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WORKS 2016

宇部興産大阪研究開発センター

用途:研究所
所在地:大阪府堺市
延床面積:3,768.73m2
地上:3階

建築設計主旨

本計画は、成長戦略事業である機能品の研究開発機能をさらに充実するため、製造拠点があり顧客に近い大阪地区に研究開発拠点を設置したいという要望からスタ ートしました。
そのため、建物の在り方として人々を迎え入れる表情が求められました。
遠景の顔と近景のアプローチの壁には、目地なしの外壁を使用し、クリーンな印象を与えることで研究開発のクオリティの高さを示唆しています。
研究開発活動は、実験と検証の繰り返しで、スタッフは実験エリアとオフィスエリアを頻繁に往来します。
危険を伴う実験もあり、視覚的にスタッフの動きを常に把握することが安全上最も重要視されました。
シャフトスペースを分散配置し、残った壁面は最大限透明にすることで、視認性と安全性を確保しています。
実験の内容や共働メンバーの変化があるため、フリーアドレスが採用され、オフィスエリアや研究・実験エリア内に様々なワークプレイスが設えられています。
そこでスタッフ同士のコミュニケーションが誘発・活性化され、研究開発の効率をより良いものにしていくことが意図されています。
また、研究所という恊働作業の多い施設において、海外のパートナーや顧客を迎え入れる機会は少なくありません。
そういった機能要求に対し、堺・千利休という日本においても歴史的な地区に即し、デザインのテーマを「簡素な和」と設定しています。
それらは現代の建築として抽象化されて各所に散りばめられ、来客を迎え入れる 「おもてなしの場」を演出しています。

建物の周囲は、開かれた空間になっており、視線の突きあたりや一時的な滞留エリアなど、要所に効果的な窓と緑を配置し、閉塞感を感じさせないように配慮しています。
研究所という集中が必要な空間において、スタッフの気持ちを和らげる効果を持たせています。

構造設計主旨

視認性の高い研究開発空間を創出するため、主架構はラーメン構造を採用し、ロングスパン方向は11m、13m、2スパンで構成しています。
外観において特徴として挙げられる垂壁は、目地無し仕上材の仕様を満足するために風圧時の面外方向のたわみを1/240以下となるように設計しています。

また、壁の端部の厚みはバルコニー先端の水平ライン厚さ300mmと揃えることで建物全体のデザインの統合を図っています。
壁の端部の厚さを抑えるため、両端部の間柱、耐風梁のサイズを絞り、かつ胴縁は間柱、耐風梁とほぼ同面となる位置に配置しています。

設備設計主旨

研究所という設備要件比率が高い建物であることから、合理的な計画が求められました。
各研究・実験関連室は、設備ダクトが多く必要な部屋(クリーンルーム等)を上階に配置することで、屋上設備との距離を短くしています。
また、各フロア内のダクトスペースを建物中央に分散配置することで、設備ルートの長さを最小限に抑えた計画としています。
実験エリアは、高速VAVを給気側・排気側に用い、ドラフトチャンバー類のサッシュ開閉に応じた換気量制御を行うことで、省エネルギー化を図っています。
実験エリアの一部のドライクリーンルームでは、除湿空調機+気密空間化による超低湿度空間(露天温度-40℃)を実現しています。

担当

大成建設担当者
建築設計 平井浩之、関山泰忠
構造設計 山﨑英一、杉山雄亮
設備設計 西村英俊(前期)、根本昌徳(後期)、宮本敬介、福間麻里子
電気設計 西村英俊(前期)、根本昌徳(後期)

社外受賞

2017年 第30回 日経ニューオフィス賞 近畿ニューオフィス奨励賞
2018年 第38回 大阪都市景観建築賞(大阪まちなみ賞) 奨励賞