2004.03 "柔しく剛く"の理念を表現した、新しい学舎 広島・安田女子大学9号館が完成
緑豊かな周囲の景観と調和した9号館外観
トップライトからの光があふれる7層吹き抜けのアトリウム
機能的な厨房
新学部にふさわしい、軽やかな学びの空間
広島市安佐南地区において、開学以来89年の伝統を誇る安田学園・安田女子大学。学園訓である" 柔(やさ)しく 剛(つよ) く"の理念のもと、幼稚園から大学院まで一貫した教育を行っています。今回、安田女子大学では、2004年4月の「家政学部」開設に伴い、新たに9号館を建設。当社がその設計・施工を手掛けました。
「生活デザイン学科と管理栄養学科からなる『家政学部』は、衣・食・住を中心とした生活環境向上のための知識や技術の修得を目的とされています。建築士やインテリアコーディネータ、デザイナー、管理栄養士……そうしたスペシャリスト志望の学生たちが学ぶ場として、機能的で魅力的な建物にしてほしいというご要望がありました。そこで、外観・内観ともに、学園の理念や学部の特徴を意識した設計を行いました」(設計本部建築グループ増田裕康GL)。
9号館は、曲面形状のバルコニーを持った扇形の南棟と四角い北棟で構成され、中央には31m・7層吹き抜けのアトリウムを設けています。大きなトップライトからふり注ぐ光で、屋内でも自然光の明るさあふれる建物となっています。
「曲線の優美さと直線の強さを組み合わせた外観は、学園訓の"柔しく剛く"を表現したものです。快適な暮らしを追求する学部の施設にふさわしく、教室、研究室の壁を開放的なガラスとし、今までの薄暗い廊下といったイメージを明るく健全なものへとしています。このオープンな教室は、かえって緊張感をもって授業に臨んでもらえるのでは、と思っています」(設計本部建築グループ高橋章夫PA)。
また内観においては、「建物自体が教材になる」という発想のもと、学生たちの興味を引くような工夫を随所に凝らしています。
「建築において、室内の快適さはどのように保つのか----家政学部の施設らしく、そういったことが見てとれる仕掛けを施しました。たとえば、アトリウムでは、ダクトをわざと露出していますが、これはトップライトの光で温まった上部の空気を下へと導く空気循環の装置で、空調のしくみも、目で見て、実感としてよくわかるというわけです。部材も、むやみと塗装を施すのではなく、木なら木、コンクリートならコンクリート、鉄なら鉄と、なるべく素材の持ち味を感じてもらえるよう、ナチュラルな仕上げを心掛けました」(設計本部建築グループ小林浩A)。
知的好奇心を育み、学生を魅了する建物を
また屋上庭園に設けた天文台も、この建物の特徴のひとつ。大学生のみならず、同じ敷地内の学園に通う園児や児童たちも天文台を利用し、天体の観測が行えます。
「壮大な宇宙の神秘にふれることで、科学への興味、知的好奇心を育んでほしいという思いから設置されたもので、学園のシンボル的な施設です。夜間にライトアップされた風景も幻想的で好評です。この天文台の存在もしかりですが、施主は『学校とは施設産業であり、魅力的な建物がなくてはならない』というお考えです。そうした施主とのコラボレートで、私たちもより自由に発想を広げることができ、満足いただける設計が行えました。それが何より嬉しいことでした」(設計本部建築グループ増田裕康GL)。
さらに今回のプロジェクトでは、実習に使う厨房に大成建設のHACCP技術を活かし、学生たちが憩うレストラン(給食経営管理実習室)のインテリアデザインも当社が手掛けました。
「レストランは、従来の学生食堂のイメージとはひと味違う、洗練された空間をめざしました。女性ならではの感性を生かしてもらおうと、当社でも女性社員がデザインを担当。家具やアートワークなどのコーディネートにも細かく気を配っています。彼女たちが生き生き働く姿も、施主から好印象で、その意味でもいい仕事ができたと感じています」(設計本部建築グループ増田裕康GL)。
この春、安田女子大学9号館は、期待に胸ふくらませた学生たちを迎え、夢いっぱいのキャンパスライフの舞台となります。