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WORKS 2012

在東京タイ王国大使館

用途:大使館
所在地:東京都品川区
延床面積:2,996.51m2
地下:1階/地上:2階

建築設計主旨

このプロジェクトでは、大使館機能の強化とセキュリティや安全性の向上、タイ王国の施設としての表現などが求められました。また、敷地に残る豊かな「都市の森」を保存し、活かすことも重要なテーマと考えて計画しました。
閑静な住宅地である周辺環境に配慮し、建物は機能毎に分棟配置として1棟毎のボリュームを抑えています。
各棟は地下で繋げて大使館として一体で機能するようにし、それらを既存の大使公邸も含めて中央の広場を囲うように配置し、施設全体の一体感を感じられるようにしています。
敷地の高低差を利用して地下のオフィスにも窓を設けるなど、建物の内外になるべく視線が抜けるようにし、どこからでも周辺の豊かな緑の眺望を享受できる、快適なワークスペースとなるようにしています。
外壁はコンクリート打放し仕上げで、ガラスの大開口やアルミ素材を外装材に採用し、現代的なタイを表現する洗練されたイメージの外観にすると同時に、インテリアの木ルーバーや木張りを外部に積極的に見せることで、親しみやすさや東南アジア的な雰囲気を出すようにしています。
また、伝統的なタイらしさを表現するために、庇や守衛棟の屋根にタイの建築の特徴である三角の切妻屋根のモチーフを取り入れています。
一部に自然換気システムを組み込んだ方立のサッシを採用するなど、ほとんどの居室で中間期には自然換気を行えるようにし、窓にはLow-eペアガラスを使用することで、省エネルギーにも配慮しています。

構造設計主旨

本建物は、東西方向で地盤のレベル差が10m以上の傾斜地に計画されており、東西方向の空間の抜けが、建築上重要なポイントとなっています。
そこで、鉄筋コンクリート造を採用し、東西方向には耐震壁を十分配置し、南北方向はラーメンフレームを基本として、建築プラン上壁が必要とされる箇所に耐震壁をバランスよく配置することで、東西方向の空間の抜けを阻害しないとともに、耐震安全性II類相当の重要度係数1.25を満足する建物としています。
また、地盤のレベル差が大きいため、施工上杭打ちが困難であることから、直接基礎を採用していますが、地すべりの影響が懸念されました。
そこで、建物の長期荷重による地すべりの抵抗機構(基礎下コッター)と地震による地すべりの抵抗機構(地すべり抵抗杭)を採用し、地すべり対策を施すことで、建物の安全性を確保しています。

設備設計主旨

環境配慮型オフィスとして、東京都の定めた基準を満たしたトップレベル事業所(優良特定地球温暖化対策事業所)の認定を目指し、太陽光発電、クールピットによる外気導入、CO2制御の採用などの各種省エネルギー技術を採用しています。
また、大規模賃貸オフィスとしては、国内では初めてテナント貸室から共用部、エントランス、外構に至る全館にLED照明を採用しています。

構造設計主旨

本建物では、高い耐震安全性とフレキシブルなオフィス空間の両立を実現すべく、免震構造と外周壁柱構造を組合せた「TOLABIS」を採用しています。
基準階は、外周部の壁柱と境界梁によるRCラーメン構造とし、柱型の出ない執務空間として有効面積を最大限確保する計画としています。
外殻構造とすることで、内部の柱梁を地震力から開放し、梁せいを最小限に抑えるとともにコア周りの柱は細い間柱としてフレキシビリティを確保しています。床組みは鉄骨小梁と合成床板により軽量な構造とし、約15mスパンの無柱空間としています。
壁柱構造は2階床梁で切り替えを行い、1階は耐震壁付きラーメン構造とし、道路に面する南北面の柱ピッチを大きくしてエントランス等必要な間口を確保しています。
また、壁柱間のサッシュを上階から下階まで層間にわたって通したデザインとする為、壁柱に対して境界梁が平面的に偏心して接合し、梁型が壁柱側面から室内側に突出した形状としています。

設備設計主旨

外国人が使う建物として、大使館としての安全や利用者の使い勝手、省エネルギー性を設備計画のテーマとしています。
災害によるインフラ途絶時の対策として、3日分の水道水と排水容量、非常用発電機燃料を備蓄しています。
非常時の建物内の設備機能は、使用するエリアを限定し、大使館の職員に加え、大使館に避難してきた人々にも対応できるように計画しています。
大使館職員が日常的に利用する空調・換気リモコン、機械警備主装置、監視カメラ主装置、設備機器の表示は英語表示としています。
大使館内の情報ネットワークは、L3スイッチとL2スイッチによりVLANを構築し各部門間の情報安全性を確保しています。
照明器具はLEDダウンライト、LED外灯、HF型蛍光灯、衛生は節水型の器具、空調は各部署毎に系統を分けることとし省エネルギー化を図っています。
また、建物の使用勝手から間仕切りが多いため、空調機は冷暖フリーの機器を採用し快適性を重視し、近隣は住宅街であることから、空調屋外機には消音器を設置して対策を行っています。

担当

担当
プロジェクトコンサルタント 宮崎浩/
株式会社プランツアソシエイツ
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
建築設計 杉江大典、えき真介、細川晋一郎、新井健太
構造設計 早部安弘、渡辺征晃、安藤広隆
設備設計 熊谷智夫、根本彩子、小畠忠久
電気設計 佐藤文明