穂の国とよはし芸術劇場 プラット
- 用途:多目的ホール
- 所在地:愛知県豊橋市
- 延床面積:8,036m2
- 地上:4階
建築設計主旨
豊橋市が、東三河市民の芸術文化の創造活動と、芸術文化活動を通じた人々の出会いと交流の拠点として、2013年5月に開館した劇場です。
敷地は、豊橋駅からペデストリアンデッキで直結し、東海道新幹線や東海道線、渥美線の線路に面した細長い形状です。
ここに、鉄道からもはっきりとわかる、新しい豊橋のシンボルを作ることを目指しました。
長大で重厚な連続アーチを持つレンガ壁、市民の活動を包み込む大屋根、その上に浮かぶ自由な曲面ボリューム、という3つのデザインエレメントが個性的な外観を作っています。
1階に「交流スクエア」という創造活動の中心核になるロビー空間を設け、これを取り囲むように主ホールホワイエ、アートスペース、創造活動諸室を配置して、賑わいを集中させました。
さらにレンガ壁に導かれるように2つの明解な動線を、交流スクエアを挟んで配置しています。
それぞれのスペースに設けた大きな開口から、自然と市民の活動が賑わいとなってまちに溢れ出ていきます。
客席数778席の主ホールは演劇を主目的とした劇場で、出演者の熱気や緊張感、生の台詞が客席に自然に伝わることに配慮した親密感のある空間です。
色とりどりの華やかな木リブで構成された客席の壁は、光や見る角度で異なった印象を観客に与えます。
アートスペースは、舞台芸術から音楽、講演会など幅広い文化活動が可能な、客席数266席のブラックボックス形式の小劇場空間です。
外壁と同じレンガを、外壁とは違った積み方で積んで、独特の表情を持たせるとともに、建築音響的にも効果を持たせています。
構造設計主旨
デザインの特徴となるアーチ壁と、遮音上有効な連層壁ボックスを耐震壁とする合理的な架構により、剛性と強度を高め、官庁施設の基本性能基準及び同解説のⅡ類に該当する耐震安全性を確保しています。
また、コンクリートの耐久設計基準強度はJASS5の「長期」として、高耐久と高強度を実現しています。
建物を支える杭頭部を半剛接合とする、杭頭半剛接合構法(F.T.Pile構法)を採用することで、地震時の杭頭曲げモーメントを低減し、杭や基礎梁の損傷防止と躯体のスリム化を図っています。
主ホール客席の天井の脱落対策としては、天井の固有周期をT≦0.1secとして、水平震度1.0G、上下震度0.5Gで設計しています。
天井面構成部材と壁との隙間は10cmを確保しています。
設備設計主旨
省エネルギーや環境に配慮したホールを目指し、「高効率機器の採用」「最適制御の実施」「ランニングコストの低減」の3つの基本方針の下に設備計画を行っています。
空調設備は、ガス熱源を主とし、全熱交換器、変流量制御などを採用しています。
主ホールは床吹出による可変風量方式を採用し省エネと快適性の両立を図っています。
さらに、舞台照明の熱を再熱に利用するミキシング調湿システムも導入しています。
また、ホールとして基本機能である静粛性を確保するため、消音器の設置や防振対策も確実に行っています。
受変電設備は、舞台照明・舞台音響・舞台機構などの用途別に専用変圧器としノイズ対策に配慮しています。
また、屋上に太陽光発電を設置し全館に供給しています。
照明はLEDを主体として計画し、蓄電池は長寿命型MSEを採用するなど、メンテナンス性にも配慮しています。
熱源・空調など用途別や部位別にエネルギー計量を行っており、これを用いて施設運営の最適化が図れるよう、BEMSシステムを導入しています。
主に「熱負荷の低減」「自然エネルギー利用」「高効率な設備システム」の3つにカテゴライズされる環境配慮技術を用いることで、「CASBEE あいち」のSランクを実現しています。
舞台設備設計主旨
様々な演出や活動に対応する自由度が高く、仮設性に富んだ舞台設備とすることで、基本的な劇場としての性能を備えた上で、市民の創造活動による発展性を秘めた劇場づくりを行っています。
担当
担当 | |
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設計 | 香山壽夫建築研究所・大成建設 設計共同企業体 |
音響コンサル | ヤマハ |
照明デザイン | Lighting M |
サイン | 甘利デザイン事務所 |
工事監理 | 香山壽夫建築研究所(建築) 飯島建築事務所(構造) 環境エンジニアリング(設備) |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 杉江大典、高橋広直、宮本昌和、買手正浩 |
構造設計 | 出雲洋治、渡邊諭、小野森司、福田優子 |
設備設計 | 熊谷智夫、長徹 |
電気設計 | 熊谷智夫、山口亮 |
ランドスケープ | 蕪木伸一、藤澤亜子 |
社外受賞
2013年 | 第4回 省エネ・照明デザインアワード 公共施設・総合施設部門 優秀事例 |
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2015年 | 第22回 愛知まちなみ建築賞 |
2016年 | 第57回 BCS賞 |
2020年 | 第17回 公共建築賞 優秀賞 |