木の屋石巻水産美里町工場
- 用途:水産加工工場
- 所在地:宮城県遠田郡美里町
- 延床面積:3,859.45m2
- 地上:2階
建築設計主旨
計画地は、石巻から車で30分程内陸に位置し、石巻で被災した水産加工会社の復興工業団地の一区画として広大な水田地帯のなかにあります。
新工場は、クジラやサバ等の缶詰製造スペースのほかに本社機能や地域交流機能を備えており、木の屋の従業員が再び集まって共に働き、地域の人々と交流しながら、みんなの拠り所となるような建物を目指しました。
周囲の広大な田園風景と一体化したゆったりと起伏するランドスケープのなかにイベント広場やテラスを設け、それと呼応するように内部はスキップフロアとして、どこにいても人の気配が感じられる場をつくっています。
企業理念である「鯨文化の保存と促進」を表象し、みんなを元気づける建築として、人々が集うエリアをクジラフォルムで内包しています。
製造エリアは木の屋ブランドの新たな発信拠点として、従業員が楽しく働け、高品質な製品を生み出す環境が求められました。
そこでHACCP※に準拠した安全でクリーンな製造環境を構築し、見学デッキをその中心に据えることで木の屋の缶詰づくりへのこだわりを広く公開できる施設としています。
その景観は、新たなランドマークとして地域のシンボルとなり、四季折々に変化を見せる水田風景に対し伸びやかな建築として佇んでいます。
※Hazard Analysis Critical Control Pointの略
食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生する恐れのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析し、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという 重要管理点を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法
構造設計主旨
工場棟は、BCPに配慮し、液状化対策として47mの杭を打設し、上部は強固なブレース構造としています。
クジラフォルムは単なる外観的な装飾ではなく、構造的にボールト構造とカテナリー構造を連結した架構によって構成されています。
オフィスエリアにはゆったりとした凸レンズ状の曲面天井を創出し、地域交流エリアでは緩やかに垂れる天井が領域の一体感を高めています。
スラブはスキップフロアとすることにより、4つの異なるレベルを半階ずつずらしながら構成しており、スロープや螺旋階段で各スラブを結び付け、回遊性のある立体的な空間を創出しています。
設備設計主旨
「これまでの水産加工業のイメージを払拭するような環境に配慮した施設」を創りたいとの発注者の要望をうけ、CASBEE-Sランクを指標として自然の営みと共生する省エネルギーな設備計画を実現しています。
美里町の豊かな自然環境のなかで、中間期の重力換気システムやトップライトによる採光など自然エネルギーを活用しています。
また、LEDや節水器具、井水利用などランニングコストの低減に配慮しています。
照明計画では、間接光でクジラフォルムが浮かび上がるように工夫しており、近くの県道から夕暮れ時のランドマークとなっています。
担当
大成建設担当者 | |
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建築設計 | 下村真一、古市理、宮本晃代 |
構造設計 | 出雲洋治、高澤昌義、長谷川達也 |
設備設計 | 岸野豊 竹内伸介 |
電気設計 | 種市文彦 |
ランドスケープ | 蕪木伸一、木川薫 |