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WORKS 2003

杉乃井ホテル大展望露天風呂『棚湯』

用途:温泉保養施設
所在地:大分県別府市
延床面積:1.785.17m2
地下:1階/地上:1階

建築設計主旨

市内を一望する高台に建つ杉乃井ホテルは別府を代表する老舗ホテル。新しくなった経営・運営体制のもとホテル再生計画がスタートし、老朽化したスギノイパレス夢の温泉の跡地に新しい温泉大浴場が誕生することとなりました。
西日本最大級の規模となる当浴場の最大の特徴は、棚田状に広がる露天風呂”棚湯”から別府湾を見下ろす絶景にあります。
計画にあたり、まずここの恵まれた立地条件を最大限に活かし切ることを最優先と考えた上で、『地になじむ』、『時になじむ』、『心になじむ』ことを大切にし、開放感溢れる絶景を満喫しながらゆるやかな時の流れにひたれる場所づくりを行いました。
配置動線計画では、期待感を高めるアプローチや湯上り後の余韻をくつろぐ空間の中にできるだけ多くの自然を取り込み、気持ち良い風景を連続させることで、長く高低差のある動線がシークエンスの変化を楽しめるものとなるよう心がけました。
訪れた人々にとって、身も心も洗い流されるような時間と場所をつくるように心掛けました。

構造設計主旨

温泉地での耐久性を考慮し、鉄筋コンクリート造としました。
デザインや機能的な要求を実現するための架構計画の特徴は以下に示す通りです。
大屋根はシンプルな形状で広がりのある空間を確保するため、折板構造としました。切り妻部の壁も梁のない板構造とすることで、屋根全体を平滑な面で構成できています。この板要素で構成された大屋根とこれを支持する偏平片持ち柱との接合は、スラスト力や地震力をダボ筋のみで伝達させることで、柱の上に屋根が置かれただけの軽快な納まりを実現しています。また、屋根は最大スパン12mを厚さ180mmのスラブで実現し、経済的な計画となっています。
脱衣場等が配置された陸屋根部分は大屋根を強調するためにできるだけ目立たなくする必要がありますが、この部分はフラットスラブ構造としました。梁のない構造計画に加え、キャピタルがない部分を設備配管スペースとして利用することで階高を抑えることが可能となっています。

設備設計主旨

20浴槽、延べ527m2のパノラマ大浴場の給水は、敷地内の沢の水を利用した自家水、給湯は、地熱蒸気と高低差を利用しており、地域性を生かし、敷地内の自然エネルギーを最大限利用した設備計画となっています。
照明計画は、間接照明、水中照明により、安全性を考慮しつつ、別府湾の眺望の妨げにならないよう配慮しました。また、妻面をライトアップすることにより、存在感をアピールできるものとしています。

担当

大成建設担当者
総括 阿部俊一
建築設計 松本哲弥、高橋秀秋、杉原真紀
構造設計 関清豪
設備設計 黒田信行
電気設計 西村英俊
計画 野沢弘樹、矢口智子

社外受賞

2004年 第29回 日事連建築賞優秀賞