ヨックモッククレア日光工場
- 用途:食品工場
- 所在地:栃木県日光市
- 延床面積:19,589m2
- 地上:2階
建築設計主旨
「森のなかにものづくりの場を育てる」
日光の森林地帯に位置する洋菓子会社の拠点工場計画であり、既存の緑豊かな自然に配慮し、省エネ・環境をテーマに次世代食品工場が求められました。
既存の杉林や広葉樹林帯を最大現保存し、将来増築に対応した敷地の活用方法を検討した結果、地域のシンボルである日光連山を顕在化して、地形をつくるように長さ200mの大壁を立ち上げ、それによって分けられた領域を従業員が交流する[コミュニケーションエリア]とお菓子を製造する[ものづくりエリア]として位置づけました。
大壁は内部に動線空間を含み、やわらかいリブ金属に覆われた外壁は敷地の緩やかな高低差や刻々と変化する自然の様相を写し取ります。
将来増築により、各エリアは大壁から垂直方向へ拡張し、やがて森と一体化した建築が顕れます。
構造設計主旨
「人のためのストラクチャーと機械のためのストラクチャー」
自然豊かな立地性を考慮し、緑地への影響を最小限に抑えるように、フロアを二層に立体化しています。
Tフレームと名付けた構造体は、上階をフレキシブルな無柱空間とし、上階の荷重を支える下階は柱スパンを半分として、小空間で構成される用途に用いています。
空間構成に適した構造架構を用いることで、効率的なものづくり環境および執務空間を形成することを可能としています。
事務空間と製造空間で同じTフレーム形式を採用しており、前者では人のためのストラクチャーとして、外周部を細柱ラーメンで構成することで、周囲の自然に開放的な佇まいにする一方、後者では機械のためのストラクチャーとして、内部のものづくり環境を外部環境からシェルタリングするため、強固なブレース構造で外郭を覆っています。
設備設計主旨
「地域のエネルギーを活用する」
居住者の快適性と省エネを両立させるために、日光の地域に固有の設備システムを採用しています。
卓越風を分析し、事務棟全体で下層から上層へと自然対流を導く重力換気システムを採用し、高天井のオフィスでは、居住領域の快適性を考慮して床染み出し空調としています。
また豊富な地下水源を利用して施設内の給水をすべて井水でまかなっているだけでなく、その年間一定温度の井水を利用した井水ヒートポンプ空調システムを採用し、空調負荷を低減するとともに、処理水を便所洗浄水や外構散水などにカスケード利用しています。
「ブルーモーメント・ライティング」
照明計画では、ヨックモックの原点である北欧におけるブルーモーメントの静寂な光をコンセプトとし、鉛直面輝度を意識したライティングにより、素材や人をやわらかく包み込む光環境を創出しています。
またトップライトやハイサイドライトによる自然採光の利用や、事務室の簡易サーカディアン照明制御、各所のセンサー発停及び高効率なLED照明の採用により省エネルギー化を図っています。
各エネルギー使用量を計測し、BEMSの導入により施設全体のエネルギーの「見える化」を図っています。
ランドスケープ設計主旨
「ヨックモックの原風景をつくる」
ヨックモックの社名の由来であるスウェーデン北部のヨックモック村、この北の大地は森、湖、オーロラなど自然豊かな美しい風景に囲まれています。
ここではこのヨックモックへの原点回帰を図るとともに計画地周辺にある豊かな自然を最大限取り込み、土着性、郷土性を基調としながら、スウェーデンの景観を彷彿とさせる調整池を取り込んだ雄大なランドアートを創出しています。
従業員や来訪者にヨックモックのアイデンティティを感じてもらうと共に自然を身近に感じる人に優しいランドスケープを計画しています。
担当
大成建設担当者 | |
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建築設計 | 下村真一、古市理、小林真弓、勝又洋 |
構造設計 | 出雲洋治、小野森司、高澤昌義 |
設備設計 | 中田義治、鈴木真吾、竹内伸介 |
電気設計 | 中田義治、根本昌徳、種市文彦 |
ランドスケープ | 蕪木伸一、木川薫 |
シミュレーション | 横井睦己、松下隆 |
社外受賞
2011年 | 第23回 栃木県マロニエ建築・景観賞 |
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2011年 | 第2回 鈴木禎次賞 |
2011年 | 第6回 イソバンドデザインコンテスト グランプリ |
2012年 | 第10回 環境・設備デザイン賞 環境デザイン部門 入賞 |