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WORKS 2011

高崎市総合保健センター 高崎市立中央図書館

用途:保健所、診療所、図書館
所在地:群馬県高崎市
延床面積:32,392.10m2
地下:1階/地上:6階

建築設計主旨

施設は「平成の大合併」を経て、中核市に移行する高崎市の新しい拠点となる複合施設で、医療と保健の各種機能を備え市民の健康と生命を守る「総合保健センター」と、生涯学習を支援し知の拠点としての「中央図書館」を集約・整備する計画です。

保健所・検診センター・診療所など、様々な機能を内包している保健センターと、図書館という異なる複合機能を一施設に整備する手法として、関連する機能を同一階にまとめることで立ち現れてきた各階のボリュームを素直に積層し、施設中央のアトリウムで相互につなぐ形としています。

リズミカルでダイナミックなファサードを作る各階ボリュームの「相のズレ」は庇やテラスといった中間領域を創り出し、環境制御や憩いの場として機能しています。
内部のアトリウム空間は立体街路状の構成とすることで各階の異なる機能が結び付いており、保健センターと図書館の利用者が自然に相互の存在を感じられる構成となっています。

アトリウムには自然換気システムや太陽光集光装置を利用した環境アートの設置など、自然の光や風を感じられるような計画とし、利用者の環境意識を高めるような工夫を施しています。

構造設計主旨

各階の床面積が異なる複合建築を実現するために、井桁架構に着想を得て、外周部だけで建物形状を構成するフィーレンディール外殻構造を採用しています。
外装デザインと一致したフィーレンディール架構は、外周部の鉛直荷重を支えるトラスであると同時に耐震要素の役割を担っています。
一方、内部には主に鉛直荷重を支持するCFT柱を配置し、自由度の高いロングスパン空間や吹き抜け空間を実現しています。
また、免震構造を採用して地震入力を低減することにより、凹凸のある外形や上下階の柱位置が一致しないという自由な構造形態を実現するとともに、公共施設としての地震時における機能継続性を確保しています。
杭基礎については、杭頭部を半剛接合にしたF.T.PILEを採用し、大地震時の杭頭部の損傷を防ぐ計画としています。

設備設計主旨

中央吹抜けには温熱環境改善および省エネのため、居住域空調、自然換気の他、ELVシャフト利用空調を採用しています。
ELVシャフトを介して冷房時には低層の冷気を吹抜け上部に、暖房時には上部の暖気を低層部に供給することで空調負荷の削減を図っています。

また、本建物の吹抜け空間は下階で空間が大きくなる形状をしており、吹抜空間下階の奥に向かって徐々に暗くなることが懸念されました。
そこで、今回新たに開発したT-Soleil(太陽追尾式採光装置)を屋上に設置し、吹抜内の導光ミラーを介して吹抜け空間に浮かぶ環境アートと吹抜け下階西奥に太陽光を照射しています。
これにより暗さを感じさせず、明るく楽しい光環境を定常的に提供しています。

これらの吹抜環境技術に加えて外気冷房、自然冷媒ヒートポンプ給湯器、全熱交換器、昼光センサーや人感センサーによる照明点灯制御等の省エネ技術や、雨水再利用、節水型便器等の環境配慮技術を導入し、環境性能の向上を図っています。

ランドスケープ設計主旨

計画地は、高崎城址の本丸掘と二の丸堀に挟まれた城代屋敷のあった歴史的な地区であり、地域的な特徴として、土塁による外堀が残され、土手のサクラが美しい場所で、さまざまな公園が点在する高崎の顔となる充実した景観を形成しています。
建物前面の広場は、建築の立体構成を意識したランダムストライプが敷地全体の一体感を高め、北風の緩和や四季の彩りを与える大小の緑の島が浮かぶシンプルな構成で、人びとを自然に敷地に招き入れる、伸びやかなランドスケープを実現しています。
また、発掘調査により発見された本丸堀と二の丸堀を地中で繋いでいた石垣水路は、存在が知られていなかった歴史的価値の高い遺跡で、これを緑の島の中に復元し地域の文化財として表現しています。

担当

担当
設計株式会社佐藤総合計画+大成建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
建築設計 松村正人、下手彰、青木一朗、西平守克、土屋尚人
構造設計 早部安弘、福本陽介
設備設計 堀雄二、龍英夫、鈴木庸平
電気設計 堀雄二、林幸広
ランドスケープ 蕪木伸一、加瀬泰郎

社外受賞

2012年 第53回 BCS賞
2013年 第14回 日本免震構造協会賞 普及賞
2014年 第9回 日本構造デザイン賞 本賞
2014年 日本建築学会作品選集2014