MASKAR(女川魚市場買受人協同組合冷凍冷蔵庫)
- 用途:冷凍倉庫、冷蔵倉庫
- 所在地:宮城県牡鹿郡女川町
- 延床面積:6,932.49m2
- 地上:3階
建築設計主旨
宮城県北東部に位置する女川町は、北上山地と太平洋が交わるリアス式海岸に囲まれた自然豊かな港町です。女川港は古くから天然の良港として栄え、さんま漁では日本有数の水揚げ量を誇っていました。
しかし、2011年3月に発生した東日本大震災により、町は甚大な被害を受け、かつて賑わいを見せていた多くの水産施設もまた深刻な被害を受けました。
震災から約半年後の2011年末、一刻も早い町の復興を願う情熱と、多くの支援のもと、「2012年秋、女川にさんまの水揚げを」を合言葉にこのプロジェクトはスタートしました。
水産業は町の主要な産業であり、水揚げされた水産物を保存する冷蔵施設は町のシンボルとなります。
そして何より、被災後最初に建てられる町の基幹施設であることから、復興のシンボルとしての姿が求められました。
ボリュームやファサードの構成、素材や色の選定など、建築の姿を抽象化することで風景との調和を図り、シンボル性をもたせています。
町のどこにいても目にすることができ、季節の移ろいや、時々刻々と変化する自然の表情を映しこむ姿は、これからも長く、町の復興のシンボルとして有り続けます。
構造設計主旨
2階には6000tの保管能力を持つ冷蔵室を備えており、水揚げされた水産物が保存されています。震災時には、この保管物に被害が及ばないことが求められました。
津波が襲来すると、波力により1階外壁のALCパネルが先行して外れ、柱だけが残ります。
そうすることで建物に加わる津波の力を最小限に抑え、2階から上を守ります。
想定した建物への浸水深さは6m。数十年から百数十年に1度程度の確率で女川湾を襲う「レベルⅠ」規模の津波の高さとしました。
内閣府が2005年に定めた「津波避難ビル等に係るガイドライン」などに従い、浸水深さの3倍に相当する18mの静水圧が、地上から2階の床までの範囲に水平方向に作用するという条件で計画しています。
1階の柱には、十分な強度を得るためにSRC造を採用しており、塩害による耐力の低下を防ぐためにかぶり厚を通常よりも20㎜増しています。
2階から上部はS造とし、軽量化することで下部構造体への荷重を減らすとともに、24m×27mのロングスパン架構と工期の短縮を実現しました。
基礎は、津波による洗掘に耐えられるように場所打ちコンクリート杭を採用し、建物の転倒や浮きを防ぎます。
設備設計主旨
震災時にインフラが寸断された状況においても、いち早く地域の復旧拠点として機能することを目指しました。3階の備蓄倉庫には食料や毛布などを蓄えており、同じく3階に配している復旧支援室は独立したインフラを備えています。
給水方式は、1階を直結方式とし、2階と3階は高置タンク式としました。系統を分離することで、1階の給水管が破損しても漏水することなく一時的に水の使用が可能です。
屋上には容量10kWの太陽光パネルを設置し、停電時の携帯電話への充電や、TVやラジオなどの電力を確保しています。
また、プロパンガスの接続口を3階に設けており、ガスボンベを備えることでガスの使用が可能になります。
2階の冷蔵室は、停電時でも直ちに冷やせるように、電源車をつなげられる外部電源の接続口を設けています。
担当
大成建設担当者 | |
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建築設計 | 埴田直子、平井昌志、木幡理朗 |
構造設計 | 網干眞一、島田博志、山崎英一、長谷川幹 |
設備設計 | 岸野豊、竹内伸介 |
電気設計 | 岸野豊、種市文彦 |
エンジニアリング | 大村直明 |
社外受賞
2013年 | グッドデザイン賞 特別賞 |
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