前川製作所新本社ビル
- 用途:事務所
- 所在地:東京都江東区
- 延床面積:9,309m2
- 地上:8階
建築設計主旨
前川製作所は大正13年の創業以来、門前仲町に本社を構え、創業当初から地域に根ざした企業として、深川地域の発展とともに大きく成長を遂げた企業です。
本計画は総合設計制度を活用した本社ビルの建替えであり、計画地の特徴としては北側に大横川があり、川に面して桜並木で有名な水辺の散歩道に面した立地環境にあります。この環境を最大限に生かした計画とするため、川空間と一体化したオープンスペースを設けることで、人の流れを呼び込み、緑、水、風を感じることのできる風景を創出しました。
オフィスは安定した採光が得られ、眺望のよい大横川に面した北側に執務空間を設置し、スケルトン天井の採用により開放感の高い空間としました。また、避難階段とは別に主要動線となる階段と打ち合わせスペースを川側に設置することで、階の異なる社内部門間のコミュニケーションを高めることに機能させています。
本社ビル建て替えにあたり、周辺地域への貢献として、
- 大横川沿いの水辺の散歩道へ敷地内を自由に通り抜けのできる 「外構オープンスペース」の提供
- 総合設計制度による容積割り増し分の床面積を、周辺地域住民が文化活動などに利用できる「地域交流施設」として設置
- 災害時には一時避難施設としての機能をはたせるよう、免震構造(ハイブリッドTASS構法)の採用と72時間電源供給可能発電機の設置、防災備蓄倉庫の設置
構造設計主旨
当建物は、巨大地震に対しても建物の安全性を保持し、損傷を最小限に抑えることを目的として免震構造を採用しています。免震方式は、弾性すべり支承と天然ゴム系積層ゴム支承を併用するハイブリッドTASS構法とし、1階床下に設置しています。
また、巨大地震時に地盤の液状化が生じる可能性があるため、免震周期を長周期化して、適切な減衰性能を設定することにより地震応答の低減を図っています。
短辺方向は、1スパン架構となっていますので、柱に充填鋼管コンクリート構造(CFT構造)を採用して、建物剛性の確保を図っています。
2階床構造として、球体ボイドスラブ+吊り柱による床構造を採用して、小梁およびX方向の大梁の存在しない空間を実現しています。このことにより、1階駐車場部分の有効天井高さを確保しています。
設備設計主旨
「外部環境」、「省エネルギー」、「内部環境」を基本コンセプトとして設備計画を行っています。
脱フロンを目的として、空調用熱源の冷媒はすべて自然冷媒のアンモニアを、給湯用熱源として二酸化炭素を採用しています。
熱源機器は浸水対策および面積効率を考え、すべて屋上設置としています。
外部環境への熱放出を少なくするため、現場打ち杭の周囲にチューブを打ち込み、地中熱を有効に利用できるシステムとしています。
製氷チラーおよび製氷器により冷却したスラリー状のブライン(氷水)を夜間電力を使用して貯氷槽に蓄え、昼間に氷水を直接、外調機に送水する氷水搬送方式を採用しています。また氷水搬送により、送水動力の低減および外調機の除湿能力アップによる室内環境改善を可能としています。
事務所基準階は、通気性カーペットを用いた全面床吹出方式(T-Breeze Floor)を採用し、一般的な床吹出口による不快なドラフトを防止しました。
これらの成果により、CASBEEはSランク(自己評価)を実現しています。
担当
大成建設担当者 | |
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総括 | 河野晴彦 |
建築設計 | 田中勉、渡辺岳彦 |
構造設計 | 田中勉、小林治男 |
設備設計 | 角田宣彦、安藤一成 |
電気設計 | 小林信郷、箭内伸司 |
社外受賞
2009年 | 日本建築士会連合会賞優秀賞 |
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2009年 | 第22回 日経ニューオフィス賞 |
2010年 | 日本建築学会作品選集2010 |
2010年 | 東京建築賞建築作品コンクール 東京都知事賞・最優秀賞 |
2010年 | 第21回 電気設備学会賞技術部門施設奨励賞 |
2010年 | 第10回 日本免震構造協会賞作品賞 |
2010年 | 第36回 日事連建築賞 一般建築部門優秀賞 |
2010年 | グッドデザイン賞 |
2011年 | 第4回 サステナブル建築賞 事務所建築部門 建築環境・省エネルギー機構理事長賞 |