石膏ボード工場見学
- 協力:吉野石膏株式会社千葉第3工場
大塚 隆光(建築)
2009年入社
今回、吉野石膏の工場見学に臨む前に予習を行った。石膏ボードといえば「タイガーボード」と言われるほど一般化している商品がある中で、石膏関連だけでも様々な建築用製品を扱い、他にもロックウール化粧吸音板やセメントボード、スラグ石膏板等を扱う中で、建築用以外でも肥料や中性土壌改質材、歯科・医療等の製品も幅広く扱っている会社である。
吉野石膏の石膏ボードは、不燃性、防火性、耐火性、遮音性、断熱性、施工性、寸法安定性と何をとっても優れた特徴をもつ中で、建築空間には欠かせない建築用の製品である。そんな商品の製作が生で見られるのは、今後の業務を行っていくに当ってとても重要な事であると思う。何か新しい設計の形が生まれることも期待しつつ、この機会を通して、インターネットやパンフレットからは見られない製造工程や原料について深く知りたいと感じた。
見学に訪れたのは、吉野石膏株式会社第三工場という2007年12月竣工の最新の巨大施設である。この第三工場では、原料供給から製造、出荷までの一貫した生産システムが売りで、地球環境を考慮した設計による最新鋭製造設備が整っていると謳われている。当日は運が良く、ちょうどタイから貨物船が来ていて、天然石膏を降ろす姿が見ることができた。吉野石膏では、天然石膏をオーストラリア、タイ、メキシコ等から輸入し、化学石膏に関しては国内で出た排煙脱硫石膏や回収石膏ボードからの原料石膏を獲得している事が分かった。
その後見学では、天然石膏の保管されている倉庫の見学はできなかったが、石膏の焼成粉砕装置や貯蔵タンクの見学を行った。次にボードの生産ラインを見学し、そのベルトの長さは500mで世界最速のスピードラインを誇る製造ラインである。その長さもさることながら何よりも驚いたのは、こんなにも簡単にできてしまうのかと言う程単純な製造ラインであった。人も少なく、機械によってほとんど作業はできてしまっていた。ガラスやサッシのように特別な形や見え方の発注があるわけではないので、とても簡単な流れであった。
会社から設計者へのお願いとしては、なるべくスタンダードなサイズで設計してほしいとの事でした。代表的なタイガーボードの製品規格寸法は厚さが(9.5mm、12.5mm、15.0mm)であり、大きさは(910mm×1,820mm、910mm×2,420mm、910mm×2,730mm、1,000mm×2,000mm、1,220mm×2,440mm)である。これを頭に入れながら設計をする事が、コスト面においても製造する側にとっても重要であると感じた。補足として、今までの最大寸法の事を質問させて頂き、4,000mmという話を聞くことができた。そこまで大きくするメリットはなく、繋ぎ合わせればいいということが分かり、今後の勉強になった。
工場を後にし、総合性能試験センターにて総合音響試験室と耐火性能試験炉の見学を行った。この施設は大成建設にて設計施工された試験施設であり、総合音響試験室に関しては世界一と言われる実験施設である。ここで性能確保が確実となったもののみを公的機関での認定試験を受験し、国土交通省の認定を取得している。このような世界最高水準の試験施設を有し、大きな製造ラインを備えている所から多くのシェアを確保し、様々なニーズに対応できることで更に大きな信頼を確保しているのだと感じた。