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WORKS 2005

日本平デジタル放送所

用途:放送所
所在地:静岡県静岡市
延床面積:1,037.78m2
地上:2階(局舎)
放送塔の最高高さ:95.5m

建築設計主旨

静岡県の地上デジタルTVの拠点として在静のNHK及び民放各局が共同使用する放送所です。東海地震時にも放送を確保する高い安全性と、国指定名勝地および県立自然公園である建設地;日本平山頂の景観との調和がテーマとなりました。
従来のトラス鉄塔から脱却し、耐震性に優れたCFT構造と多段アンテナステージにより、嘗て久能山東照宮に建立された五重塔の歴史的記憶と新時代の技術の融合を表現しました。
CFT構造に加え制振装置を設置し、強風時にも安定した放送を維持します。
また、メンテナンス階段とケーブル設置スペースは有孔鋼製床材を応用して囲い、物理的・視覚的に安全性を高めています。
接地部分には、セキュリティの確保と周辺の芝生公園への落下物対策および風の影響を低減させるため、円形の縦張ルーバーで足元を囲み、タワーとのデザインの一体感も表現しました。

構造設計主旨

剛性・耐力および靭性に優れたCFT柱を主体構造とすることで安全性と経済性を兼ねたシンプルな架構計画とし、景観に配慮した従来に無い新しいタワーのデザインを実現しました。タワー中心には心棒となる直径2100mmのCFT柱を通し、また、より大きな力が作用する下層部には柱梁フレームからなるアウトリガー構造を併用することで合理的に外力に抵抗できる架構としています。アウトリガーフレーム内にはメンテナンス用の昇降階段およびケーブル類を敷設するスペースとして有効利用を図っています。
タワーのデザインを特徴づけているアンテナステージは、薄肉のスチールプレートを円周方向と放射方向に井桁状に組むことで剛性を高め、約3mのキャンチレバーを実現しました。
タワー頂部には制振装置(TMD)を設置し、アンテナ部の風揺れを更に低減することで放送用タワーとしての機能維持を図っています。

設備設計主旨

静岡県の地上波デジタル放送の全チャンネルを無人で24時間365日継続する為に、電源設備や空調設備は多重化し、安全性を高めました。発電機は10秒始動、空調機は自動復旧機能や瞬停対策品とし停電時も速やかに機能を維持できるようにしました。発電機電源への切替は、完全自動で行う他に、静岡市内の7社の放送局から遠隔で操作可能とし、特殊シーケンスプログラムで操作ミスに伴う停電を防ぐようにしました。
山頂かつ海に近いという厳しい自然環境の為、建物内への外気取り入れは、最小限とし、取り入れ部は建築的なチャンバースペースを設け、室内への浸水と昆虫類の侵入を完全に遮断するようにしました。放送機室や電源関連室は、水を使わない窒素ガス消火としました。落雷時の放送機器保護対策として、地中のメッシュアースに加え放送用ケーブルラックに銅板を敷設し等電位接地としました。さらにA、B、D種接地も接続して統合接地システムを構築しました。
タワーの昼間標識(赤白の縞塗装)を避ける為に、航空障害灯は中光度白色とし、タワーの色彩デザインの自由度を高めました。

担当

担当
設計 (構造設計除く) 大成建設株式会社一級建築士事務所
構造設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
エヌティティファシリティーズ
大成建設担当者
建築設計 (大成建設)大原信成、池澤孝哉、渡辺健吾
構造設計 大成建設)篠崎洋三、藤山淳司
(エヌティティファシリティーズ)柳井正
設備設計 (大成建設)出野昭彦、鈴木真人
電気設計 (大成建設)出野昭彦、佐藤文明

社外受賞

2005年 グッドデザイン賞