法然寺五重塔
- 用途:寺院
- 所在地:香川県高松市
- 高さ:25.04m
建築設計主旨
法然寺は、水戸光圀公の兄にあたる初代高松藩主松平賴重公が、江戸時代初め(1668年)に四国讃岐に開いたお寺で、極楽浄土をこの世に具現化した伽藍配置を持つ松平家の菩提寺です。
法然寺の歴史と伝統をふまえその理念である「開かれた寺院」を体現する環境づくりをテーマとし「おおらかでどっしりとした五重塔」を合言葉に計画しています。
古より受け継がれてきた木造伝統様式に現代技術を加えた和様・総桧造・本瓦葺の五重塔であり、その高さ(基壇上)を法然上人800年遠忌に合わせて800寸に設定しています。
材料はすべて吉野桧を使っており、中でも心柱に使った桧は樹齢250年の大木です。
構造設計主旨
構造設計のテーマは、「伝統構法の木造五重塔を、現代の法規定の下で如何に実現させるか」でした。
このためには構造解析が必須であり、まず伝統構法による五重塔がどのような軸組なのか理解することから開始しました。
構造検討の結果、初重の性能不足を補うため、できる限り伝統的な構法を損ねないように貫や壁板などの部材断面を大きくするなどの処置を行って、所定の性能を満足させる計画としました。
伝統構法の建物は基本的に「積み木」であり、上方向への接合部の抜けに対しては自重しか頼るものがありません。
細長く高い塔は転倒による抜けが生じやすいので、これに抵抗させるために鋼棒を塔の平面4隅に基礎から五重にわたって配しました。
なお、五重塔の特異な立面形状に対する風圧力の評価のため、模型を用いた風洞実験を行い、風力係数を求めました。
設備設計主旨
従来の投光器によるぎらつき感のあるライトアップではなく、省エネルギー技術として実効性の高いLEDを採用し品格のあるライトアップを実現しました。
二重から五重の高欄部分にライン状のLEDユニットを設置し、五重塔自身が光っているかのようなライトアップとしています。
LEDユニットは、2200K~6500Kまで色温度の異なる3色のLED素子を内蔵し、混色により微妙な色表現を可能にしています。
例えば、冬は温かみのある電球色、夏は爽やかな白色、お祭りの際には華やかな混合色とするなど季節や行事に合わせた演出ができます。
さらに、プログラムにより自動で色を変えたり調光することが可能ですので、通常時はほんのりと上品に、お祭り時は明るくしたり自動的に色を変えたりするなど状況に合わせたシーン設定をすることができます。
また、初重は地盤面からのライトアップ、相輪はポールからの超狭角投光器により、LEDと合わせて五重塔全体を照らし出しています。
担当
大成建設担当者 | |
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建築設計 | 米原芳男、松尾浩樹、水野俊 |
構造設計 | 佐藤芳久、森田仁彦、大竹克浩 |
設備設計 | 堀雄二、宮本敬介 |
電気設計 | 堀雄二、林幸広 |
社外受賞
2011年 | 香川県建築士会特別賞 |
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2012年 | 平成23年 照明普及賞 優秀施設賞 |
2014年 | 日本建築学会作品選集2014 |