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TRAINING PROGRAM / STUDENT SQUARE

デザインディテール研修

課題:オランダの某警察署

中野 弥(建築)
2006年入社



今回のディテール研修は、挑戦しがいがあり、また建築の細部について多くの時間を割いて考えさせられる有意義な時間を過ごすことができたと思います。実際に見学して空間構成を肌で感じるという事も重要ですが、今回の研修では擬似的ではありますが、違った建築の見方・空間体験というものを開眼させられたように思います。

今回の課題についてまず考えたことは出題者からのヒントについてでした。

  1. 「寒冷地であること」
  2. 「構造を考えること」

この2点について、それが何を意図しているのか、考えることからスタートしました。

まず、「寒冷地であること」ですが、写真ではほとんどの外壁がプロフィリットガラスでつくられていることとは相反するように思えました。プロフィリットガラスは当然シングルで使う場合とダブルで使う場合のパターンが考えられ、当然後者は熱効率的に有利であることは明確です。そこでダブルのプロフィリットガラスであろうと想像し、ここから次の思考へと移行しました。それは隅部のディテールです。写真では判別しにくいですが、ダブルで使うプロフィリットでは、外部と内部のプロフィリットガラスを同一面に収めようとすると、自ずと壁厚が決まってきます。プロフィリットガラスについて調べると半割の収まり例も出ていますが、綺麗に収めることができるのであれば施工も容易であるし、何よりも壁厚に意味が出てくると考え、322mmとしました。

このプロフィリットガラスによって決まった壁厚に対し、次に考えたことは構造形式でした。この問いに対しては、多くの時間を割き悩みました。与えられた平面図ではRC造のようにも見えるが、コアの部分の柱が細すぎる。断面図では、有孔の鉄骨のような梁が見えるのでS造にも見える。この問いに対して出した結論はRC造でした。壁厚が300mm程度であれば平面図に見られない柱というものを壁式RC造とすることで消すことができるのではないか、という考えでした。

正解はコンクリートブロック造という日本には馴染みのないものでしたが。話がそれますが、エンパイヤーステートビルの内壁はれんがでできており、老朽化から仕上げが剥離したレンガの赤い面が内部からは散見できます。一時は世界一の高さを誇った超高層ビルでさえ、そのような作られ方をするのですから、海外の建築は日本のものとディテールでどれほど違うのか、興味が湧きました。

次に窓廻りのディテールを考えていきました。注目したのは、室内側のロールブラインドと室外側のブラインドの収まりです。ファサード全体としての考え方として、地域に開かれた警察署としての透明性を象徴する面としてプロフィリット面は定義され、またその透過性を利用し採光を取っており、窓面は通風を確保するための開口であると考えました。この考えからプロフィリット面での遮光はロールブラインド、警察署の秘匿性から必要時に視線をさえぎるためには、外側ブラインドであると考えました。しかし、ここで大きな問題は外側のブラインドの保護をどうするか、という事でした。写真では、一般的なブラインドであるように見えたので、これを雨ざらしにするだろうかという疑問に当たりました。3重サッシにすると通風が取れないですし、かといって保護する方法が見当たらない。結局ブラインドボックスを壁厚いっぱいまで取り、深さもできるだけとることで、この疑問に答えた収まりとしました。

今回考えることのできた範囲は主にここまでであり、断熱のまわしかたについては甘い所が多々ありました。しかし、前述した通り実際にディテールを写真から見て書くというのは、とても刺激的な体験であり勉強になりました。機会があれば、再度チャレンジしたいと思っています。