ホスピタルメント武蔵野
- 用途:有料老人ホーム
- 所在地:東京都武蔵野市
- 延床面積:4,458.69m2
- 地上:3階/塔屋:1階
建築設計主旨
本計画は、東京都武蔵野市の閑静な住宅街に建つ、有料老人ホームです。
外観は、面によって外周部の構造柱の形状を東西面は壁柱、南北面を丸柱とし、表情に変化をもたせることで住宅地の小さなスケールに調和するデザインとしています。
南北面のフラットスラブは水平ルーバー、東西面の壁柱は縦ルーバーとして日射遮蔽の機能をもたせた環境に配慮したデザインとすることで、建築・構造・環境の三位一体となった外観デザインを実現しています。
メインコンセプトである「どの住戸も孤立しない、常ににぎわいが感じられる空間」を実現するために、建物の中央に設けた3層吹き抜けの機能訓練室と中庭の2つの大空間の周りを居室が並ぶロの字型の空間構成としています。
それにより、いつも誰かに看守られている一つの家のような安心感がある、居住者を孤立させない仕組みをつくりだしています。
居室は、一般居室のAタイプ、2人入居可能なBタイプ、窓側にトイレと洗面を設け介助がしやすく自立的な生活をサポートするCタイプと、居住者の身体に応じて選べる3つのタイプを用意しています。
その他、ホテルライクなインテリアデザインに加え、建物の長寿命化、災害対策、豊かな外構計画によるJHEP_AA取得、武蔵野市第1号となるバリアフリー認定の取得等、細部にわたって密度の濃い計画とすることで、有料老人ホームの枠組を超えた、これからの時代に相応しい建築を実現しています。
構造設計主旨
本建物は、鉛直荷重を支持する外周細柱と、鉛直荷重と地震力を負担するロの字型に配置した壁柱からなる耐震フレームで構成しています。
外周細柱は約3.0m間隔で配置しています。
丸柱は柱頭・柱脚をピン接合とし、角柱は剛接合としていますが、壁柱耐震フレームで地震力を負担させることにより、地震力の負担を小さくしシャープなファサードを実現しています。
設計条件として、高さ制限10mという低層住宅地の厳しい制約の中で、3層で可能な限りボリュームを確保することが求められたため、居室部分にはボイドスラブを採用することで、梁型をなくしたフラットな躯体とし、階高が小さいなかでも適切な天井高を確保できるようにしています。
また、床の等価スラブ厚さが大きくなったため、床スラブの遮音性能も向上しています。
設備設計主旨
環境配慮の設備を採用し、省エネルギーとメンテナンス性に配慮した設備計画を行っています。
本建物は有料老人ホームという建物用途上、厨房や大浴場の給湯負荷が多いことから、自然エネルギー利用として屋上に太陽熱パネルを設置し、セントラル給湯システムに組み込んでいます。
さらに給湯器には高効率の潜熱回収型機器を採用し省エネルギーに配慮しています。
照明は、蛍光灯に比べ長寿命のLED照明器具を主体として計画しています。
天井高9.1mの機能訓練室には天井面に照明器具を設置せず、廊下手摺上部に設けたふかし壁内や耐風梁下のふかし部分に設置することで、室利用を妨げることなくメンテナンスできる計画としています。
またBCP対応として、発電機により共用部の一部の照明や空調、厨房機器への電源供給を行っています。
ランドスケープ設計主旨
敷地全体に渡って武蔵野の生態系に合った在来種や移植した既存の巨木を配植することでJHEP AAの取得、入居者への癒しと周辺環境への貢献を果たしています。
入居者の散策路を設けた食堂前庭においては、柔らかい曲線を用いた有機的なデザインとすることで、自然の森の中を歩いているような心地良い空間としています。
武蔵野にゆかりのある緑と移植した既存の巨木に加えウッドデッキを設けることで、居住者に安らぎをもたらしながらも様々な活動が可能な場所としています。
インテリア設計主旨
建物全体のインテリアは、落ち着きと高級感溢れるマテリアルを用いることで、施設らしくないホテルのような空間を目指ました。
エントランスホールや機能訓練室の3層貫く大壁面には大理石を用い、共用部はダークブラウンの木目調を基調とした色彩とすることで、高級感を演出しています。
また、大浴場では浴槽に肌触りの良い十和田石を用い、多目的室・相談室等の利用者ゾーンにおいても、細部まで行き届いたデザインを施すことにより品格の高い空間を創出しています。
担当
担当 | |
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設計 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
外観・外構デザイン監理監修 | 日建ハウジングシステム |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 松村正人、片瀬順一、河合義之、中村有希 |
構造設計 | 中川路勇、藤野宏道、関根夕貴 |
設備設計 | 堀雄二、田村健、村井麻里子 |
電気設計 | 堀雄二、箭内伸司、桜井健二 |
社外受賞
2014年 | グッドデザイン賞 |
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