2021.12 日本建築学会技術部門設計競技に当社案が優秀賞を受賞
2021年度日本建築学会技術部門設計競技「新時代のレジリエント建築・都市」において、当社が応募した「都市の方舟 -災害と共に成長する建築-」案が優秀賞を受賞しました。
日本建築学会企画運営委員会レジリエント建築タスクフォースが主催する当競技は、災害に対するBCPの観点から建物の機能維持・回復(レジリエンス)性能の向上に対する創造的な建築の提案を募集するものです。
主旨(募集要綱より抜粋)
レジリエンスとは「厳しい環境変化を乗り越えるしなやかな力」であり、昨今さまざまな大規模災害に見舞われる我
が国の地域社会において、災害から命を守ると同時に被災から速やかに回復することのできる建築や都市が切実に求
められている。
幾重にも重なり合うリスクや危機と向き合いながら、持続可能な社会を実現していくために求められる新時代のレジリエント建築・都市の提案を期待したい。
一般社団法人日本建築学会:
https://www.aij.or.jp/
都市の方舟 -災害と共に成長する建築-(優秀賞)
提案メンバー:
清水悟、浅野剛史、影山真平、松本健一郎、丸山智也、川崎賢哉、小畠忠久、遊佐大智、定留正弥(大成建設設計本部)
谷翼(大成建設技術センター)
※クリックすると動画が再生されます。
被害が拡大する浸水想定地域
近年、日本各地で台風や集中豪雨による、水害が増加している。
東京都の江東5区標高の低い土地が多く、特に河川沿いの地域では最大浸水想定が5mを超える地域もあり、水害時の避難施設の確保が必要となっている。
フェーズに対応する柔軟な建築
レジリエンスを水害時のフェーズに対応できる柔軟さと捉える。
日常時は地域の拠点として機能しながらも、水害時は浮くことで建物自体が被害を受けないことで建物機能を早期に復旧する事ができる。
また、想定以上の水位にも対応できる。
復興時は浮上することでできた空間を活用することで、被災者の一時的な支援拠点となる。復興拠点としての役割を終えると、増床することで、避難施設としての規模を拡張するサイクルを生み出す。
従来、災害発生による機能の低下をいかに減らすか、いかに早く戻すかに主眼が置かれるが、このシステムでは災害の発生により新たな空間が創出されることで機能の向上が起こる。
災害というネガティブな事象を街の成長というポジティブな側面から捉えなおした新しい提案。
審査員講評
日常・災害・復興・対策の各フェーズに柔軟に応じることができる建築を複数構築することにより、建築単体だけではなく地域全体がレジリエントになることを意図した意欲的な提案である。
東京都江東5区の水害を災害対象とし、近年減少傾向にあるガソリンスタンドの跡地を敷地として選定することで、分散配置による周辺住民の避難を容易にし、既存地下ピットの有効利用も検討されている。
技術面では、床の軽量化を図りつつ、浮力を調整できる浮体構造を提案し、浮力計算による検証も行われている。
また、浮上発電など非常時を考慮した設備計画も示されている。
さらに、水害が発生して床が浮き上がった年を、そのときに浮き上がった床に明示することにより、防災意識を高める記憶装置としてのモニュメント性も兼ね備えている。
水害時の設備配管等の追従性、水害後の容積率アップ、さらには水害発生頻度と本提案建築の供用期間の関係など、実現に向けて解決すべき課題はいくつかあるが、水害対策の一案として実現化の検討に値する。
審査員からは構造も含めた技術的提案として高い評価を得ており、優秀賞にふさわしいと判断された。