景観をつくり出しています。
開口部は可能な限り大きくとり、外周部には伸びやかな軒やバルコニーを設けることで、日射負荷を削減しながら、窓からの安定した自然採光を可能にし、外部環境との連続性のある校舎を実現しています。
構造設計主旨
本校舎は2階床までがRC造(一部鉄骨造)、2階はRC造と木造の混合構造としています。
計画地は防火地域外のため、2000m2未満ごとにRC造の耐火構造で区画することで木造部分の耐火要件を満たしながら、木の繊細な表情を現しとすることができています。
耐火構造のRC造の部分は地震力の耐力要素も兼ねており、これにより2階の木造部分をより軽快な構造としています。
屋根架構は橋梁で用いられるゲルバー梁の仕組みを応用し、追掛け大栓継手を用いながら長さ6m以下の一般流通材を使って15.6mの架構を実現し、2階床のフラットスラブ化や外周梁の断面形状を扁平化することで、1・2階ともに階高を抑えることができ、大地に近い建築計画を実現しています。
扁平梁を支える1階の柱は鉄骨のみで常時かかっている力に耐えられるようになっていますが、厚さ35mmの集成材で包み付加価値を高めた柱としています。
更にこのことは、RC造の1 階部分にも木の柱を出現させ、意匠性の向上と、建築全体の木質化に大きく寄与しています。
設備設計主旨
階高を抑えた建築計画に対応するため、設計当初からBIMを活用したコンパクトで合理的な設備スペースを目指しました。
廊下上部の天井懐を設備スペースとして活用し、教室の壁面に空調および換気の吹出し・吸込み口を設けることで、教室内部に空調機器を露出しない計画としています。
空調計画は、ランニングコストを抑えるためGHPを採用しています。
省エネルギーと非空調エリアの廊下環境にも配慮し、教室の空調空気の排気先を廊下として、冷暖房時の熱を無駄なくカスケード利用しています。
照明計画は、木の美しさと調和を目指し、構造材と一体となった照明配置に配慮しました。
表しの木架構の表情を美しく見せるため、照明器具と構造体を一体的に検討し、普通教室ではダブル梁の間にライン照明を設置し、配線類を露出させないようにしています。
環境配慮技術として、一部の屋根面の雨水を雨水貯留槽に導き、ろ過装置を介してトイレの洗浄水に使用しています。
担当
担当 | |
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基本設計 | 株式会社日本設計 |
実施設計 | 日本設計・大成建設一級建築士事務所設計共同企業体 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 輿石秀人、矢崎裕信、村岡拓見 |
構造設計 | 島村高平、坂口裕美、花里紗知穂 |
設備設計 | 福田浩、清水賢 |
電気設計 | 福田浩、星野顕 |
社外受賞
2017年 | 第61回 神奈川建築コンクール 優秀賞 |
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2017年 | グッドデザイン賞 |
2018年 | 第21回 木材活用コンクール 最優秀賞(国土交通大臣賞) |
2018年 | 2018年度 日本建築家協会優秀建築選(100選) |
2019年 | 作品選集2019 |