明治大阪工場新1号館
- 用途:製菓工場
- 所在地:大阪府高槻市
- 延床面積:20,835.48m2
- 地下:1階/地上:5階
建築設計主旨
「これからのお菓子工場というテーマで提案を」という依頼から始まったプロジェクトです。
安全・安心、環境負荷の低減、製造環境のフレキシビリティといった課題は当然達成すべきものと考え、「働く人や地域の人に愛され、お菓子の楽しさやおいしさを伝える工場」になって欲しいという思いから、このファサードを提案しました。
約166m×28mの巨大な板チョコに対し、おいしそうなツヤツヤ感や、なめらかでシームレスな表面を実現するため、最適な素材と仕上げを吟味し、建築的なディテールを徹底的に消去しました。
検討の結果、繊維強化プラスチック(FRP)を素材として採用し、ベトナムでの丁寧な手仕事により製作されました。
板チョコを構成する四角い一粒(約11.9m×9.4m)は、船便輸送できるように15のパーツに分割されていますが、分割ラインが見えぬようクリアランスゼロを実現しています。
JR京都線の車窓から間近に見える好立地で、2011年のバレンタインに向けて一粒一粒設置しました。
組み立て中は、チョコレートの巨大さと徐々に完成していく経過の楽しさで、Twitter等で話題となりました。
季節や一日の光の変化により刻々と変わる艶やかでおいしそうな表情が、「おいしい風景」として、お菓子作りの現場と社会とを結び、新しいコミュニケーションの輪を生み出す「コミュニケーションファサード」です。
構造設計主旨
将来のライン変更に対応可能な製造スペース高さを最大限確保するため、プレストレスト導入により梁成を抑えたRC純ラーメン架構を表しにした天井レスの製造スペースとしています。
大梁のプレキャスト化、小梁の鉄骨化など、合理的かつ短工期が実現できる構造計画とするとともに、鉄骨小梁側面のカバーパネル内部を設備配線スペースとして利用する等、設備計画と一体となって、天井レス製造スペースにおける埃だまりのミニマム化を追求しています。
JR側の設備機器配管スペース(メカニカルバルコニー)の保護パネルの素材にはFRPを採用し、板チョコの形状と質感を忠実に再現しています。
FRPは仕上と構造を兼ねた自由な形状に対応可能な素材です。
熱歪によるパネルの伸縮挙動を考慮したファスナーで支持することにより、パーツクリアランスゼロを実現しています。
設備設計主旨
製造環境のフレキシビリティとメンテナンス性向上を実現するため、製造スペースと並行し、内部には各階メイン配管・配線とメンテナンス通路を内包したユーティリティーラックを設置し、外部には製造環境の変化に合わせて効率的に室外機やユーティリティ配管類を配置することが可能なメカニカルバルコニーを設置しています。
バルコニーの外側にはチョコパネルが設置され、室外機等の排熱は煙突効果によって効率的に建物上部へと導かれます。
チョコパネルはJR側からの視線に配慮するためだけではなく、社会ニーズの変化にフレキシブルに対応する製造環境をスマートに美しくサポートする機能をもっています。
防虫対策として開口部を極力無くし、安全・安心で高品質な製品をより少ない環境負荷で効率的に製造するため、外部環境の影響を最小限に抑えた安定した製造環境を構築しています。
照明の一部にはLED照明器具を採用しています。
エネルギーの見える化として、すべての幹線系統にマルチメーターを設置しています。
屋上には、工場敷地全体と等しい広さの森が吸収するCO2削減量とほぼ等しい規模となる太陽光発電パネル(200kW)が設置され、環境に優しい工場となっています。
担当
大成建設担当者 | |
---|---|
建築設計 | 下村真一、入江健二、渡辺賢、古市理、宮本晃代 |
構造設計 | 網干眞一、渡部勝利 |
設備設計 | 中田義治、石島和明 |
電気設計 | 中田義治、遠藤晃、田口英幸、加藤勇太 |
社外受賞
2011年 | 第45回 SDA賞サインデザイン優秀賞 |
---|---|
2011年 | グッドデザイン賞 |
2011年 | 「世界最大のプラスチック製広告看板」として「ギネス世界記録TM」認定 |