ホテル&スパリゾート ラビスタ函館ベイ
- 用途:シティホテル
- 所在地:北海道函館市
- 延床面積:17,069.73m2
- 地上:14階
建築設計主旨
北海道最古のレンガ建築として、開拓使常備倉(米の備蓄倉庫)がこの地に誕生したのは明治7年。その後、幾度かの罹災に遭いながらも崩れたレンガを積み直しては再生を繰り返し、120余年もの歳月を逞しく生き抜いてきた赤レンガ倉庫が、ホテルとして息を吹き返しました。
レンガ壁を保存、再生しながら、旧倉庫のボリュームを再構築した低層部と、切妻屋根の連なりや雁行する壁面により景観との調和を計った高層部とが、港街の新たな風景を創り出しています。
レンガ壁の保存部分はRC壁でバックアップする工法を採用し、再生部分は解体したレンガをひとつひとつ丁寧に清掃して再び積み直しました。また、既存倉庫の鉄扉や木製トラスの一部も再利用することで、内部外部を含めて、かつての赤レンガ倉庫の記憶を留めています。
遠景のシルエットとしてのポイントでもある露天風呂の切妻屋根は、有孔折板を応用したルーバー仕様とすることで、景観と積雪時の安全性との両立を実現しました。
恵まれた立地条件を活かし、客室のワイド&ロービューのパノラマウィンドウや露天風呂からは、函館湾と津軽海峡を臨む函館随一の絶景を存分に味わうことができます。
構造設計主旨
主要構造部を鉄筋コンクリート造のラーメン架構で計画することにより、居住性に優れた客室空間を作りだしています。
函館半島の中ほどに位置し潮風が吹きつける立地条件であることから、耐久性にも十分に配慮した計画としています。
一部客室のロングスパンとなる大梁をプレストレス梁とすることで、梁せいが大きくなることなくゆったりとくつろげるスペースづくりに貢献しています。
自然と景観を楽しむことのできる露天風呂の屋根は、開放的で軽快なものとするため、鉄骨のフレームで構成しました。基礎構造は、当敷地の地盤に適した高支持力既製杭が建物をしっかりと支えています。
風雪に耐えたレンガ壁の保存部分は、鉄筋コンクリート造の壁で補強されて生まれかわり、赤レンガ倉庫群の街並みに連なっています。
設備設計主旨
ホテルとしての快適性能を確保しつつ、省エネルギー性能・ランニングコスト低減を考慮して設備計画を行いました。また、将来の設備更新にも配慮した計画としています。
中央熱源方式の空調システムを全館に導入することによって、静粛で質の高い室内環境を実現しながらも、客室には省エネルギースイッチを導入して不要な電力・空調エネルギーの削減を行えるシステムとしました。
本建物の最大の特徴は、最上階に天然温泉を利用した展望浴場を配置していることであり、加水なし賭け流しの温泉を、最小限の温泉水利用で実現し、露天風呂・壷湯などの様々な浴槽の温度・水質管理を効率の良い方式で実現しました。また温泉の泉質は非常にスケールの溜まり易い扱いの難しいものでしたが、スケール抑制剤の導入や2重配管化などによりホテル運営を継続したまま維持管理が可能なシステムとしました。
インテリア設計主旨
異国情緒の街、函館。横浜・長崎と並ぶ日本初の貿易港としての歴史が、この街の形成に色濃く反映されています。
点在する明治・大正期の洋館建築やレトロな装いの蔵や古民家、赤煉瓦倉庫群のノスタルジックな佇まい。ラビスタ函館ベイは、歴史を感じる街並を散策したのちにたどり着く宿として、古き良き時代の情緒そのままに過ごせるホテルを目指しました。
内装はパブリック・客室・大浴場に至るまで一貫して、西洋文化と日本文化が混在した「和魂洋才」をコンセプトとしています。特に客室は、靴を脱いでくつろぐ床座の生活や窓辺の堀炬燵式カウンターなど、日本人の生活観を「擬洋風アールデコ」で包んだ独特のスタイルを提案しています。
最上階の露天風呂では壮大なパノラマと、より和の趣の滲み出たしつらえが心身を癒します。利用者の視点に立ったスタイルとレトロなエッセンスが、函館らしさと上質なくつろぎを創出しています。
担当
大成建設担当者 | |
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総括 | 町井充 |
建築設計 | 桜本啓三、高橋秀秋 |
構造設計 | 勝田庄二、山崎英一、中田さとみ |
設備設計 | 御器谷良一、佐藤大樹 |
電気設計 | 御器谷良一、西村英俊 |
インテリア | 高橋洋介、徳野博子 |
社外受賞
2010年 | インテリアプランニング アワード2010優秀賞 |
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