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TRAINING PROGRAM / STUDENT SQUARE

家具製作所工場見学

協力:株式会社三越環境デザイン

丹羽 貴之(建築)
2008年入社



三越環境デザインの家具工場を見学して印象に残ったのは、工房のような暖かさを感じる作業空間と、近隣への配慮の精神、また家具の製造方法へのこだわりである。

今回見学した工場と、過去に見学した他の建材を作っている工場との違いは、作業空間に一歩足を踏み入れた途端に実感することができた。床の仕上げが木なのである。

小学校の校舎が懐かしく思い出されるような木の床は、どんな工場にも置かれているような愛想のない作業用デスクや椅子が並んでいる様子さえも、なんだか可愛らしい風景に変えてしまう。工場の方の話によると、コンクリートで作ってしまおうという話もでたが、こだわって木の床にしたらしい。金額的にはかなりアップになったそうだが、働いている方々もとても快適そうに見えたし、何よりも職人の方が丁寧に木を削りながら家具を作っている、そんな風景に相応しい、この工場ならではの仕上材の選択のように思えてとてもよかった。

工場の立地に目をやると、この工場が住宅やマンションに囲まれた敷地に建っていることが分かる。これも過去に見学した工場が、郊外の工業団地において周囲を広い空地に囲まれながら建っていたことと対照的だった。この立地環境に対して、工場側がどう考え、具体的にどんな対策をとっているか、貴重な話を聞くことができた。

まず壁の厚さ。外壁のコンクリートの壁厚を200mmとすることで、工場内の作業音が外部に漏れるのをなるべく防ごうとしている。また塗装の際の塗料やその匂い、木を加工する際に発生する木のくずといった、作業の過程において発生する微小な排出物が周辺に霧散していくことを防ぐための建築的な対策がとられていた。特に印象的だったのは木のくずを工場内において集め、圧縮してブロック状に加工して廃棄していたことである。木くずでできたブロックは圧縮具合によって硬さも多様で、これなら廃棄しなくてもソファのクッション材や内装材等に使えないものかと思った。

工場ばかりに目をとられていたが、肝心の家具の作られかたも他の建材との比較において特徴的だった。他の建材、例えばガラスにしても陶器にしても、作業する人が担当するのは基本的に全体の中の一つの工程である。一つの建材は完成までに工場内で多くの人の手を経ることが基本だった。しかし家具工場においては一人の職人さんが一つの家具を担当することが基本らしい。木取、接着、切断、穴あけ、組立、塗装といった一連の工程を一人の職人さんが担当するという方式で家具は作られており、一人前になるには10年はかかるという。
また一人が一品一品を担当するという話を聞くと、流れ作業を見慣れた目には効率を度外視しているかのように映るが、決してそんなことはなく。むしろ工場で何もしない時間を過ごす人が減り、効率的なのだという。実際、効率を貪欲に求める意欲は話の端々から強く伝わってきた。トヨタ方式やフォード方式を比較に出すなど、働き方に対するリサーチが綿密に行われており、どこか牧歌的な工場内の様子とのギャップが面白かった。

生産設備を自分達で作ってしまったり、働き方をリサーチしたり、まさに働き方や生産設備に合わせてモノをつくるのではなく、目指すモノをつくるために、働き方や生産設備をデザインするという三越環境デザインの根底にある強い精神を感じた。