羽田空港国際線ビル駅
- 用途:空港施設(駅舎、プラットホーム)
- 所在地:東京都大田区
- 延床面積:3,592.12m2
- 地上:3階
建築設計主旨
羽田空港国際線ターミナルビルの新築、D滑走路新設を始めとする、2010年の羽田空港国際線本格化に伴い、東京モノレールの新しい国際線ビル駅を国際線ターミナルビルに新設する計画です。
国際線エリアの、「和」のイメージを想起させるデザインコンセプトに基づき、日本の自然や伝統文化のモチーフを醸し出すデザインアイテムを設定しました。
それらに基づいて、新しい駅にふさわしい外観として、駅舎主要機能とプラットホームの二つのガラスのボックスを組み合わせた透過性の高い、かつ浮遊感のある外観デザインとしています。
また、駅舎主要部分は約30mの長大なスパンを張弦梁とブレース材のハイブリッド構造である「スケルション構造」により実現しています。
軽快な構造体をインテリアのデザインの一部として見せるよう計画しました。部材のジョイント部分のディテールは構造設計と検討を重ね、デザイン性の高いものとしています。
モノレール車両はこの長大なスパンのイナミックな空間を通ることとなり、利用客の旅への高揚感をかき立てることを意図しました。また内部の設備空調ダクト等はインテリアと一体的にデザインしています。
構造設計主旨
駅舎はターミナルビルに接続する駅舎主要部とプラットホーム部の二つに分類され、駅舎主要部屋根に複合張弦梁構造であるスケルション構造を採用しています。
本構造システムは張力構造のため、初期張力を導入してはじめて構造システムが成立します。
スケルション構造は鉛直荷重処理能力に優れた張弦梁構造に、引張強度が大きく靱性に富んだタイロッド材を組合せたハイブリッド構造です。
強風時の吹上防止と地震時の水平力に抵抗する機能を兼用したタイロッド材を立体的に配置することにより、スレンダーな部材で構成される構造システムです。
これにより、透明性の高い建築デザインの代表であるガラスファサードに、構造部材を積極的にデザインの一部として見せるように計画することで、軽快感の溢れる大スパン構造を実現します。
本建物に適用した構造システムはH形鋼で形成する門型ラーメンと束材・ケーブル材を組み合わせた張弦梁構造、ラーメン方向と桁行方向の外力に抵抗する機能を兼用するため、立体的に配置したタイロッド材で構成します。
張弦梁構造で使用するケーブル材は1つの大梁に2本並列に設置しています。
桁行方向の外壁でアルミCW を配置する部分には鉛直ブレースを配置し、剛性を確保しています。タイロッド材が5本交差するポイントにボールジョイントを配置しています。
大梁と小梁で形成される格子グリッドに水平ブレースを配置し屋根水平面の剛性を確保しています。
構造部材をそのまま仕上げ材としたため、張力構造のメリットを複合することでスレンダーな部材で構成する構造計画としています。
設備設計主旨
駅のプラットホームは半屋外で外気が流入する空間ですが、モノレールを待つ乗客が滞留するためにスポット空調を行っています。
ここは4面ともガラスで囲まれており、温熱環境上は非常に厳しい空間であるため、温熱・気流シミュレーションにより最適な空調の吹出温度、吹出風量、吹出位置等を検証し、空調設備の計画を行っています。
また、環境配慮対策として、屋上に60kW出力の太陽光発電設備を設置し、建物内の商用電力の使用量低減に寄与しています。
担当
大成建設担当者 | |
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設計・監理 | トーニチ・大成・梓・PCP設計共同企業体 |
大成建設担当者 | |
建築設計 | 河野晴彦、尾島寛和、小口滋久、菅貴彦、山浦義孝 |
構造設計 | 小林祥一、大竹克浩 |
設備設計 | 大村修一、中砂克郎、渡辺英紀 |
電気設計 | 大村修一 |
シミュレーション | 横井睦己、小川剛史 |
社外受賞
2014年 | 土木学会デザイン賞 奨励賞 |
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