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2014.07 JSCA賞をダブル受賞


実践女子学園創立120周年記念体育館内観(撮影:三輪晃久写真研究所)

一般社団法人日本構造技術者協会が主催する「第25回JSCA賞」で、当社設計施工の「実践女子学園創立120周年記念体育館」が新人賞を、当社が共同開発した「新しい電波塔」が業績賞を受賞しました。
当賞は、建築構造の設計・監理等の分野で、優れた成果を発揮した者を表彰することにより、その職能を顕在化させ技術の発展と活動の活性化を図り、建築の質の向上に資することを目的とした賞です。
新人賞は、優れた作品を実現し、一層の活躍が期待される若手構造設計者に贈られます。
業績賞は、構造に関連した分野で構造設計者あるいは技術者の職能向上や社会的活動の活性化に貢献した者、既往技の一連の応用により独自な建築構造を創出、あるいはその技術の普及に貢献した者などに贈られます。

「実践女子学園創立120周年記念体育館」においては、メインアリーナの屋根架構、経済的な発泡スチロールを使用したボイドスラブ、フラットスラブと柱列によるプロムナード側のファサード表現、屋外鉄骨階段など、様々な構造的創意工夫で建築に応えている点、また、設計・現場対応を通じ関係者と信頼ある協働関係を築き、建築ができるまで真摯に取り組んできた様子を高く評価され、構造設計を担当した当社設計本部高澤昌義氏が表彰されました。

「新しい電波塔の開発と展開」においては、スマートフォンの急激な普及に伴い、基地局(アンテナ)の整備が急務である中、「コストダウン・高性能・騒音配慮」をコンセプトとした新しい電波塔を開発し、全国での普及展開を実現したことを高く評価され、構造設計を担当した当社設計本部早部安弘氏が表彰されました。
この度のダブル受賞により、当社の構造技術力を広く認知して頂くことが出来ました。

実践女子学園創立120周年記念体育館


撮影:三輪晃久写真研究所
所在地 東京都渋谷区
建築主 学校法人実践女子学園
用途 中学校・高等学校体育館
構造 鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)
規模 地上:3階
最高高さ 22.6m
延床面積 2,578.17m2
竣工 2011年8月
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
施工 大成建設株式会社東京支店
構造概要

本建物は渋谷駅から徒歩10分の場所にある中学校・高等学校の体育館です。
キャンパス内の計画地は中高生の通学の際のメイン動線となるプロムナードに面しており、RC打放しの列柱廊を配置して学校の顔として相応しい厳格なファサードを目指しました。
施設構成は12.5m以上の天井高さを誇るメインアリーナをはじめ、柔剣道場や卓球、ダンス等の授業を行うサブアリーナ、多目的に利用が可能なギャラリーアリーナという3つの性格の異なるアリーナを持ち、更衣室や便所等の諸室をアリーナの間に挟む格好でコンパクトな動線となる施設計画です。
構造架構は、仕上げを極力なくしたシンプルな建物であるため、本体部分はRC造を用い、デザインに配慮した構造体としました。
また、メインアリーナ屋根はS造とし、約38m×33mの大空間を実現しました。
本建物の最大の特徴は、楕円形状のリングケーブルを有するメインアリーナです。
3階部分に位置するメインアリーナ空間は、公式バレーボールの規格である有効天井高12.5mを満足する室内空間を確保し、かつ、日影規制を満足させるために屋根断面形状を台形型にする必要がありました。
この架構形状ではスラストが生じるため、屋根部分にリング状の構造用ケーブル(リングケーブル)及び放射状のタイロッド(ステイロッド)を抵抗要素として配置し解決を図りました。
また、リングケーブルを正円にした場合、吊下式バスケットゴールと干渉し、有効天井高を確保できないため、リングケーブルを楕円にし、建築計画と構造計画を両立させました。
加えて、このリングケーブルはスラストを処理するだけでなく、張力を導入することで、鉄骨梁の応力状態をコントロールし、架構全体が最適な応力状態になることを目指しました。
この導入張力を調整することで、鉄骨梁のたわみや外周鉄骨柱のスラストによる傾きなどの変形も屋根や外壁材の仕上げに影響がでない最適な状態としました。
施工においては、施工手順を考慮した詳細な解析を行い、リングケーブルとステイロッドの交点及びステイロッドの厳密な長さ管理により、張力導入を行いました。
また、リングケーブルとステイロッドの交点が張力導入により移動するため、想定した完成形状にするためにも、長さ管理が非常に重要でした。


新しい電波塔の開発と展開


所在地 全国
用途 携帯電話基地局
構造 鉄筋コンクリート造、鉄骨造
開発 大成建設株式会社、神鋼鋼線工業株式会社、日本ヒューム株式会社
施工 大成建設株式会社
開発経緯

スマートフォンの急激な普及に伴い、基地局(アンテナ)の整備は携帯電話会社の急務である中、その需要に対して建設会社として開発から施工まで一貫して取組んだプロジェクトです。
一般的な基地局における電波塔は、アングル鉄塔が多く、建設コストが安い一方でアングルにより風切音が発生し、近隣住民から建設を拒否されるといった問題があります。
そこで、応募者を中心とする開発チームは「コストダウン・高性能・騒音配慮」をコンセプトとした「新しい電波塔」(高さ40m)を開発しました。

開発コンセプト

コストダウン
コスト面から塔体の柱材をRC製、特に既製杭を利用することで大量生産への対応とコストダウンを図りました。
長さ40mの既製杭は製造不可能なので、約10m毎の接合方法が課題となり、鋼管柱の接合方法を参考に、接合方法を試作品で検証し、かつ実大実験を行いながら「新たな接合部」の開発を進めました。
また、コンクリート既製杭の片持ち柱では不経済であるので、支線式鉄塔のように構造用ケーブルを併用しました。
支線式鉄塔のようにケーブルの角度を広げると基礎が大きくなり不経済になるので、ケーブルの角度を狭め、アンテナ取付部から鉄骨梁を跳ね出して、初期張力を導入することで、ケーブル構造としての安定性を高め、建設面積の最小化をも図りました。
ケーブルの初期張力は既製杭へのプレストレスとなり、既製杭の曲げ耐力を上昇させるという相乗効果も生んでいます。
更にケーブルを上下2段に配置することで、柱脚部を基礎の窪みに置くだけの構造としました。
ケーブルからの圧縮力が柱脚部では半剛接合状態となり、既製杭の杭頭半剛接合(F.T.パイル)の逆の状態を生み出すことにより、水平荷重によって既製杭の柱体に生じる曲げモーメントが均一化され、柱体全体を同断面(φ700)で設計することが可能となりました。
また、使用するケーブルには耐久性が高く、被覆の必要がない亜鉛メッキPC鋼より線を採用しました。
これにはケーブルメーカーの協力により、新たに指定建築材料の大臣認定を取得し、新規製造ラインを作って大量生産に対応しました。

高性能化
超高層ビルのアウトリガー形式を応用し、アンテナ取付け部の鉄骨梁とケーブルでアウトリガー状態を形成し、頂部の曲げ戻し効果により、強風時の頂部の回転角を1度以下にすることに成功しました。

騒音配慮
塔体の構成部材にできる限り円形断面(ケーブル、既製杭、円形鋼管)を採用し、風切音が生じにくいように配慮しました。