横河電機 金沢事業所
- 用途:研究所、工場
- 所在地:石川県金沢市
- 延床面積:12,464.23m2
- 地上:2階
建築設計主旨
加賀百万石の時代に培われたものづくりの町金沢。当施設は、高度な技術研究を行う大学や企業が集中しているこの地に、産官学の共同研究を含む研究開発から生産、サービスに至るまでものづくりを「一気通貫」出来る施設として計画されました。
研究の柱は、人の発する非常に微弱な磁場を計測する装置、システムの開発であり、高度医療をはじめとするさまざまな分野への発展が期待されています。
計画では、最高水準の電磁シールドに加え、非磁性体ステンレス構造を採用。配置においては、大きな磁性体である車両が、容易に主要な研究室に近づかないように水面による緩衝空間を設けることで、磁場の影響を受けやすい繊細な研究開発をサポートしています。
プランニングでは、各機能を明快かつシンプルな分棟構成とし、それらを繋ぐ移動空間に水や緑を貫入させ、研究者同士のみならず官学を含む他部門の人々が集い、語らい、休憩し、交流できる空間を提供しています。
季節の移ろい、太陽の移動、天候の変化、夜間照明により、センシティブな変化を見せる水辺の空間は、創造性、発想を喚起する「偶発的なコミュニケーションの場=インターアクションスペース」として、施設機能上重要なファクターであり、当施設で行われる繊細な研究開発を連想させる空間です。
構造設計主旨
機能別に分かれた4つの建物を結ぶ水辺の回廊と、建物外周4面を全てガラスサッシュとした事務棟は、繊細な研究を印象づける列柱のシャープなイメージを活かすよう、サッシュと同等の見附幅(75mm~100mm)の柱としています。また、長さ120mを超える列柱の垂直性を強調するよう、外周梁を柱から建物内部にオフセットさせた架構計画としました。地震力は、剛性を高めた屋根面ブレースにより内側のコアフレームにまで伝達する計画ですが、リダンダンシーを確保するために、外周フレームでも一定の支配面積分水平力を処理できる部材断面としています。
開発・製造環境の重要性能として、1.嫌振機器の防振対策、2.微弱な磁場を計測するための非磁性空間、の要求性能がありました。1については微振動計測とシミュレーション解析により、要求振動性状を満足することを確認しています。2についてはステンレス鉄骨とステンレス鉄筋の採用により、非磁性の要求性能を満足させています。
設備設計主旨
設備計画においては、「環境配慮」、「快適性」、「省エネルギー性」、「実験研究の効率化」に特に重点を置き、様々な設備技術を提案しています。
地下トレンチピットに外気を取り入れ地中熱と熱交換することで空調負荷を軽減する「クールピット」、自然通風を開閉窓により行う「自然換気システム」、執務室内の居住域に快適な空調を提供する「通気性カーペットを用いた床吹出空調(T-Breeze
Floor System)」、窓ガラスとブラインド間の夏季の熱溜りを外部へ排出する「簡易型エアフローウィンドウ」、池の循環系統に熱交換器を設置し、生産用冷却水の一次冷却を行う「自然エネルギー利用冷却システム」、「電磁/磁気シールド室」として60dB、30dBシールドルームおよび発生する強磁場を室外で5ガウス以下に抑制する電磁シールド室を実現しました。
担当
大成建設担当者 | |
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建築設計 | 芝山哲也、小林直明、関政晴、杉江大典、片瀬順一、坂口秋一 |
構造設計 | 篠崎洋三、新谷耕平、萱嶋誠 |
設備設計 | 加藤美好、福田浩 |
電気設計 | 加藤美好、三宅伸幸 |
ランドスケープ | 蕪木伸一、藤澤亜子 |
社外受賞
2006年 | 第19回 日経ニューオフィス推進賞環境賞 |
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2006年 | グッドデザイン賞 |
2007年 | 第29回 金沢都市美文化賞 |
2007年 | 北陸建築文化賞 |
2007年 | 第35回 日本建築士会連合会賞 奨励賞 |
2007年 | 第28回 石川建築賞知事賞 |
2007年 | 第6回 AACA賞芦原義信賞 |
2007年 | 第39回 中部建築賞 |
2008年 | 日本建築学会作品選集2008 |
2009年 | 第50回 BCS賞 |