建築設計主旨

計画のテーマは、分散していた法人配下の複数大学を一つのキャンパスに集約し、相乗効果を活かしながら将来の大学統合に繋がる新たなキャンパスを構築することでした。
「キャンパス･マスタープラン」にもとづき、大学・学部・学科の垣根を越えた共通性のある空間システムを提案することで、北海道科学大学(旧北海道工業大学)前田キャンパスに北海道薬科大学の校舎移転と科学大学が新設する保健医療学部棟を近接整備し、将来構想に展開していきます。
空間システムは学生の居場所(共用空間や卒研生・院生室)づくりを中心として、室の大きさや使い勝手に将来への可変性を持たせた、構造架構や設備計画と一体となった内外装デザインに反映されています。
柱と間柱付ロングスパン梁を3mモデュールで並べることで、外部では列柱が日射抑制と雪害対策の機能を持つ外観デザイン、内部では間柱の配置調整でロングスパンの外形幅を変えずに異なる用途に対応した内観デザインとなっています。
モデュールの展開は、ロングスパン1列に実験実習室＋設備シャフトのゾーンと教員研究室＋卒研生・院生室のゾーンが並ぶB・C棟と、中小講義室ゾーンと大講義ゾーンからなるロングスパン2列の間に屋内の立体街路となるアトリウムを持つA棟で、用途の異なる多棟へ共通に展開しています。
この展開に併せて、各棟ごとに異なる色を積極的に使ったサイン・インテリアデザインを行い、棟ごとのアイデンティティ確立と大学構内全体の案内システムに活用しつつ、北国の厳しい季節を豊かに過ごせる情緒的な効果が拡がっていくことも期待しています。

構造設計主旨

空間利用に可変性をもたらす、3mモデュールによる25mのロングスパン梁架構
大学用途に必要とされる研究室・実習室や講義室の将来にわたるプランの自由度と可変性を実現する空間システムをコンセプトとして、3mのモデュールを繰り返す合理的な構造架構を展開しています。
外端部をRC造、中央部をS造とするCSビーム構法を採用し、S造の間柱を付加することで25mのロングスパンを実現しています。
S造の間柱位置を室群(研究室・ゼミ室・実習室・講義室)の大きさに合わせて自由に配置し、主な耐震要素である耐震壁を妻側フレームに集約する構造計画としています。
外周の柱梁をPCa化し、内部の梁、間柱をS造とすることで、工場生産された部材を現地で組み立てる工業化手法による高品質な校舎を実現させると同時に、降雪期間の躯体工事を回避しながら多棟を同時に建設することが可能となり、労務の軽減と工期圧縮を図ることが可能となっています。

設備設計主旨

北国の風土を活かす設備計画と自然エネルギー活用
北海道の特徴である、冬の積雪と夏の温湿度特性を活かす設備として、省エネルギーや自然エネルギーの活用と、キャンパスで必要とされる空間利用のフレキシビリティー確保を両立する計画をテーマとしています。
設備シャフトを建物中央廊下側に設けることにより、研究実験室に関連する配管・配線について、積雪時にもルートや本数の変更や更新が可能となっています。
停電時には電源車を接続することによって電源供給が可能となり、研究の持続性に配慮しています。
エネルギー計量の見える化を行い、将来のキャンパス全体のスマート化を見据えた計画としています。
北国の特性を活かした空調として、中間期の換気による外気冷房が可能な外調機システムを採用し、人が集まる大講義室などには二酸化炭素濃度による換気量制御を行い、大幅な省エネルギー化を図っています。
雪のエネルギー活用として、貯雪場の直下に地中埋設した採熱パイプに水を循環させ、地中熱とともに貯雪の融解水による冷熱を利用した熱源空調システムを薬大棟の実験動物センターに採用し、大学の寒地環境エネルギーシステム研究所と協働で導入後の効果検証を行っています。

担当

社外受賞