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WORKS 2005

銀座寿一会ビル

用途:診療所(眼科)
所在地:東京都中央区
延床面積:598.36m2
地下:1階/地上:10階

建築設計主旨

当建物は、名古屋を中心に眼科を開業されているクライアントの東京の拠点として、有名ブランドがひしめく銀座の街に計画されました。
銀座地区の建築制限の緩和により生まれた高さ方向へのゆとりと、狭隘ながらも周囲からの視認性が高いと云う敷地の特性を生かし、最新の構造技術や設備技術を活用することで、ペンシルビルでこそ生み出せる豊かな空間を追求しています。
高さ方向のゆとりを生かして、「オフィスフロア」には5.6mの階高を与えています。これにより2本の避難階段をX階段で組み込むことが可能となり、コンパクトなコア構成を実現しています。また、限られた床面積を有効に活用するため、WCなどの水廻りを集約した「ユーティリティフロア」を、その上下の「オフィスフロア」から利用する効率的な空間計画としています。
これらの工夫により、天井高4.3mの開放感ある眺望を存分に享受できる豊かな「オフィスフロア」と、天井高2.3mのヒューマンスケールの落ち着きを感じさせる「ユーティリティフロア」を実現しています。
「ユーティリティフロア」の外部テラスは、ともすれば不安定に感じられる塔状の建築ボリュームに、規則的な分節のリズム感による安定感をもたらしています。ガラスボックスが積層されたように見える外観は、銀座の街並みの中に、端正でシンボリックな存在感を示しています。

構造設計主旨

この建物は、7.8m×8.4mの平面形状に対して、最高高さ47.8m、アスペクト比で6.2と云う極めてスレンダーな形状をしています。この超高層ビルを超えるプロポーションを安全に支えるため、風や地震による建物の変位を全て1階部分に集約し、これを制振ダンパーで減衰させて揺れをコントロールする、「ソフトファーストストーリー制振構造」のシステムを開発しました。
2階以上の構造体は、3層1組の350mm角の「斜め柱」で構成された三角形フレームとすることで、居住性に影響を与える建物変形を抑えます。そして、1階の四隅の柱を高強度鋼材の密実断面による柔らかな柱(240mm角)とすることで、これらの変形を、ここに意図的に集中させます。この建物挙動を制御するための、「ハードニング型オイルダンパー」は、今回の建物のために、新しく技術開発されました。
この新しい制振システムは、従来のものに比べて、中小規模の地震や風揺れの際の居住性を改善し、また、大地震時においても高い安全性を確保することのできる、優れた構造方式であると云えます。

設備設計主旨

コンパクトにまとめられた設備システムが、高さを生かした豊かな居住空間の実現をサポートしています。
天井高4.3mと云う大きな空間気積の「オフィスフロア」では、穴空きOAフロアパネルと通気性タイルカーペットを組み合わせた「全面床吹出空調システム」を採用することにより、居住域に限定した効率的な空調を行います。
開放感をもたらす大きな外装ガラスにはLow-Eペアガラスを採用することで、外気温による室内空調負荷を最小限に抑制します。また、ペリメーターでは、天井吸気口と空調床吹出しスリットによる「簡易エアフローシステム」を形成することにより、夏場の天井熱溜まりと、冬場のコールドドラフトを解消します。
室内の照明は、高い天井面を活用した「間接照明システム」とすることで、室内全体に渡り均一な照度環境を実現しています。ランダムに配置された照明器具は、室内に均質な光をもたらすと同時に、街路から見上げた夜景に躍動感ある光の演出を添えています。

担当

担当
コンサルティング 祥設計株式会社 Dr.コパ(小林 祥晃)
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
サインデザイン協力 株式会社矢萩喜從郎建築計画
矢萩喜從郎
家具デザイン協力 株式会社シモンガヴィーナ・ジャパン
津川 恕之
大成建設担当者
建築設計 芝山哲也、中川雄一朗、中塚大介
構造設計 早部安弘、渡邉祐一
設備設計 鈴木真人
電気設計 三宅英司