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WORKS 2005

日本経済新聞社西部別館

用途:日刊新聞印刷工場
所在地:福岡県福岡市東区
延床面積:10,331.79m2
地上:3階

建築設計主旨

日本経済新聞社が全国で推進する新聞紙面48ページ化の九州地区での展開、加えて既存工場の老朽化による更新を目的として新設された工場です。博多湾、都市高速、由緒ある筥崎宮が近在し、都市的スケールの広がりやダイナミズムを知覚できる計画地です。
配置計画では工場部門と事務厚生部門とを機能別に分棟化し、そのメリットを最大限活用して各機能の向上と最適化を図りました。
工場棟は生産機能の合理的なレイアウト、高機能化をコンパクトな平面計画にて実現しております。
事務厚生棟は、分棟化による工場からの騒音・振動の伝播防止により、深夜勤務時に利用される仮眠休憩室がホテル客室と同等の静粛性を実現するなど、各諸室の快適性を大きく向上させる計画としております。
周辺環境との関係においても周辺の都市軸を意識した分棟配置により、博多湾への眺望の確保、都市高速への広告効果、主動線となる正面道路に対する端正で印象的なファサード等を同時に実現することが可能となりました。
ランドスケープも本計画で大きな役割を果たしております。敷地正面に配置されたフェンスを廃したマウンド状の緑地帯は、緑化によるエコロジー効果、地域に開かれた工場の演出、ゲートとしての機能を有しております。樹種については、地域性及び臨海地区を考慮した選定を行い、加えてシンボルに桜の木を多数植樹しております。成長した暁に現れる豊かな桜並木が、工場内勤務者及び近隣住民へ安らぎを与えるものと期待します。

構造設計主旨

新聞印刷工場において構造に要求される性能として、生産機器を効率よくレイアウトするための空間自由性と、輪転機稼動時の騒音に対する各諸室への遮音性の確保が挙げられます。
耐震性能を確保しつつこれらの要求性能を満足する構造形式として、コアとなる輪転機室部分は遮音性及び耐震性に優れたRC壁を配置した「鉄筋コンクリート造」と、外周部分は生産機器諸室に要求されるロングスパン化を可能とする「鉄骨造」の複合構造を採用しました。また輪転機稼動時に発生する振動の伝播防止対策として、輪転機を据付けるコンクリート基礎と本体建物の躯体の間に防振ゴムを挟み縁を切る方法を採用し、他の諸室への高い遮音・防振性能を確保しております。
先に発生した福岡西方沖地震においても、高い耐震性及び工場機能性を確保した建物であることが実証されました。

設備設計主旨

建築設備に要求される代表的な機能は、「生産環境の精密な温湿度管理機能」と「インフラ途絶時での新聞発行の継続を可能とするバックアップ機能」です。
新聞印刷の核となる輪転機は、稼動時に非常に大量の熱と水分を発生し、生産室内環境を大きく変動させます。一方、印刷に使用する超軽量紙や他の精密な印刷機器は、高い印刷品質を確保する為にデリケートな室内の温湿度管理を必要とします。相反するこの条件を両立させる為に、過去の設計・施工実績をベースに、輪転機等の生産機器周辺に吹出口、吸込口及び誘引型ファンを合理的に配置し、省エネルギー化と良好な室内環境を両立する空調システムを構築しました。
バックアップ機能としては、高圧2回線を別変電所より受電し停電を極力防止すると共に、万一の停電時にも新聞印刷が可能となる発電機を実装しております。又、重要諸室の空調機の故障時に備え空調機間にバイパスダクトを設置し、空調機間で相互にバックアップを行い工場稼動に支障を与えないシステムを構築しております。
更に今回は海に隣接する計画地であることから、塩害対策が要求されます。対策として密閉式冷却塔や除塩フィルターの採用、発送コンベア経路へのビニールカーテンの多重設置、室内の正圧維持等により、建物内への外気及び塩分の侵入を防止しました。

担当

担当
コンストラクションマネージメント 株式会社三菱地所設計
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
大成建設担当者
建築設計 畠山卓也、飯吉厚太、村瀬宏典
構造設計 篠崎洋三、渡辺征晃、堀井良浩
設備設計 安藤一成、板橋正弘
電気設計 吉永實
ランドスケープ監修 蕪木伸一、山下剛史